第25回開催で賑わった「綱島桃まつり」、“発展的な未来への継承”なるか | 横浜日吉新聞

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25回目の大きな節目を迎えた「綱島桃(もも)まつり」。晴天に恵まれた綱島の「桃の里広場」に集う人々の思いは、今後新たなイベントに受け継がれていくのでしょうか。

きのう(2024年)3月10日(日)11時から14時まで開催された第25回「綱島桃まつり」(港北桃まつり実行委員会主催)は、朝から晴天に恵まれ、会場の綱島市民の森・桃の里広場(綱島台)には多くの地域住民らが訪れました。

青空の下で開催された「第25回綱島桃まつり」。新型コロナ禍による制限もなくなり多くの人々が来訪していた

青空の下で開催された「第25回綱島桃まつり」。新型コロナ禍による制限もなくなり多くの人々が来訪していた

1997(平成9)年の初開催以降、今年で25回目の節目の開催に。実行委員長を務める綱島市民の森愛護会会長の飯田助知(すけとも)さん「集大成の開催」と語るなど、今後の同まつりの継続に注目が集まっています。

江戸時代に北綱島村の名主を務め、農地の開墾や鶴見川の改修に尽力した飯田家の第14代当主にあたる飯田助知さん。

司会進行は港北ボランティアガイドの会や港北ふるさとテレビ局の活動で知られる阿部知行さんが担当した

司会進行は港北ボランティアガイドの会や港北ふるさとテレビ局の活動で知られる阿部知行さんが担当した

綱島市民の森「桃の里広場」のいつもの東屋の前であいさつを行う飯田助知さん

綱島市民の森「桃の里広場」のいつもの東屋の前であいさつを行う飯田助知さん

11時すぎから開かれた開会式のあいさつの中で、「この桃の里広場は、綱島といわれる地名の原点であり、かつて桃畑だった場所です」と、いまの綱島台を除き、かつて綱島周辺が「海」だったという歴史や、綱島の桃栽培の歴史を未来へと伝えることを目的に始まったことについてまずは説明します。

「わが街のシンボル『桃』と自然を愛そう」と、「桃まつり」の開催スローガンにも掲げた「自然」についても「綱島の魅力の一つ」と語り、台風の影響を受けにくい早生の品種である「日月桃(じつげつとう)」が地域に広がった歴史についても語り、来場者に「桃まつり」開催への熱き想いを伝えます。

池谷道義さん(右)は鶴見川流域の水害から地域を守る活動を行う鶴見川流域ネットワーキング代表理事の岸由二さんとの再会に笑顔を見せていた

池谷道義さん(右)は鶴見川流域の水害から地域を守る活動を行う鶴見川流域ネットワーキング代表理事の岸由二さんとの再会に笑顔を見せていた

実行委員の一人で、「綱島の桃」栽培を現在も行っている池谷家の第16代当主・池谷(いけのや)道義さんも、桃の栽培を地域に広めた曾祖父(そうそふ)・池谷道太郎氏からの歴史を説明。

1907(明治40)年ころに「日月桃」を道太郎氏が発見して以降、綱島に桃の栽培が約30年ほど続いた歴史について語ります。

「桃まつり」初めてが開催された1997(平成9)年の翌年、1998(同10)年に、道太郎氏の孫で道義さんの父・池谷光朗(みつろう)氏が、当時の農林水産省果樹試験場(つくば市)から日月桃の苗木2本を入手し、「綱島の桃」が復活。

現在、約50本の桃栽培を行っていることを伝え、「これから先、綱島の桃(栽培)を残していけるかは私にかかっています」との当主としての決意を語っていました。

城南信用金庫元理事長で名誉顧問の吉原毅さん。祖父の吉原義介氏が綱島果樹園芸組合の二代目組合長だったというルーツを熱く語っていた

城南信用金庫元理事長で名誉顧問の吉原毅さん。祖父の吉原義介氏が綱島果樹園芸組合の二代目組合長だったという自身のルーツを熱く語っていた

また、城南信用金庫(本店:東京都品川区)の元理事長で名誉顧問、学校法人麻布学園(麻布中学・高校、東京都港区)の理事長も務める慶應義塾大学卒の吉原毅(よしわらつよし)さんもあいさつ。

元教員・校長だったという祖父の吉原義介氏は、後に綱島果樹園芸組合の二代目組合長になったことから、桃の販売促進に尽力したとの足跡を語ります。

綱島囃子保存会の皆さんが奏でる「綱島囃子」や獅子舞も場を盛り上げていた

綱島囃子保存会の皆さんが奏でる「綱島囃子」や獅子舞も場を盛り上げていた

そして「東京・新宿の高野フルーツさんに日月桃を売り込み、綱島を『東の神奈川、西の岡山』と言われるほどの桃の産地にするべく貢献したようです」と祖父の功績を語り、「綱島の桃」が自身のルーツにあったことを明かします。

貧しかった綱島が発展したものの、鶴見川の氾濫(はんらん)戦争の影により桃栽培が途絶えてしまったことを嘆きながらも、綱島の桃の復興のために綱島の農家をはじめとした多くの人々が尽力してきたことを讃え、「桃まつりが“(土地の名士や市民など)地域の人々がみんなで力をあわせて、この街の幸せな暮らしをもっていこうということで開催されてきました。これからもますます発展しみんなの幸せにつながるイベントとなるようにと祈念しています」との思いを熱く披露していました。

開会式が無事に終了し「ほっ」とした表情を見せる来賓の皆さんと飯田助知さん

開会式が無事に終了し「ほっ」とした表情を見せる来賓の皆さんと飯田助知さん

穏やかな天候の下、例年通りの綱島音頭やよこはまアラメヤ音頭、綱島囃子の披露や野点、南京玉すだれや折り紙教室、小間物づくり、桃ジャムのロールパン作り、桃の和菓子や綱島桃エール、ケーキやジャムなどの販売が行われた「綱島桃まつり」。

来年度以降の開催は、実行委員会メンバーの高齢化などもあり、これまで通りの開催が担い手の部分でも難しくなっているとのことで、「今は1年後のことは決まっていませんが、場所などを変えての発展的な継続・開催を行っていくことができれば」と飯田さん。

「手作り」焼きそばやとん汁の販売も大盛況

「手作り」焼きそばやとん汁の販売も大盛況

「綱島桃まつり」オリジナルのトートバック(500円)も新発売されていた

「綱島桃まつり」オリジナルのトートバック(500円)も新発売されていた

地域で活動を行う“超党派”の議員・秘書の皆さんも「綱島桃まつり」や地域の未来についての議論を真剣に行っていた

地域で活動を行う“超党派”の議員・秘書の皆さんも「綱島桃まつり」や地域の未来についての議論を真剣に行っていた

綱島の「桃の歴史」を、今後未来に向けて、如何に“リアル”に地域住民に語り継いでいくのか。

イベントなどの開催を通じた“綱島の桃”への思いを共有できる場が、これからも長く継承・継続されていくことが望まれます。

【関連記事】

25回目の節目迎える「綱島桃まつり」、四半世紀の集大成の開催に(2024年3月4日)

・【前年開催】4年ぶり「綱島桃まつり」は3月12日(日)、5月放映“テレビ番組”も制作中(2023年3月7日)

綱島の文化財「飯田家住宅」を守りたい、消防・地域ぐるみで初の防火訓練(2023年3月29日)※飯田家の由来についても掲載

「鶴見川の百年」記録した記念誌が38年ぶり復刊、5月15日(日)にイベントも(2022年5月9日)※鶴見川と水害の歴史について

【参考リンク】

つなしまピーチネット(港北みりょく発見団)※第24回開催のブログ記事へのリンクも

「桃の里広場」の場所(Googleマップ)※綱島駅から徒歩11~12分

池谷桃園(旧:綱島ピーチゴルフセンター)のサイト ※「綱島の桃」の販売について告知

「幸せになる金融~信用金庫は社会貢献」吉原毅 著(神奈川新聞社)※吉原毅さんの「城南信用金庫」での取り組みや経歴、生い立ちや綱島での由来、飯田助知さんとのつながりなどについても執筆している


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