甲子園優勝までの道のりを紐解く、慶大卒記者が「慶應高校野球部」新書を出版 | 横浜日吉新聞

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「日吉の街が大好き」だと語る慶應卒のスポーツ記者が、慶應塾高が甲子園優勝に至るまでの道のりを丁寧に取材、読み応えのある一冊の本に仕上げています。

株式会社新潮社(東京都新宿区)は、先週(2024年)7月18日、「スポーツ報知」編集委員で記者の加藤弘士さんによる「慶應高校野球部―『まかせる力』が人を育てる」(新潮新書)を全国の書店で出版しました。

慶應義塾高校(塾高)第一校舎前で、新潮新書「慶應高校野球部―『まかせる力』が人を育てる」の著者・加藤弘士さん。「ここで多くの選手たちへのインタビューも行いました」と語る

慶應義塾高校(塾高)第一校舎前で、新潮新書「慶應高校野球部―『まかせる力』が人を育てる」の著者・加藤弘士さん。「ここで多くの選手たちへのインタビューも行いました」と語る

加藤さんは茨城県水戸市生まれ・育ち。

小学校時代の1984(昭和59)年に開かれた第66回「全国高校野球選手権大会」(甲子園)で、加藤さんは地元・茨城県の県立取手第二高校(取手二高)が、「KKコンビ」といわれた桑田真澄投手、清原和博選手を擁するPL学園(大阪府)を決勝戦で破り、日本一になったシーンをテレビで観戦。

「幼少期から野球観戦が大好きで、社会人になり、その夢が実現したことになります」と、同県立水戸第一高校慶應義塾大学法学部を経て株式会社報知新聞社に入社、スポーツ新聞記者になった経緯を説明します。

加藤さんが慶應義塾大学で過ごした1990年代には「協生館はありませんでした」と当時、その場所にプールがあったという風景を懐かしむ

加藤さんが慶應義塾大学で過ごした1990年代には「協生館はありませんでした」と当時、その場所にプールがあったという風景を懐かしむ

野球担当記者として、プロ野球の読売巨人軍や、名将といわれた野村克也さんの、社会人野球シダックスや東北楽天ゴールデンイーグルス時代の「番記者」を務めた経験もあり、2022年3月に新潮社から書籍「砂まみれの名将 野村克也の1140日」を出版したところ、「現在、第7刷(の増刷)となるなど、大変多く皆様に読んでいただけているようです」と加藤さん。

初の出版となった書籍が大きな反響を呼んだことを喜び、また今回の出版について、新潮社側からの打診から執筆に至ったことを明かします。

執筆は約3カ月間を要したといい、「日吉台野球場での“土(つち)”感、そして“汗”感を感じてもらえる一冊。スタイリッシュな慶應塾高の学生のイメージとは異なる、悪戦苦闘する若者のパッションを感じてもらえたら」と加藤さんは語る

執筆は約3カ月間を要したといい、「日吉台野球場での“土(つち)”感、そして“汗”感を感じてもらえる一冊。スタイリッシュな慶應塾高の学生のイメージとは異なる、悪戦苦闘する若者のパッションを感じてもらえたら」と加藤さんは語る

9年間、デスクとして取材現場を離れたという加藤さんですが、ちょうど昨年(2023年)1月から記者職として復活。慶應義塾高校(慶應塾高、日吉4)の担当になったといいます。

“寒風吹きすさぶ中”訪れた同校のグラウンド・日吉台野球場(慶應日吉台球場、日吉4)で、主将(キャプテン)大村昊澄(そらと)君の「高校野球の“常識”を覆したい」という志に触れ、「心を奪われました」と、その年の初練習だったという日を振り返る加藤さん。

後の甲子園での快進撃に至る“強さの秘密”を紐解く書籍を、関係者21人への取材を経て執筆することで、その想いや経緯を伝えるメッセージ性の強い1冊に仕上げています。

「中学校1年生」でも読めるわかりやすい文章で執筆しているといい、「教育論、そして組織論としても多くの人々に読んでもらいたい」と感じているという

「中学校1年生」でも読めるわかりやすい文章で執筆しているといい、「教育論、そして組織論としても多くの人々に読んでもらいたい」と感じているという

かつて水戸一高時代の大学受験時に、「早稲田大学や慶應大学に入学して、野球を(東京で過ごして)見ていたかった」と語る加藤さん。

選んで入学したという慶應大学では、「茨城という地方から都会に出てきた自分を、当時の塾高出身の同級生がとても優しく、仲良く接してくれたことが嬉しかったんです」と、今回の書籍の執筆にもつながる「慶應」、そして「塾高」への思い、そして愛情も、“記者”という客観的な目線での執筆ながら、随所に感じられるかの書籍に仕上げられています。

特に、大村君より遡(さかのぼ)る歴代4人の主将へのインタビューが強く印象に残っているといい、「歴代キャプテン(主将)は、まかされながら、苦労しながら、それぞれのチームづくりに臨んでいました。甲子園に行けなかったチームでも、それぞれが魅力的に感じます」と、学びとしての野球、そしてチームづくりに心血を注いだ経緯、そして一人ひとりの「人としての成長」を、本から感じてもらいたいと熱くその想いを語ります。

「若さあふれる日吉の街が大好き」と語る加藤さん。在学していた頃の思い出を懐かしそうに語っていた

「若さあふれる日吉の街が大好き」と語る加藤さん。在学していた頃の思い出を懐かしそうに語っていた

「若いパワーがみなぎる、学生たちが銀杏並木に“向かっていくかの”エネルギーに満ちた”日吉の街が大好きです」と語る加藤さんによる、この街・日吉で生まれてきた、歴代数々の“塾高野球部”のドラマ、その源流から、森林貴彦監督、前任の上田誠監督、そして“エンジョイ・ベースボール”の源流という、慶應大学野球部の前田祐吉元監督、また107年前のエピソードにまで丁寧にたどることで、その歴史的な経緯を紡いでいます。

今回の全国制覇が偶然ではなく、様々な「化学反応」(加藤さん)を通じて“必然”となった経緯を、細やかなヒアリングと筆致で伝える一冊は、日吉や港北区住民、そして“塾高”のみならず、慶應野球部をより深く知りたい人にとっても必読の一冊になっているといえそうです。

日吉台野球場からまた新しい歴史が日々刻まれていく

日吉台野球場からまた新しい歴史が日々刻まれていく

なお、本の出版日(7月18日)に、甲子園でレギュラーだった加藤右悟(ゆうご)君が主将として率いた2024年度の神奈川大会では、平塚市での5回戦で、桐蔭学園高校(青葉区鉄町)に2対4で惜敗しています。

今回の書籍は昨年の「夏の甲子園優勝」までの内容となっており、以降の「続編」となるチームが生み出す新たなチャレンジ、また加藤さんらしい記事の執筆や出版にも期待していきたいところです。

日吉駅前「丸善日吉東急アベニュー店」(日吉2)でも店頭で大きく取り扱われていた(7月19日)

日吉駅前「丸善日吉東急アベニュー店」(日吉2)でも店頭で大きく取り扱われていた(7月19日)

【関連記事】

高校野球「神奈川大会」は7月5日(金)開幕、テレビ放送やネット全試合配信も(2024年7月4日)※戦績を追記

「今こそ語れる」甲子園決勝“秘話”、慶應塾高と仙台育英選手がネット番組で対談(2024年6月24日)

【参考リンク】

「やらせる」でなく「まかせる」。「教える」まえに「問いかける」。「正解」より「成長」。「勝つ組織」「育つ仕組み」のつくり方。~慶應高校野球部―「まかせる力」が人を育てる―加藤弘士/著(新潮社)

新潮社の電子書籍~新着 慶應高校野球部―「まかせる力」が人を育てる(新潮新書)(同)

「全国で一番大変なキャプテン業をやったんじゃないかな」 昨夏の日本一から慶応主将が背負ってきたもの(スポーツ報知)※加藤弘士記者による執筆記事


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