箕輪町を中心に日吉~綱島を巻き込む「エリアマネジメント」計画を公表

横浜日吉新聞

一部でささやかれ始めた“エリアマネジメント”とは一体何なのか――。箕輪町2丁目の旧アピタ日吉店など一連の跡地で行われている「プラウドシティ日吉」(野村不動産)の大規模再開発を機に、日吉や綱島エリアに突如現れたのが「エリアマネジメント」という言葉です。このほど、野村不動産と協定を締結した横浜市が「(仮称)日吉箕輪町計画エリアマネジメントプラン」と題した計画を公表しました。

エリアマネジメントの対象とするエリア(太線)と波及が予想される範囲(「(仮称)日吉箕輪町計画エリアマネジメントプラン」より)※クリックで拡大

同プランでは、対象とするエリアを箕輪町2丁目の再開発計画地をエリアマネジメントの実施場所とする一方で、箕輪町一帯を地域課題の解決に向けて取り組む「事業連携エリア」、さらに日吉駅から綱島駅までの綱島街道沿いの一帯は、団体や企業と連携を図る「事業連携軸」と位置付けています。

深く関わるエリアは、箕輪町全域と日吉本町1丁目(駅前商店街)、日吉4丁目(慶應義塾大学)、綱島東4丁目(綱島SST=サスティナブル・スマートタウン)、綱島西6丁目ほか北綱島交差点周辺、綱島東2丁目綱島東1丁目(駅周辺商店街)などとなります。

エリアマネジメントの目標として、「魅力的な暮らしの未来を創り・育てるまち」を掲げます。

10の方針を掲げる(「(仮称)日吉箕輪町計画エリアマネジメントプラン」より)

そのうえで10の方針として、「多世代が交流できる場や機会」「地域ぐるみで子どもたちとの触れ合いや学びの機会」「災害時に備え、助け合える関係」「地域ぐるみで子どもの成長を見守り、支える環境」「地域の自然、歴史や文化、産業などを知り・学ぶ機会」などの環境や場をつくる方針としています。

具体的なスケジュールは、来年(2020年)3月ごろまでに開発事業者である野村不動産が中心となって、地元の自治会や町内会、横浜北工業会(港北区など4区の工場を中心とした企業経営者団体)、教育機関、地域団体などにエリアマネジメントの運営組織への参画を呼び掛け、組織をNPOや一般社団といった形で法人化。

エリアマネジメント組織のイメージ(「(仮称)日吉箕輪町計画エリアマネジメントプラン」より)※クリックで拡大

2022年3月以降は、プラウドシティ日吉のマンションの多くが完成するため、エリアマネジメント組織には住民によるマンション管理組合が参画し、3年から5年かけて活動を発展させていくとしています。

運営組織の活動拠点としては、マンション内で整備されるシェアオフィスやコミュニティカフェを利用。イベント開催時は再開発地内に設けられる広場などの公共スペースも活用するとのことです。

10の方針に基づき、30のエリアマネジメント事業を行うことを想定しているという今回のプラン。

活動の中心となる“マンション住民”がまだ見えないなかで、今年(2019年)は受け皿となる組織づくりが進められることになります。

個性ある地域づくりが苦手な役所に代わる「エリマネ」

【コラム】“サスティナブル・スマートタウン(SST)”や“エリアマネジメント”など、再開発の進展を機に日々の生活ではあまり接することがない外来語が飛び交うようになってきた日吉・綱島エリア

二酸化炭素(CO2)削減などの地球環境への配慮志向を打ち出し、住民生活には実感が伴いづらい「SST」の概念に対し、今回のエリアマネジメントは、周辺住民を“巻き込む”ことを前提とした計画となっているだけに、日々の生活で関わったり、関わらざるを得なかったりする可能性があります。

地方創生やまちづくりにも「エリアマネジメント」の手法が推奨されている(内閣官房・内閣府「地方創生」サイトより、パンフレットのPDF版はこちらに掲載

エリアマネジメントは、国の公式な説明によると「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取組み」(国土交通省)などと、役所ならではの分かりづらい定義が示されています。

役所側の思いを“翻訳”すると、「地域の環境や価値を維持したければ、地域の住民が自主的に活動に取り組みなさい」という意味に読み取れ、さらに深掘りすれば、「もう役所には頼らず、自分たちでやってほしい」といった意図が感じられます。

官(行政)は平均的、画一的な都市づくりを進めるのには適しているが、これからのまちづくりは競争の時代の都市づくりとして、積極的に地域特性を重視し、地域価値を高めるまちづくりが必要」。今から10年以上前、公的にエリアマネジメントを取り上げた原典ともいえる国土交通省の「エリアマネジメント推進マニュアル」(2008年)には、このように官(行政)の限界も指摘されています。

つまりエリアマネジメントは、地域の魅力を引き上げるには、役所ではなく、地域の住民がやったほうが上手くいく――との考え方に基づき、地域の魅力向上に向けて住民がイベントやコミュニティ構築などの活動を実践していく取り組みといえます。

特に「人口減少時代における空地、空家の増大に伴う住宅地の価値減少を予防し、地域価値を保全」(同)するとの効果も期待されています。

横浜市も制度化、市内で3カ所目が箕輪町

こうした国の考え方に沿って、横浜市も2016年3月にエリアマネジメントを公式に制度化。2017年10月にはマニュアル的な「横浜市市街地整備におけるエリアマネジメント計画策定の手引き」を設け、再開発を行う開発事業者などを対象にエリアマネジメント導入の後押しを行っています。

エリアマネジメントにより、店舗やオフィス等の空室率の改善が期待されたり、資産価値の維持・増大及び市場性が拡大する可能性を秘めているという(「横浜市市街地整備におけるエリアマネジメント計画策定の手引き」より=PDF版はこちらに掲載)※クリックで拡大

今回の箕輪町におけるエリアマネジメント計画は、たまプラーザ駅北地区(青葉区美しが丘、東急電鉄)や十日市場センター地区(緑区十日市場町、東急電鉄)に次ぐ市内3カ所目となり、開発事業者の野村不動産と市が協議を行ったうえで、正式な計画として公表されたものです。

具体的には、箕輪町2丁目の再開発地域に今後住む予定の住民(マンション管理組合)を中心に、周辺の団体も参画した「エリアマネジメント組織」を新たに作り、地域交流の場や子どもの学びの場、防災への取り組みを行っていくとの内容になっています。

こうした“地域運営”的な役割は、従来から自治会や町内会、社会福祉協議会といった住民組織が担っていますが、エリアマネジメント組織は、自治会や町内会の協力を得ながらも、さらにさまざまな団体や企業、教育機関なども交えて立ち上げようとする新たな「地域住民団体」

たとえば、これまで人の住んでいなかった工場エリアにタワーマンションが林立した武蔵小杉駅の周辺では、その場所に自治会・町内会組織がなかったこともあり、川崎市も後押しする形で居住者によるNPOのエリアマネジメント組織を新設。マンション住民を対象に、イベント開催などの取り組みを通じたコミュニティ構築が図られており、全国の先進事例とされています。

自治会と何が違う? 地元と信頼関係醸成を

ただ、エリアマネジメント自体が新しい概念であり、まちづくり活動家的な層以外には理解が進んでいない点と、特に箕輪町では活動の中心となるマンション住民自体が現在は存在していないこともあり、「マンション管理組合や自治会とどう違い、何がしたいのかがよく分からない」と戸惑いもあります。

エリアマネジメント組織の立ち上げにあたっては検討しなければならない内容が多い(「横浜市市街地整備におけるエリアマネジメント計画策定の手引き」より)

将来の住民に代わって、現在は開発事業者の野村不動産が組織の立ち上げを担っていることから、「マンションの販促活動ではないのか」といった疑いの目を向ける人もいます。

地域活動の担い手として長年活動してきた自治会・町内会側からも、「(同マンションは)自治会・町内会には加入しないという話も聞いており、好きにすればいい」と突き放す声も聞かれます。

箕輪町では、20階建てという高層マンション計画に対して反対の声も根強く、エリアマネジメントの取り組み以前に、まずは地元住民との信頼関係を築くことが先決です。

一方で、3000人から4000人が新住民として地域に加わり、活性化を担う活動組織が立ち上がることを歓迎する意見をはじめ、相互交流機会が多くない日吉と綱島の住民組織間や、日ごろは交わる機会が少ない地元企業や団体、教育機関が連携することに期待を寄せる人もいます。

また、再開発エリア内にはシェアオフィスやコミュニティカフェといった交流拠点が設けられるため、高齢層が利用の中心となりがちな地区センターなどの公的施設とは異なる形で、働く世代を中心とした地域コミュニティが生まれる可能性もあります。

綱島街道を中心とした日吉・綱島エリアに突如降って来た“エリアマネジメント”という取り組みは、今後の街にどのような影響を与えることになるのでしょうか。

【関連記事】

野村不動産の社長らが箕輪町で会見、「プラウドシティ日吉」が同社戦略の試金石に(2018年10月11日、社長自ら「エリアマネジメント」への意気込みを示した)

<箕輪町計画>完成後のコミュニティづくり構想も公開、7/7(土)に「オープンハウス」(2018年7月6日)

【参考リンク】

横浜市「エリアマネジメント」のページ(都市整備局地域まちづくり部)


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