文教の薫り漂い変貌する街「日吉・綱島・高田」、マンション物件サイトが誘う“夢の世界”

横浜日吉新聞

【レポート】美しく優雅気品にあふれた文教の薫りが漂い、アカデミックな雰囲気とダイナミックに変貌し続ける、緑豊か永住するにふさわしい街――などとアピールされている「日吉・綱島・高田」。

日吉の物件では、「緑があふれ」「アカデミックな雰囲気」で「文教の薫り」が漂っていることなどが積極的にアピールされている(野村不動産の「プラウド日吉本町」の公式サイト

今も新築マンションの建設が相次いで行われている3つの街では、販売事業者による物件PRがさかんに展開され、その公式サイトからは、ふんだんに“装飾”された街の様子を垣間見ることができます。

どんな環境下であっても“夢の街”で“夢の暮らし”が待っているかのように魅せてしまう言葉の魔術のようなキャッチコピーをはじめ、日常ではなかなか見ることができない青い空と光の加減が絶妙な美しい写真による周辺案内、独特の雰囲気を醸し出した文体によるスポット紹介記事など、マンション販売事業者らが独自に伝える“美しい”日吉・綱島・高田の街の姿とは。

販売完了とともにインターネット上から消し去られてしまう可能性が高い「物件の公式サイト」と、マンション計画とともに開設され、いつの間にか霧消していることが多い「地域紹介メディア」を含め、それらが日吉・綱島・高田の街をどのように紹介しているのかをご紹介します。

武蔵小杉の高層タワー群さえ見晴らせる日吉

「プラウドシティ日吉」の公式サイト

1320戸という巨大な再開発計画となっている野村不動産による箕輪町2丁目の「プラウドシティ日吉」は、「人生100年時代と日吉エリアの、新たな象徴をここに刻む。」とのキャッチコピーで、「お住まいになる方だけではなく、地域にとっても誇らしい街づくりを実現します」とPR。

エリアについては、「歴史ある文教都市、良好な住環境 人生100年時代にふさわしい舞台『日吉』」とし、「慶応義塾大学と共に育まれてきた日吉エリア」は、「学園都市として文教の薫りに育まれてきたのです」と慶應義塾大学と日吉の歴史を概観。

古い写真も交え、丘の上にある日吉駅前ならではの優位性を強調(プラウドシティ日吉の公式サイトより)

かつて京浜運河まで望むことができたという駅前住宅街の紹介では、「多摩丘陵の東側、日吉台地 武蔵小杉の高層タワー群を見晴らす。」と丘の上にある日吉駅前ならではの優位性を強調。買物環境としては、日吉東急アベニューやアピタテラス横浜綱島の2店については、すべてのフロア図を掲載して“徹底紹介”しています。

一方、周辺住民による反発の声も考慮してか、建設予定地である箕輪町に関する記述は少なく、「『慶應義塾大学のお膝元』として横浜市内でも有数の整った教育環境が魅力です」などとして、再開発エリアに隣接する日大高校・中学校や公園を紹介している程度でした。

物件計画とともに出現した株式会社ココロマチ運営による地域情報サイト「日吉日和」

また、物件計画とともに出現した株式会社ココロマチ(東京都港区西新橋)が運営する「日吉日和」と題した情報サイトと連動しているものの、記事内容は物件からは若干距離のある慶應日吉キャンパスで開催されるイベント情報が目立ち、「『日吉の丘公園』と『綱島公園』を実際に歩いてみました!」と題したレポートも掲載。

ここでも、箕輪町に住む人が登場するような記事は今のところ見られませんでした。

「赤門坂」の由来を知れば上る苦しさも緩和?

エクセレントシティ日吉本町ガーデンの公式サイト

日吉本町4丁目にあった大塚製靴の工場跡に建てられているのが新日本建設の「エクセレントシティ日吉本町ガーデン」(91戸)。

建設予定地について、「美しく整備された文教都市『日吉』の洗練や、再開発事業により新たな賑わいが創出された『綱島エリア』を身近にする、古くからの落ち着きのある住宅街」と紹介。綱島東4丁目の再開発エリア「綱島SST(サスティナブル・スマートタウン)」に近い点もPRしています。

一方、日吉駅側から見れば“坂の下”へ通ずる急な坂については、「日吉本町の住宅街へ伸びる『赤門坂』は、300年以上も前からつづく旧家の門が赤いことがその名の由来」と丁寧に解説。日々の通勤・通学には若干苦しい坂の歴史的な背景をひも解くことで、上り下りの辛さを緩和してもらいたいという配慮なのかもしれません。

物件周辺については、「日吉特別緑地保全地区」によって周辺の緑が保全されていることを紹介し、「一帯は古くから人々が暮らす歴史ある住宅街」「静かに落ち着いて暮らしていける永住にふさわしいエリアと言えるでしょう」と案内しています。

ココロマチが運営する「エリアガイド日吉本町

連動メディアは、こちらも株式会社ココロマチが運営する「エリアガイド日吉本町」を開設

“スペシャルインタビュー”として、隣接する日吉台中学校校長へのインタビュー記事を掲載するとともに、「『アピタテラス横浜綱島』にどんなお店があるのかを見てきました!」といったレポートも。

公式サイトでは赤門坂の歴史に触れていましたので、このマンション建設前に建っていた大塚製靴工場の長い歴史についても取り上げてほしいところですが、そうした記事は見当たりませんでした。

日吉本町駅周辺は豊かな緑と静けさに響き合う

「プラウド日吉本町」の公式サイト

同じ日吉本町駅エリアに位置し、明治社員寮など一連の跡地に建てられる野村不動産の「プラウド日吉本町」(56戸)は、ある意味で「エクセレントシティ」の競合物件

駅に近いだけではない、そこには静けさがある。」「美しく成熟した住宅地が広がる日吉本町のアドレスに、駅徒歩1分、豊かな緑と静けさに響き合うロケーション。」と、日吉本町駅の至近であるにもかかわらず、良好な環境にあることを強く打ち出しているのが特徴です。

「『日吉』の都市機能を享受し、『日吉本町』の静穏を手に入れる。」とのキャッチコピーも(プラウド日吉本町の公式サイトより)

周辺の環境については、「『日吉』の都市機能を享受し、『日吉本町』の静穏を手に入れる。」とのコピーで、「穏やかな住宅地の中に、スーパーなど便利さも身近」などと、格安スーパーの「オーケー日吉店」など、日吉駅前周辺とは違った生活環境がある点をアピール。

とはいえ、やはり「慶應義塾大学の歴史と文教の香りを纏う日吉エリア」である点も軽く触れており、日吉エリアの物件である以上は、“文教の香り”を漂わせることは必須なようです。

なお、すでにエクセレントシティが日吉本町エリアで、プラウドシティは日吉全体の地域情報メディアを開設しているためか、プラウド日吉本町の公式サイト上からは連動サイトが見つかりませんでした

高田西に「日吉west」という新たな”アドレス”

「ノブレス日吉west」の公式サイト

先ほどの日吉本町駅エリアの次駅、高田駅近くの高田西1丁目に立地しているものの、ナイスがパチンコ店「ローラン」の跡に建てている92戸のマンション名は「ノブレス日吉west」。物件の目の前には高田地域ケアプラザがあり、バス停名もそうなっていますが、このマンションの世界では、そう、ここはあくまで“日吉west”

そうした世界観を崩さない姿勢はサイト上でも徹底されており、「駅近だからかなう快適&安心な暮らし」「駅徒歩2分に暮らすこと。それは数多くのメリットを手にすること。」などのキャッチコピー上には、徒歩2分の地にある「高田駅」という名は一切出てきません

「日吉」という文字が躍り、高田駅が最寄りとは分かりづらい(ノブレス日吉westの公式サイトより)

アクセスのページを開くと、「緑潤う邸宅の街 日吉エリアに誕生。」と大きな「日吉」の文字が飛び出し、日吉に建つ物件だと思わされてしまうようなデザイン。

次に「『日吉」駅へ2駅4分。都心への乗り換え楽々。」との微妙な見出しで、日吉駅が最寄りでないことをほのめかし、ページを下へスクロールすると、ようやく「徒歩2分の横浜市営地下鉄グリーンライン『高田』駅より○○分」との表記が出てきました。

株式会社ココロマチによる「横浜市港北区高田エリアガイド」のトップ写真には、荏田綱島線の回転寿司店の看板に少しモザイクがかかっている様子

物件とともに誕生した地域情報サイトの名は「横浜市港北区高田エリアガイド」(株式会社ココロマチ運営)で、“日吉・港北ニュータウンも生活圏”とのキャッチコピー。「地下鉄の開通で暮らしの利便性が大幅に向上した港北高田エリア」などの記事を掲載しており、こちらでは“日吉west”の世界観はあまり感じられません

「日吉」の地名は、かつて京都府や鹿児島県で自治体名にもなっていましたが、これらは町村合併で消え、残るは町名や字(あざ)名と小規模な駅名のみ。一方で「高田」は、新潟県や岩手県、奈良県、大分県など自治体レベルでの地名や主要駅名にもなっています。それだけに、町名にとどまり、駅名としても新しい港北区高田は、区外でのPR面で苦労をしているのかもしれません。

綱島のマンションは売れすぎてサイトが次々抹消

工場跡地に建てられている「プラウド日吉クロス」は短期間で完売した様子(同物件の公式サイトより)

次は綱島の物件ですが、綱島SST(綱島東4)至近の箕輪町2丁目も含め、昨年から今年にかけて下記の5つの新築マンションで計300戸近くが販売されたものの、現時点ですべて完売しています。

  • クリオ横濱綱島(綱島東4、67戸、2017年2月販売開始、5,700万円台)
  • プラウド綱島SST(綱島東4、94戸、2017年7月販売開始、6,100万円台)
  • ブランズ綱島(綱島東2、 43戸、2017年12月販売開始、6,600万円台)
  • クリオ横濱綱島ガーデンマークス(綱島西4、31戸、2018年5月販売開始、5,700万円台)
  • プラウド日吉クロス(箕輪町2=綱島SSTのアピタテラス至近、58戸、2018年3月販売開始、5,500万円台)
    (※データは「マンションエンジン」より)

売れてしまえば「用はない」とばかりに、街に魔法をかけるかのような美しいキャッチコピーもろとも、マンションの公式サイトは、ほぼ痕跡を残さずに消されますので、これらの物件サイトも今は見ることができません。当然、連携する地域情報サイトもなくなってしまいます。

「シティテラス横濱綱島」(243戸)と、至近の「シティテラス横濱綱島シーズンズ」(68戸)の公式サイト

そんななか、唯一残っているのが綱島東5丁目のヤマト運輸横浜綱島ビルなどの跡地に住友不動産が建てた「シティテラス横濱綱島」(243戸)と、至近の「シティテラス横濱綱島シーズンズ」(68戸)。すでに両物件とも完成していますが、現在も継続して販売が行われています。

「横浜」より、画数の多い旧字の「横濱」を好むのはマンション名の常套(じょうとう)。字を書くのは大変ですが、見た目がいいのかもしれません。

こちらの物件、「変貌する街に誕生。新駅誕生で変わる『綱島』の暮らし」というキャッチコピーが示すように、相鉄直通線の新綱島駅(仮称)を期待し、2カ所の土地に分割して建てられた311戸という大型物件

計画された頃は、来年(2019年)4月にも徒歩12分の場所に新駅が開業する予定だったのに、鉄道工事の遅れによる開業時期の大幅延期で、販売面でも目算が狂った格好といえそう。300戸以上という規模だけに、駅の開業時期が不透明な状態で売り切るのは大変なようです。

「洗練された街を繋ぐ羨望の東急東横線沿線」と大きなキャッチが躍るものの、“羨望(せんぼう)の東横線”で物件最寄りとなる綱島駅までは徒歩15分と若干遠い環境。物件至近の東急バス・広町停留所から「豊富なバス便利用で広がるアクセス」に頼ることが中心となりそう。

綱島の優位性をPRするが、情報は物件の反対側に位置する“西側エリア”が目立っている(シティテラス横濱綱島の公式サイトより)

公式サイトでは、「豊潤な緑と閑静な住宅街」であり、「老舗のお店からおしゃれなカフェ、グルメ店などが並ぶ7つの商店街で賑わう」「生活に必要なものが揃う暮らしやすい街」という綱島の優位性に加え、徒歩25分ほどで往来可能な「東急目黒線始発駅『日吉駅』も生活圏」である点も訴求しています。

なお、物件の販売開始当初は、株式会社ココロマチが運営する地域情報サイト「綱島エリアガイド」がありましたが、いつの間にか消えています。物件に近い綱島東3丁目の子育て支援拠点「どろっぷサテライト」のインタビュー記事なども載っていたのですが、販売事業者の意向次第なのか、こうした情報サイトは期間限定公開という運命にあるようです。

詩的表現も交え“アカデミックな街”日吉を絶賛

ジェイグランディア日吉の公式サイト

再び“文教の薫り”漂う日吉の物件。JR西日本系が日吉2丁目の留学生寮跡に建てているのが「ジェイグランディア日吉」(86戸)です。

日吉駅西口(商店街側)で徒歩10分以内の物件は6年ぶりとのことで、「『日吉』駅西口、その邸宅は知性と美しき羽根を纏う」などとのキャッチコピーを用い、地元住民にはなかなか理解しづらいような“詩的”表現で、放射状になっている日吉駅西口エリアの物件であることをアピール。

田園都市や洗足と並び、美しい住宅地が魅力的な『日吉』。」「人々の流れと自然の移ろいは、この街の美しい風景のひとつです。」と日吉駅前を中心とした住宅街と日吉キャンパスを絶賛し、「ふくよかな文教の薫りが、街の品格となって息づいている。」と、やはり“文教”のキーワードに、“ふくよか”という言葉を重ねて日吉の街を評価。

駅前の放射状の商店街を「知性と美しき羽根を纏(まと)う」などと“詩的”に表現(ジェイグランディア日吉の公式サイトより)

物件が位置するのは、中原区との市境が迫る「仲の谷交差点」に近い一画で、「閑静な住宅街が広がる、緑の潤いに恵まれた穏やかな高台。」として、日吉駅と物件と元住吉駅間の“高低差図”も表示しながら高台にあることを強調。

「北東方面には再開発で新しく生まれ変わった武蔵小杉の近代的な街並みが望め、丘の魅力が暮らしの中に満ちています」と案内しています。ビル風や威圧感とは無関係に遠くからのんびり眺める異様に高いタワーマンション群は一つの景観。これは日吉の高台物件ならではといえそう。

ココロマチによる地域情報サイト「日吉エリアガイド

そしておなじみの株式会社ココロマチによる地域情報サイト「日吉エリアガイド」が当物件でも登場。タイトル部分には「慶應とともに発展する横浜市随一の文教の街」とのコピーが躍ります。

「金蔵寺の寺子屋がルーツ 145年の歴史を誇る『横浜市立日吉台小学校』」との見出しで、同小学校の校長インタビューや、日吉駅前商店街の役員インタビューなどを掲載。“子育て・教育環境をレポート”には「街全体がアカデミックな雰囲気に包まれているのも特徴」などとの記述もありました。

閑静で水の潤いも手にした矢上川沿い木月4丁目

ジェイグラン元住吉の公式サイト

最後に紹介するのは、元住吉駅から徒歩13分日吉駅から徒歩14分という矢上川沿いの国家公務員の宿舎跡に建てている中原区木月4丁目の「ジェイグラン元住吉」(41戸)。ここも先ほどと同じJR西日本系です。

日吉側のジェイグランディア日吉と競合を避けるためか、それとも仲の谷から日吉駅への坂道を避けるためか、マンション名もPR面も“元住吉”を強調していますが、徒歩アクセス時間は日吉駅でもそう変わりません。

物件は「閑静で水の潤いも手にした木月四丁目」の「潤いに満ちた矢上川」をはさんで、横浜市側には慶應大学矢上キャンパスや日吉神社などがある緑の丘が迫るという環境下にあります。

「心地よい賑わいを創出してきた『元住吉』。そして、元住吉の中でも、特に厳選された魅力が集まり、このレジデンスが誕生しました」といい、ここから「賑わいと静謐、違う2つのシーンを堪能する暮らしが始まる」(※静謐=せいひつ=静かで落ち着いている)とのこと。

徒歩14分の日吉は「始発&急行停車でアクセス性も良好」とPR(ジェイグラン元住吉の公式サイトより)

街を紹介する「ロケーション」のページは、元住吉と日吉と武蔵小杉の3ページに分割。日吉のページを見ると、「アカデミックな香りに満ちた住宅街『日吉』」などと、やはり“文教地区”をアピール。「駅は、始発&急行停車でアクセス性も良好です。」と元住吉駅にはない“急行停車”が強調されています。

「住みたい路線2位は東急東横線。」として東横線沿線にあることがアピールされていますが、沿線の住みたい街ランキング上位の紹介に、日吉も元住吉も入っていないのは悲しいところです。

なお、この物件では、地域情報サイトとの連動は、今のところ見当たりませんでした。


以上、マンションの販売公式サイトと、それをサポートする地域情報サイトをご紹介しました。物件が完売すると消されますので、今のうちにご覧いただけたならさいわいです。

日吉・綱島・高田には、これからも次々とマンションが計画され、その度に「魔法の言葉」や期間限定の「地域情報サイト」が生まれ、そして販売完了後には、何もなかったかのように、その痕跡が消されていくのでしょう。実際の生活や住環境を思いながら、夢のような街にも感じさせてくれるキャッチコピーや記事を心に刻んでおきたいところです。

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