<港北区に28カ所>横断歩道と接近した「バス停」、危険指摘も移動に難しさ | 横浜日吉新聞

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【コラム】“危険”と判定されたバス停に待っているのは移動か廃止か――。今から3年半ほど前、2018(平成30)年8月に横浜市西区のバス停で降車後に道路を横断しようとした小学5年生の児童が反対車線の自動車にはねられ、死亡する事故が発生して以降、全国で“危険なバス停”がリストアップされ、港北区内でも28カ所で改善が求められていますが、対策は容易ではないといいます。

2018年に起きた事故現場の見取り図(市交通局資料より)

2018年の事故は、横浜市営バスの「三ツ沢南町」(西区と神奈川区の区境付近、横浜翠嵐高校近く)で発生したものです。

同停留所ではバスが横断歩道をふさぐ形で停車しなければならず、降車後に横断歩道を渡れず、見通しも悪かったことが事故の一因となったのではないか、との考え方から神奈川県警などがすぐに横断歩道と接近しているバス停を抽出してリスト化。

対策として横断歩道自体を廃止したバス停も(港北区内)

神奈川県内では、2018年12月に県内84カ所(港北区内は3停留所・4カ所)で停留所の移転や横断歩道の廃止といった対策が講じられてきました。

その後、国土交通省では横断歩道や交差点に近いバス停を対象とし、新たに「Aランク」から「Cランク」まで次のような3段階の基準を定めて対策の優先順位を付け、全国のバス停をあらためてリスト化しています。

国土交通省は停留所の安全対策を行ううえで優先度をAからCの3段階で判定(2020年7月の国交省通達より)

【Aランク】※港北区内に該当なし

  • 過去3年以内に停車したバスが要因となる人身事故が発生しているバス停留所
  • バスがバス停留所に停車した際に横断歩道にその車体がかかるバス停留所

【Bランク】

  • Aランク以外で、バスがバス停留所に停車した際に横断歩道の前後5mの範囲にその車体がかかるバス停留所
  • Aランク以外で、バスがバス停留所に停車した際に交差点にその車体がかかるバス停留所

【Cランク】

  • A又はBランク以外で、バスがバス停留所に停車した際に交差点の前後5mの範囲にその車体がかかるバス停留所
  • A又はBランク以外で、地域住民等の意見や各都道府県の実情に応じて抽出したバス停留所

昨年(2021年)1月22日付けで公表された国交省のリストでは、神奈川県内で732カ所が抽出され、港北区内では東急バスを中心に横浜市交通局と臨港バス(川崎鶴見臨港バス)の3社から次の25停留所・28カ所が挙げられています。

国交省が対策を求めている港北区内のバス停

  • 東急バス:常盤台(日吉駅方面)日吉1丁目7<Bランク>
  • 東急バス:日吉町(日吉駅方面)日吉1丁目9<Bランク>
  • 東急バス:日吉矢上(日吉駅方面)日吉2丁目17<Cランク>
  • 東急バス:日大高校前(日吉駅東口方面)日吉7丁目1<Bランク>2021年10月停留所移設済み
  • 東急バス:宮前西町(日吉駅東口方面)日吉7丁目2<Bランク>
  • 下田地蔵尊(高田町方面)東急バス:下田地蔵尊(高田町方面)下田町1丁目4<Cランク>
  • 東急バス:新田坂下(日吉駅方面)下田町6丁目2<Bランク>
  • 東急バス:下田上町(綱島駅方面)下田町6丁目14<Cランク>
  • 東急バス:広町(日吉駅東口方面)綱島東5丁目10<Bランク> 2021年10月停留所移設済み
  • 東急バス:広町(綱島駅方面)綱島東6丁目4<Cランク>2021年10月停留所移設済み
  • 東急バス:上町(綱島駅方面)綱島台11<Bランク>
  • 東急バス:髙田交差点(綱島駅方面)高田東1丁目47<Cランク>
  • 東急バス:髙田交差点(江田駅方面)高田東4丁目-11<Bランク>
  • 横浜市交通局の「菖蒲園前」(綱島駅方面)横浜市交通局:菖蒲園前(綱島駅方面)樽町1丁目26-20番地先<Cランク>
  • 川崎鶴見臨港バス:菖蒲園前(鶴見駅西口方面)樽町2丁目1先<Cランク>
  • 東急バス:新吉田町(綱島駅方面)新吉田東1丁目3<Bランク>
  • 東急バス:新吉田町(勝田折返所方面)新吉田東5丁目21<Cランク>
  • 東急バス:東前(勝田折返所方面)新吉田東5丁目47<Bランク>
  • 東急バス:神隠(綱島駅方面)新吉田町6039<Bランク>
  • 東急バス:吉田新田(綱島駅方面)新吉田町6088<Bランク>
  • 川崎鶴見臨港バス:明治横浜研究所前(綱島駅方面)師岡町760番地先<Bランク>
  • 横浜市交通局:太尾神社前(新横浜駅方面)大倉山2丁目15-27番地先<Cランク>
  • 横浜市交通局:大綱中学校前(新羽駅方面)大倉山3丁目42-17番地先<Cランク>
  • 東急バス:南台町(新横浜駅方面)新羽町1094<Cランク>
  • 横浜市交通局:新羽町(中山駅方面)新羽町1625-1番地先<Cランク>
  • 東急バス:新羽町(綱島駅方面)新羽町1719<Bランク>
  • 横浜市交通局:菊名橋(鶴見駅方面)菊名2丁目18-1番地先<Bランク>
  • 横浜市交通局:菊名小学校入口(菊名駅方面)菊名4丁目6-15番地先<Cランク>

停留所の移動により待合所からは離れてしまうことも(広町)

改善が求められるリストに入った停留所は、日吉や綱島の周辺が多く、日吉駅から下田町にかけての市道沿いや、綱島駅から高田駅にかけての子母口綱島線沿いなど道幅の狭い場所に置かれたバス停が目立ちます。

このなかで対策が完了したのは2停留所の3カ所。綱島東5・6丁目の工場集積エリアにある「広町」は上下線とも交差点から離すためにバス停を移動した結果、寄贈によって作られた屋根付き待合所からは離れてしまう形となりました。

横断歩道と交差点から離す対策を行った日大高校前バス停

日吉7丁目「日大高校前」も横断歩道や交差点から間隔を取りましたが、バスを待つスペースと停止位置が離れることになっています。

広町や日大高校前のようにすぐに停留所を移動できるケースは少ないといい、港北区内に路線を持つバス事業者は「移したくても代替地が見つからず、土地所有者の許可がなかなか得られない」と話します。

バス停の設置には土地所有者とバス利用者の協力が欠かせない(港北区内)

停留所の利用者にごみを捨てられたり、敷地内に入られたりするケースがあることから、「横断歩道に近いか遠いかに関わらず、自分の家の前からバス停を離してほしいという声は多い」と打ち明けます。

「安全対策は必要だが、バス停を置いた後に横断歩道が設けられた場所もある。移転先が見つからなければ停留所自体を廃止するしかなくなってしまう」(同)

子母口綱島線沿いでは横断歩道や交差点の近くに置かざるを得ないバス停も目立つ

2018年に死亡事故が発生した三ツ沢南町の停留所を見ても、市交通局の調べでは、1963(昭和38)年7月の路線開業と同時にバス停を設置。その8年後の1971(昭和46)年12月になって横断歩道が設けられていました。

また、この事故が起きた横断歩道は信号機がないものの、本来は自動車側が一旦停止し、安全を確認する必要がある場所。当時の報道では事故を起こした車の運転手は逮捕され有罪となっています。

トレッサ横浜最寄りの「明治横浜研究所前」(綱島方面停留所)も対象となった

停留所を横断歩道から離し、見通しを良くするための移動自体は不可欠ではあるものの、代替地が見つからずに停留所自体が廃止となれば、影響を受けるのは車を使わないバスの利用者です。

道路は誰のためにあるのかという問いに対し、優先すべきは車なのか公共交通機関なのか、あるいは歩行者や自転車なのか。横浜市内や港北区内では特に狭い場所の目立つ道路空間で、共生するための難しい判断が迫られています。

この記事は「横浜日吉新聞」と「新横浜新聞~しんよこ新聞」の一部共通です

【関連記事】

横断歩道近接のバス停、日吉方面行の「綱島変電所」など区内3停留所は“危険度C”(2018年12月4日)

<横断歩道近接のバス停>大倉山「観音前」で現地診断、総合的な安全対策を検討(新横浜新聞~しんよこ新聞、2018年12月18日)

【参考リンク】

バス停留所の安全性確保対策について(関東運輸局、関東1都7県のリスト、年に2回対策状況を公表するという)


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