綱島・鶴見川の河川敷を彩る「オレンジの花」を知っていますか――。
港北区内98団体が所属する「よこはま緑の推進団体港北区連絡会」(中村文太郎会長)と、活動を推進するための29人により構成される「よこはま花と緑の推進リーダー 港北リーダー会」(真島淳子会長)は、今月(2021年)10月9日、「ハマカンゾウを咲かせ、種まきで緑化促進」講座を開講。
講師に、綱島西2丁目の鶴見川河川敷近くに活動拠点を置くNPO法人「NPO法人鶴見川流域ネットワーキング(TRネット)」代表理事で、慶應義塾大学名誉教授の岸由二(ゆうじ)さんを講師に招き、今年の夏も鶴見川を彩った「ハマカンゾウ」についての説明や、種まきのコツといった実践的なレクチャーをおこないました。
同連絡会とリーダー会は、昨年度(2020年度)から綱島でスタートした3カ年かけての横浜市地域緑のまちづくり事業「つなつなプロジェクト」を担う地域団体「フローラルつなしま」(正式名称:綱島西地区緑のまちづくり推進団体、中森伸明会長)に参画。
同じく同プロジェクトに参画した同NPO法人が取り組む、万葉集の和歌にも「ワスレグサ」として多く詠まれ、日本の古来から人々に親しまれてきたというユリ科ワスレグサ属の植物「カンゾウ(萱草)」を増やす取り組みを学ぶ機会としての初めての企画・実施となりました。
岸さんや同NPOのメンバーが鶴見川河川敷で育成しているのは、「ノカンゾウ」と「ヤブカンゾウ」、そして今回の講座で取り上げた「ハマカンゾウ」の3種類。
もともと、同NPOの事務局(綱島西2)がある場所にも近い鶴見川の「バラ島」付近などで2005(平成17)年頃から育ててきたことが源流だといい、河川を管理する国土交通省とNPOが取り組む施策としては2019年から正式に繁殖・育成をスタート。今年で3年目を迎えたとのこと。
今年は6月中旬から「ノカンゾウ」と「ヤブカンゾウ」がバラ島付近で咲き始め、東急線の鉄橋にも近い「カニ島」付近では「ハマカンゾウ」が8月上旬から中旬にも、「この時期だけ」(同NPO)という、満開の花を咲かせていたといいます。
ちょうど、今回の講座の開催時期の秋に種まきのシーズンを迎えたことから、種まきのコツの講習会もあわせおこなわれ、参加者には3株の苗とともに種も配布。
「それぞれの花壇やプランターなどで咲かせてあげてください」(真島会長)と、繁殖することで雑草対策にもなるという「オレンジ色」の花を咲かせる野草についての理解と共感をメンバーに呼び起こしていました。
岸さんは、「綱島に、ノカンゾウ、ヤブカンゾウ、そしてハマカンゾウを愛好する文化が育ってくれればうれしい」と、鶴見川流域や、岸さんが森の保全をおこなう三浦半島小網代の森(三浦市三崎町)でも繁殖をおこなう活動への理解が進み、共感の輪が広がることでの“流域の未来の姿”を思い描きます。
岸さんの活動を支える同NPO理事の亀田佳子さんは、「園芸の世界では、外来種の草花を植えることは当たり前となっていますが、日本古来の自然を守るべき野山や河川といった場所では、外来種が“問題”となることも多いのです。その異なる概念、そして価値観を超えて、ガーデニングを主たるジャンルとされる皆さんとの交流の機会を得られたことは大変意義深い」と、同じ“地域”がつなぐ縁が発端となり、今回の企画が実現したことへの、心からの謝意を表していました。
地域まちづくり「3カ年」計画の折り返し地点にある、綱島エリアの「花と緑のまちづくり」。
「その花の美しさに憂いを忘れる」との語源があるともいわれる「ワスレグサ」のオレンジ色の花たちが、鶴見川河川敷を彩る来年(2022年)の夏を待ちわびることで、また新しい綱島名物、その花の美しさへの期待感が高まる日々となりそうです。
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【参考リンク】
・つなつなプロジェクトのFacebookページ ※綱島の「花と緑のまちづくり」、鶴見川流域での活動についても最新情報として掲載
・2020年度『みど*リンク』アクション認定証授与式【NPO法人鶴見川流域ネットワーキング】(東急株式会社)
・鶴見川流域ネットワーキングのFacebookページ ※開花情報など
・江の島彩時記~ハマカンゾウ(浜萱草)ユリ科ワスレグサ属 常緑多年草(えのしま・ふじさわポータルサイト=藤沢市・NPO法人湘南ふじさわシニアネット運営)※ハマカンゾウについて解説