綱島「池谷桃園(いけのやとうえん)」での、この夏の桃の収穫が最盛期を迎えます。
明治30年代からの百十数年もの桃栽培の歴史を継ぎ、現在、綱島で唯一の桃農家として知られる池谷家(綱島東1)では、同家が経営する桃畑(池谷桃園)での最大品種である白鳳(はくほう)の収穫を先週(2019年7月8日頃)から本格化。
今週末の7月20日(土)頃には、その日に採れた桃の直売もピーク数量に達する見込みです。
現在、約60本ある同家の桃の木のうち、約半分を占める白鳳は、最大(ピーク日)で約300個の収穫を見込んでいます。
「その日の“もぎたて”を直売しています。スーパーなどではカットされている葉や枝もつけたまま、綱島で採れる桃ならではの新鮮さを地元の皆さんに味わってもらえれば」と、第16代当主・池谷道義さん、弟の聡さんは、一つひとつ、丁寧に“食べごろ”を判断した桃の収穫に取り組んでいます。
池谷家では、1907(明治40)年に、同家の故・池谷道太郎(みちたろう)氏が栽培に成功させたことで知られる品種・日月桃(じつげつとう、6月上旬)が15本、日川白鳳(6月中旬)が4本、蟠桃(ばんとう、7月中旬)が5本、や黄金桃(おうごんとう、8月上旬)が2本と、5種類の桃の木から桃の実を収穫しています。
桃は午前中に収穫し、その日の収穫量に合わせて午後から桃を直売。収穫量に合わせて13時から、16時から、17時からといったように販売開始時間を調整し、変更。
2017年2月で閉店した、桃園に隣接する旧ゴルフ練習場「綱島ピーチゴルフセンター」のサイトを、「池谷桃園」ホームページとして改修、その日の桃販売の開始時刻を告知しています。

古民家と桃畑との間にある直売所。池谷桃園(旧:綱島ピーチゴルフセンター)のサイト に発売開始時刻を掲載。収穫日に更新し告知している(写真は2018年の販売時)
直売所は、古民家で歴史的建造物の池谷家住宅前と桃畑との間に位置。「電話やメールなどでの桃の販売についての問い合わせには対応していませんので、ご了承ください」(道義さん)とのことです。
なお、今年の桃は、春先の寒さの影響からか、開花時期が2週間ほどに長引き、また、昨年(2018年)12月から東急新横浜線(相鉄・東急直通線)のトンネル掘削工事に伴うプラントが建設され、冬場の日照が短くなった影響からか、実を守るための「袋かけ」枚数も、昨年の8300枚から6500枚に減少。実の付きも例年より遅めとのこと。
かつて綱島、日吉エリア一帯が「桃園」として彩られた時代の風景を唯一残す池谷家は、地元・綱島の障害者作業所「四季菜館」(綱島西3)に、ジャム製造用の桃を提供するほか、「綱島桃エール」に加工・販売する株式会社横浜ビール(高橋智己社長)、横浜・元町の洋菓子店「ラトリエ ドゥ アンティーク」(中区石川町)にも日月桃や白鳳を一部提供するなど、地域を代表する「綱島の桃」ブランドとしての価値を高める試みを行っています。
新綱島駅(仮称)の開発の影響を少なからず受けている池谷家が挑戦する、桃の歴史継ぐ試みは、ここでしか味わえない“桃の味覚”とともに、綱島周辺の人々に広く語り継がれていきそうです。
【収穫の様子など】
【関連記事】
・綱島の旧家・池谷家で歴史継ぐ「桃」が早くも開花、見頃は3/27(水)頃まで(2019年03月19日)
・綱島の伝統をつむぐ貴重なイベント、2019年「綱島桃まつり」は3/10(日)に(2019年3月5日)
・2018年の綱島桃まつりは3/11(日)、鉄道工事の影響と“桃”を継ぐ人々(2018年3月7日)※池谷家の日月桃を使用した桃エールの紹介
・<綱島東小>転入生に伝えたい綱島の魅力、まちを知り伝える特別授業(2018年2月7日)※池谷道義さんも登壇、池谷家住宅についても記載
・40年超の歴史持つ「綱島ピーチゴルフ」が来年2月閉店、跡地にトンネル工事施設(2016年12月10日)
【参考リンク】
・池谷桃園(旧:綱島ピーチゴルフセンター)のサイト ※直売所の販売情報を掲載。収穫日のおおむね午後に更新、メールや電話での問い合わせ対応不可とのこと
・ビール原材料の生産者様紹介~<綱島桃エール>綱島桃園 池谷さん(株式会社横浜ビール)
・第15回 日月桃の昨日今日-綱島の桃-港北区の歴史と文化(シリーズ わがまち港北、公益財団法人大倉精神文化研究所)
・特産「綱島桃」今も栽培、綱島の池谷光朗さん(ピーチゴルフセンターの創始者、「とうよこ沿線」1994年6月号「綱島とその周辺ウォッチング」より)※第15代の故・光朗さんの記事