2018年の綱島桃まつりは3/11(日)、鉄道工事の影響と“桃”を継ぐ人々 | 横浜日吉新聞

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第22回目を迎えた「綱島桃(もも)まつり」の案内チラシ(つなしまピーチネットのサイトより)

第22回目を迎えた「綱島桃(もも)まつり」の案内チラシ(つなしまピーチネットのサイトより)

今年も桃まつりの季節がやってきました。第22回目を迎えた「綱島桃(もも)まつり」(港北桃まつり実行委員会主催)が、来週(2018年)3月11日(日)11時~15時まで(雨天時は18日(日)に延期予定)、綱島市民の森(綱島台)内の「桃の里広場」(上町バス停下車)で行われます。

今回も例年通り、桃ジャムのロールパン作りや桃にまつわる和菓子・地ビールなどの販売、桃ジャムや桃酒の試食試飲、野点、竹細工や竹馬づくり綱島囃子綱島音頭・あらめや音頭を「みんなで歌って踊る」などの催しが予定されています。

昨年(2017年)2月末に、桃の木にちなんで名称を付けたゴルフ練習場「綱島ピーチゴルフセンター」(綱島東1)が営業終了。隣接地に植えられていた桃の木も10本伐採されたこともあり、昨年の桃の収穫、また今回の桃まつりにとっての「桃の木」の減少の影響が果たしてあるのか。

「桃」を継ぐ人々として、同実行委員会事務局の堤キミ江さん綱島で唯一の桃農家として知られる池谷(いけのや)道義さんに、今年の桃まつりに向けた準備たけなわの中、今年の開催に向けた想いを聞きました。

桃ジャム・桃酒試飲は「綱島市民の森」産で“継承”実現へ

昨年(第21回)開催時の様子(2017年3月12日)

昨年(第21回)開催時の様子(2017年3月12日)

綱島の桃を守り愛好する「綱島の桃の会」のメンバーとしても活動をしている堤さんは、「相鉄・東急直通線」(2022年10月以降、2023年3月までに開業予定)の影響で、新綱島駅(仮称・綱島東1)の建設予定地でもかつて育てていた10本の桃の木の伐採するという“辛い現実”を経験します。

しかし、同実行委員長であり、綱島市民の森愛護会の会長・飯田助知(すけとも)さんが同市民の森に植えた6本の桃の木や、「桃の会」メンバー宅で新たに育てた桃の木2本などから、桃ジャム・桃酒に使用する分の桃を、幸いにも収穫できたとのこと。

昨年は港北区の横山日出夫区長(右)も来賓として訪れた。最左は実行委員長・綱島市民の森愛護会会長の飯田助知さん(2017年3月12日)

昨年は港北区の横山日出夫区長(右)も来賓として訪れた。最左は実行委員長・綱島市民の森愛護会会長の飯田助知さん(2017年3月12日)

桃を愛する会員により、桃を植樹する、また広げようとする活動が、実を結んでいると感じています」と堤さん。

今年は、「市民の森の6本の桃の木を、大胆に剪定(せんてい)し、消毒してしまったので、来年は桃をどの程度、他の木から採れるかはわかりませんが、“桃・栗三年”と言われるように、また新たな桃が育ち、実らせてくれるようにと祈っています」と、早くも来年以降の桃まつりに向けた、更なる「熱き想い」についても言及します。

地域の園の子どもたちが踊りにやってくるのも楽しみにしているといい、「園の都合で来られない年もあったのですが、今年は賑やかになりそうです。また、綱島東小学校(綱島東3)からも、『桃まつりについて、総合的な学習の時間で取り上げました』との連絡をいただいています」と、地域に根差したイベントとして、とりわけ「子どもたちの踊り」であふれる時間が、とにもかくにも楽しみだと堤さんは笑顔で語ります。

春の「桃エール」は甘みが特徴、すでに近隣店舗には出荷済み

昨年の「桃エール」販売の様子。価格は今年も1本500円(税込)とのこと(2017年3月12日)

昨年の「桃エール」販売の様子。価格は今年も1本500円(税込)とのこと(2017年3月12日)

「桃まつり」で今年も予定されているのが、地元・横浜の地ビール会社(株式会社横浜ビール:中区)で製造している、綱島で収穫された“桃”を使用した地ビールとして人気の「桃エール」

「ピーチゴルフセンター」隣接地の10本の桃の木がなくなってしまったことと、綱島伝統の桃品種として知られる「日月桃」(じつげつとう)の昨年の出来が「あまりよくなかった」(桃農家の池谷さん)というものの、「幸い、ビール化には全く問題はありませんでした」と、横浜ビール醸造長の深田優(ゆう)さん

春醸造の「桃エール」が池谷家に届けられた。手前右が池谷道義さん、中央が横浜ビールの太田久士社長。中央奥が深田優醸造長(2018年3月5日)

春醸造の「桃エール」が池谷家に届けられた。手前右が池谷道義さん、中央が横浜ビールの太田久士社長。中央奥が深田優醸造長(2018年3月5日)

昨年、池谷家で収穫した桃「日月桃」と、「白鳳(はくほう)」を仕込んで作ったビールは、秋、春醸造分ともに各900リットルとのこと。

春の仕込み分は3月3日から近郊の酒店などにすでに出荷を行っており、「昨年秋は9月初めに出荷したのですが、1カ月後には全て完売してしまいました。秋は、日月桃の“香り”が強かったのですが、春は“白鳳”の甘みが引き立つ味に仕上がったんですよ」と、毎年採れる桃、また季節によっても、その味わいが異なる風味になると説明します。

毎年、異なっていいんです」と、同社代表取締役社長の太田久士(ひさし)さん

白鳳(はくほう)の「甘み」が今年の春の特徴とのこと。毎年異なる味を楽しむのも地ビールの愉(たの)しさ(2018年3月5日)

白鳳(はくほう)の「甘み」が今年の春の特徴とのこと。毎年異なる味を楽しむのも地ビールの愉(たの)しさ(2018年3月5日)

生産者の想いを伝えるのがわれわれの仕事。綱島の皆さん、またこの街を訪れる皆さんに、このビールを通じて、綱島の桃を知っていただき、またその歴史も伝えていけたら」と、綱島の象徴としての“桃”の現在の姿、そしてそれを栽培する農家の想いも大切にしたいと語ります。

生産者への感謝の気持ちを込めて、完成したビールを届けているといい、「ビールを作っていただくことで、生産者同士の横のつながりもできて嬉しく思っています」と、池谷さんも、ビール製造者がつなぐ“縁”に心から感謝しているといいます。

同社によると、近隣店舗に卸せる本数もわずかな場合が多いといい、「桃まつりでは、8ケースほど販売する予定です。昨年も午前中の早い段階で売り切れてしまいました。ぜひ、お早目にご来訪いただき、桃まつり会場で“桃エール”をお楽しみください」と、当日の来訪を呼び掛けています。

「桃の歴史」をどう語り継ぐか、街の未来支える“人材育成”を

綱島の“三大花まつり”とも言われた菜の花まつりは今年は開催されないことになった。種植えは行われたが、菜の花の生育も悪い(2018年2月24日、鶴見川河川敷)

綱島の“三大花まつり”とも言われた菜の花まつりは今年は開催されないことになった。種植えは行われたが、菜の花の生育も悪い(2018年2月24日、鶴見川河川敷)

綱島市民の森で新たに植えられた「桃」が、桃の実を付け収穫もされたことにより、新しい“桃の歴史”の継承へと前進した桃まつりですが、特に綱島駅付近で新たに進む再開発の流れの中、桃の歴史を継承していくのは“簡単なことでない”と池谷さん。

「桃まつり」「桜まつり」とともに、これまで綱島の春を彩ってきた“三大花まつり”のフィナーレを毎年飾る「菜の花まつり」(昨年まで6回、4月上旬に開催:同実行委員会・綱島地区連合自治会)は、関係者によると、今年は開催されないとのことです。

「地域の祭り」を継承していくためには、それぞれの“熱き想い”を重ね合わせるのはもちろんですが、街を支える若手人材の育成、また、中小商店や企業などにも見られる「後継者」の確保についても、様々な議論が必要になってくるとも言えそうです。

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【参考リンク】

開催!平成30年桃まつり(つなしまピーチネット)

超限定!【綱島桃エール】開栓&販売開始!!(株式会社横浜ビール)


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