<綱島東小>転入生に伝えたい綱島の魅力、まちを知り伝える特別授業 | 横浜日吉新聞

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昨年(2017年)秋から行われてきた「総合的な学習」のテーマは、綱島のまちを知り、伝える授業。「新しく来た友達」、転入生に伝えたい情報を発信することを目標に議論や調査を重ね、“綱島の桃”、現在も、桃を継ぐ池谷さんの想いにテーマを絞った(2018年1月18日)

昨年(2017年)秋から行われてきた「総合的な学習」のテーマは、綱島のまちを知り、伝える授業。「新しく来た友達」、転入生に伝えたい情報を発信することを目標に議論や調査を重ね、“綱島の桃”、現在も、桃を継ぐ池谷さんの想いにテーマを絞った(2018年1月18日)

綱島を知らなかった「転入生」に、まちの魅力を伝えたい――綱島東3丁目にある綱島東小学校(荻原規彦校長)では、今年度(2017年4月~2018年3月まで)から「総合的な学習の時間」綱島の地域を知ることに重点を置いたテーマを設定した授業を行っています。

昨年(2017年)10月から約50時間の日程にて予定されている同学習の時間において、同校5年生の1クラスでこの題材が採用されました。

児童が地域を掘り起こし、魅力を知り学んだことを、「これまで綱島を知らなかった転入生に伝えるために情報を発信する」という点をゴールに設定。「綱島の魅力を伝え隊」と名付けて週に2~3回のペースで授業を実施しています。

人口激増の綱島東、“転入生に伝えたい”まちの魅力を発信へ

教室に貼られた模造紙には、紙からあふれるばかりの綱島の魅力が。児童たちが広く意見を出し合い、“核”となるテーマを選定してきた

教室に貼られた模造紙には、紙からあふれるばかりの綱島の魅力が。児童たちが広く意見を出し合い、“核”となるテーマを選定してきた

同小の荻原校長によると、同小学校の学区では、宅地造成や人口流入に伴い、「元々、綱島出身と言える児童は2割程度ではないか」と感じているといい、現在もマンションの新設などに伴い、2018年1月だけでも生徒が9人増えており、来年度のスタート時(2018年4月)からは、約50人が転入してくる予定だといいます。

萩原校長は今回の学習を進めるきっかけについて、「綱島東小に赴任した時、地域の方から“学校が地域に何ができるのか”といった問いかけもいただいたんです。子どもたちが成長し、例えば国際的に活躍できるようになっても、戻って来られる“ふるさと”として、綱島の街を知ってもらいたい」と、“地域の人々”とのかかわりについて説明します。

「綱島の魅力といえば、子どもたちの中で、それぞれ確立されているものがたくさんあることがわかりました」とクラス担任の山本美桜さん

今回の「総合的な学習」を進行してきた担任の山本美桜さん。子どもたちに語りかけながら、分かりやすく授業を進行していた(2018年1月18日)

今回の「総合的な学習」を進行してきた担任の山本美桜さん。子どもたちに語りかけながら、分かりやすく授業を進行していた(2018年1月18日)

例えば、かつて綱島のまちに多くあったという桃園(桃畑)や歴史の風情をたたえる綱島諏訪神社(綱島東2)、祭りや公園、自然豊かな環境であることなど、児童とこれまで感じ、また探してきた綱島の魅力を語り合うなかで、「人のつながりがたくさんあり、様々な思いの上に成り立っているからだということに気付いてほしい」という結論に至ったといいます。

これまで綱島のまちをつくりあげてきた人たちの思いや願いに気付き、「それを踏まえ、魅力として伝えていけるようにしていきたい」との考えで、これまで授業を重ねてきたと山本さんは説明します。

綱島を知らない「転校生」たちにも、ぜひこのまちの魅力を“子どもたち自ら伝えてほしい”と、この授業のゴールとして「記事や映像として作成し、発信」するという大きな目標を設定したと語ります。

語り継ぎたい「桃」の歴史、今も伝える池谷さんも登壇

特に、同小の学区に立地する綱島の「桃」は、同小の校歌や、校章にも採用されていることから、1月中旬には、綱島の桃栽培の「祖」と言われる、明治30年代から桃の歴史をつないできた池谷道太郎(いけのやみちたろう)氏の子孫で、第16代当主・池谷道義さんが同授業に登壇。

綱島の「桃の歴史」を現在もつなぐ池谷家。毎年冬に、綱島東小学校の3年生が地域の歴史を学ぶために訪問している(2017年1月撮影)

綱島の「桃の歴史」を現在もつなぐ池谷家。毎年冬に、綱島東小学校の3年生が地域の歴史を学ぶために訪問している(2017年1月撮影)

池谷さんは、これまで綱島の桃の歴史をつないできた苦労や、これからの街づくりの中で「本当に桃の歴史をつないでいけるのか」という未来についての不安にも、児童たちに語りかけ、「綱島のより良い未来、歴史をぜひ皆さんで作って行ってもらいたい」と、今回の学習のさらに先にある“未来”についても言及したといいます。

毎年、同小学校では、3年生が、綱島で今でも唯一、桃農家の歴史を継いでいる池谷家(綱島東1)を見学しているといい、「自分たちが綱島の魅力を受け継いでいきたい」との想いを抱きつつあるという同クラスの児童たちが、どのようにこれから綱島の桃や、まちの魅力について発信する情報をまとめるのか。学習の成果としての発表に期待感も高まっているといいます。

桃まつりへの参加もわずか“1人”。「人」でつなぐ情報発信を

この日は研究授業として、大学教授や周辺校の管理職、同校の教員約20人も授業の様子を見学した(2018年1月18日)

この日は研究授業として、大学教授や周辺校の管理職、同校の教員約20人も授業の様子を見学した(2018年1月18日)

なお、毎年3月に綱島市民の森(綱島台)内で開催されている「綱島桃まつり」も、実際に行ったことがあるという児童は同クラスでわずか1人だけ。

人と人とが出会う桃まつり、また、綱島の桃の歴史を継いできた品種“日月桃(じつげつとう)”についても、より大切なまちの魅力として、記事に扱いたい」(同クラスの児童ら)と、綱島の歴史を継承する祭りも、「人」あってこそ、とクラス一同、感じているといいます。

担任の山本さんは「池谷さんはじめ、綱島の魅力を教えてくれた『人』に感謝しながら、『人』の役に立てる形で情報発信を行い、子どもたちの自信につなげていきたいと思っています」と、3月中旬まで行われる授業の最終目標を設定。「その成果についても注目してもらえたら」と、同小の学習の試みについて広く知ってもらいたいと語ります。

綱島の歴史が、子どもたちによりどのように伝えられていくのかを楽しみにしたい(2018年1月18日)

綱島の歴史が、子どもたちによりどのように伝えられていくのかを楽しみにしたい(2018年1月18日)

「人」がつないてきた桃栽培などの綱島の歴史。2022年10月以降(2023年3月まで)に開業を予定している「相鉄・東急直通線」の工事で、新綱島駅(仮称・綱島東1)の建設予定地に隣接する池谷家、桃畑をどのように残すのか。その歴史を、これからもつないでいくことができるのか

児童らがまず「気がついた」綱島の歴史を、これからさらに激増すると推測される「転入者」に自ら発信し、伝えていくことで、まちを大切に想う児童が育まれ、歴史を大切にしながらまたさらに未来へと情報発信を続けていくことにつながることを期待したいものです。

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【参考リンク】

横浜市立綱島東小学校のサイト

校歌・校章(横浜市立綱島東小学校)

総合的な学習の時間(文部科学省)


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