今年は例年より1週間程度も早い開花となりました。綱島で桃農家を唯一営む旧家「池谷(いけのや)家」(綱島東1)の桃の花が先週末(2019年3月)15日に早くも開花。例年(3月下旬から4月上旬)より早めの、今週21日(木)以降、来週半ばの27日(水)頃までが見頃となりそうです。
綱島のまちは、1907(明治40)年に、同家の故・池谷道太郎(みちたろう)氏が、桃の新品種「日月桃(じつげつとう)」の栽培を成功させたことで、1931(昭和6)年頃には、「東の神奈川、西の岡山」と言われるほどの、全国屈指の“一大桃産地”に発展します。
しかし、戦前の二度の鶴見川の水害や、戦後の温泉や宅地などの開発もあり、綱島の桃農家は1965(昭和40)年頃には、この池谷家一軒に。
今では、桃の歴史を継ぐ池谷家の第16代当主・池谷道義さんや、弟の聡さんら親族が中心となり、約60本の桃の木を育て、初夏には日月桃や白鳳(はくほう)といった綱島産の桃を収穫し販売しています。
この「池谷桃園(とうえん)」でも、気象庁が定める、桜(ソメイヨシノ)の開花宣言でも有名な“標準木”のような役割を果たす木を設定しており、「今年もこの桃の木の花が、一番早く咲きました」と道義さん。
道義さんの先代で父の故・池谷光朗(みつろう)さんが、戦争の影響もあり一度途絶えてしまった「日月桃」の歴史を継ぐため、1998年に日月桃の木を茨城県つくば市にあった果樹研究所(現国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)から引き受け、育ててきたうち、現在もわずかに残る初期の桃の木のうちの一本がそれにあたると説明します。
桃を育てる環境、そして江戸時代の1857(安政4)年に主屋が建築されたという歴史的建造物の池谷家住宅も、相鉄・東急直通線(東急新横浜線)の新綱島駅の建設にともなう工事や再開発で、そのエリアの縮小や建物・敷地の保存維持にも大きな試練を感じているといいます。
先代・光朗さんから継いだ「桃の歴史」を、どのように守り、次世代につないでいくのか。
道義さんは、「桃の色彩のシャワーを、目に鮮明にやきつくほどに感じてもらえたら。綱島の桃畑は、この街の、この場所でしか見られません。あちらこちらで見られる桜と違い、一面の桃の花を見られることは、人生においてもなかなかないのではないでしょうか」と、桃の花を多く人々に見てもらい、綱島の歴史、そして花の美しさを感じてもらえたらとの想いを語ります。
池谷家の桃畑は、公道(一般道)から見ることが可能(立ち入り不可)。見頃の予想時期は、この後の気温などの天候状況によっても変わる可能性があるとのことです。
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・2018年の綱島桃まつりは3/11(日)、鉄道工事の影響と“桃”を継ぐ人々(2018年3月7日)※池谷家の日月桃を使用した桃エールの紹介など
・<綱島東小>転入生に伝えたい綱島の魅力、まちを知り伝える特別授業(2018年2月7日)※池谷道義さんも登壇、池谷家住宅についても記載
・百年余の歴史継ぐ伝統の「桃の花」は今週末にも満開、綱島東の池谷家で(2017年4月7日)※昨年の記事
【参考リンク】
・綱島の桃の歴史(つなしまピーチネット~港北みりょく発見団)
・特産「綱島桃」今も栽培、綱島の池谷光朗さん(とうよこ沿線)※故・光朗さんの記事
・第15回 日月桃の昨日今日-綱島の桃~港北区の歴史と文化(シリーズわがまち港北~公益財団法人大倉精神文化研究所)
・幻の桃!綱島の日月桃を使用した「桃エール」出荷開始!(横浜ビール)※毎年1000リットルの限定醸造、今年はアピタ横浜綱島店(アピタテラス内)にも初出荷