北綱島特別支援学校は保土ケ谷・上菅田の「分校」に、“再編計画”は撤回せず | 横浜日吉新聞

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ひよしコラム2015年9月に閉校方針が打ち出されてから2年半弱。北綱島特別支援学校(綱島西5)は「分校」とし、現時点では存続させるとの結論に至りました。保護者らの反対を押し切り、人口増加地域の学校をわざわざ“分校”とした横浜市教育委員会の思惑はどこにあるのでしょうか。

今月(2018年2月)19日に開かれた横浜市会の「こども青少年・教育委員会」では、2019年4月から北綱島特別支援学校を上菅田(かみすげた)特別支援学校(保土ケ谷区)の分校にするとの条例改正案を賛成8人(自民4人、民進3人、公明1人)、反対2人(共産、無所属)の賛成多数で可決しました。市会の三大会派である自民党や民進党、公明党が賛成しているため、最終決定を行う本会議でも同様に可決される見通しです。

2月18日の横浜市会「こども青少年・教育委員会」では2人の反対があったものの「分校案」を賛成多数で可決した(インターネット中継より)

横浜市会ではこれまで、すべての会派と無所属議員から苦言を呈され、一連の過程における対応に反省を促されながらも“分校案”を何とか押し切った形の横浜市教育委員会。2年半弱の間には、「閉校」→「閉校までの期限付き分教室」→「閉校期限のない分教室」→「条例に定めた分校」と幾度も方針が変わり、最終的には分校化を市会との“落としどころ”とした恰好です。

市教委によると、北綱島特別支援学校の閉校方針を決めるにいたったきっかけは、同校の「狭あい化」だったといい、「移転先を検討するところから始まったが、どうしても周辺に適地を確保できなかった」(2月19日「こども青少年・教育委員会」での岡田優子教育長答弁)ことだったといいます。

そのため、市は旭区に「左近山(さこんやま)特別支援学校(仮称)」を新たに設けるとともに、神奈川県も青葉区みたけ台の県立中里学園跡に県立特別支援学校を2020年4月に新設する計画があることから、「県立を含めてなるべく近くに通うような形ができないかということで(北綱島の閉校を)提案した」(同)と説明します。

設置義務のある「神奈川県」の責任を強調する市教委

横浜市内と周辺部における肢体不自由児童や生徒を受け入れる特別支援学校の配置図(横浜市教育委員会の資料より)

市がこれまで強調してきたのは、「法律上の設置義務者である県の責任はある」(同)という点で、市立の特別支援学校を現状の5校以上に増やしたくないとの姿勢をにじませてきました。旭区に左近山特別支援学校を新設すると6校体制となってしまうため、“再編”のターゲットとなってしまったのが北綱島。「狭あい化」や「新しい教育には新しい施設が必要」(同)などといった理由が打ち出されました。

閉校方針は、地元の綱島住民をはじめ、保護者から大きな反発を招くとともに、市の最終決定機関である市会でも疑問の声が相次ぎ、市教委はその度に方針を転換。最終的には、条例に明記し、その変更には市会での議決が必要な「分校」とすることで、市会を“突破”しました。

分校化によって、現在のように「校長」ではなく、副校長級の「准校長」が配置されることになるものの、市教委の資料では当面は校長級の人材を充てるとともに、学習面やケアなどほとんどの面で「現状と同じ水準」を維持するとしており、来年4月以降も「今の学校運営を考えると(分校になっても変わることは)ない」(同)といいます。

綱島郵便局近くの綱島西4丁目にある北綱島特別支援学校は、外観からはそれほど狭いようには見えない

ただ、市教委は「閉校と言う言葉だけがショッキングに伝わり、再編整備そのものの理念を伝えられなかった」(同)と、一連の過程で不備があった点には反省を示す一方で、閉校方針を撤回するとの言葉や、再編計画に誤りがあったという姿勢は見せていません

2年半近くにもわたって北綱島特別支援学校の生徒や保護者、教職員らを心身ともに疲弊させ、自らも度重なる軌道修正でその度に貴重な業務時間を浪費してしまった市教委。

それでもまだ、「特別支援学校の設置は県の責任」として、再編計画という名の閉校実現へ執念を燃やすことになるのでしょうか。

北綱島特別支援学校“再編計画”の経緯

  • 2015年9月:
    横浜市教育委員会が北綱島特別支援学校を2019年3月末で閉校するとの方針を横浜市会などで示す
  • 2015年10月~11月:
    保護者や地元住民から閉校撤回を求める3万筆以上の署名
  • 2015年12月:
    教育委員会が「閉校」ではなく2026年度までの「分教室」として限定的に存続させる考え示す
  • 2016年9月20日:
    保護者らが港北公会堂で「存続を求める集い」
  • 2016年10月:
    横浜市会で教育委員会が「閉校する方針に変更はない」と表明
  • 2017年9月~10月:
    保護者説明会や横浜市会で教育委員会が「閉校時期を定めず、希望する新入生を受け入れていく」との方針を説明
  • 2017年11月28日~12月20日:
    有識者会議「横浜市立特別支援学校(肢体不自由)教育推進検討会」を3回開催
  • 2018年1月:
    保護者説明会や教育委員会(会議)の臨時会で「分校」とする案を提示
  • 2018年2月19日:
    2019年4月から上菅田特別支援学校の分校とする横浜市立学校条例の一部改正案を横浜市会に提出、「こども青少年・教育委員会」で、委員長(公明)を除き、委員の賛成8人(自民4、民進3、公明1)、反対2人(共産、無所属)の賛成多数で可決

【関連記事】

<北綱島特別支援学校>市が分教室化後の閉校時期は撤回、「環境継続」を強調(2017年10月4日)

北綱島特別支援学校は「分教室」後に閉校、市教委が“再編整備”の特設ページ(2017年4月18日)

地域の大切な「北綱島特別支援学校」が消される!人口増なのに“縦割り行政”の弊害で(2016年9月20日)

【参考リンク】

市立肢体不自由特別支援学校再編整備について(2017年4月17日公開、横浜市教育委員会)

横浜市立「北綱島特別支援学校」

横浜市立「上菅田特別支援学校」


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