消防団の団員が不足しています。港北区消防団として決められた必要団員数700人のうち、現時点で20人が足りない状態で、来年(2018年)3月には定年などにより約40人が不足するといいます。区内に7つある分団のうち、日吉全域をカバーする「第五分団」も90人の定員が埋まっておらず、分団長をつとめる森茂(もりしげる)さんは「再開発により日吉や綱島では人口が年々増えているのに、逆に消防団員の数は減っている」と危機感をつのらせます。
消防団は江戸時代に生まれた“町火消組織”を源流とし、自らが住む地域を自分たちで守るという考え方のもとで発足しています。近代になって自治体に消防組織が生まれたため、消防団も同様に市区町村の公的消防組織の一つとなったものの、住民が自らの手で災害から守るという役割は変わっていません。各町内の神社や集会所などに置かれた倉庫に、消防車や消火機器が配置されているのはその証(あかし)といえます。
地方都市の町村では、エリアの広さに比して消防署や消防署員の数が多くない地域もあるため、火災や災害時には地域を熟知する消防団がいち早く駆け付け、消火や救助の先頭に立っているケースも数多く見られます。
消防署網が整備された横浜市内のような都心部では、消防団は主に後方支援に回ることが中心となりますが、地域住民ならではの細かな事情を理解しているため、火災などの現場では、消防団のサポートが欠かせません。
「特に地震などの大規模災害が起こった際は消防署員だけでは対応に限界があり、地域に根差した消防団の力が必要です」と港北消防署で消防団担当課長をつとめる梅田篤史さんは力を込めます。
消防団は地域の有志が集まった組織で、団員資格は「年齢18歳以上(70歳以下)で、横浜市内に居住または勤務・在学していること」という条件のみ。
団員になると「非常勤特別職の地方公務員」という立場に変わり、横浜市の場合は一般団員で年間3万4000円の報酬に加え、出動1回につき2400円または3400円が支払われることが条例(自治体の「法律」)で定められています。
「一般の人から見ると、火災や災害などの現場では消防署の署員か消防団員かを見分けられる人は少ないと思います。普段はサラリーマンや主婦の立場にある団員も多いのですが、制服を着た時点で“公務員”という立場で任務にあたっています」と分団長の森さんは言います。
火災や災害は24時間365日いつ起こるか分からないだけに、消防団員になると気を抜けない立場となりますが、「団員は会社員などの本業を持っていますので、たとえ出動できなくてもそれは止むを得ません。各地域に置かれている消防車の場所へ集まれる団員だけが集まり、3人以上になった時点で現場へ急行しています」(森さん)。
火災時の消火をはじめ、地震や風水害といった大規模災害発生時の救助や救出、警戒、避難誘導などさまざまな役割を担うのが消防団。団員になると基本動作などの全体研修を受け、その後は分団ごとに訓練を行っていくといいます。
「月や週に何回、という形で訓練を行うわけではなく、回数は特に決まっていません。また、体力は時に必要ですが、消防団には誘導や警戒、啓発活動などさまざまな役割がありますので、体力があるかないかよりも、自分が住む地域を守る、という思いが大事だと思います」(同)。
全国の消防団員の平均年齢が40.5歳(2016年度)であるのに対し、横浜市では49.6歳と高齢化の傾向が見られます。
「地方都市では、町や村の青年団が消防団員を兼ねていたり、若い人がいる世帯の輪番制だったりする地域も目立ちますが、横浜市内には青年団や輪番制がない地域が目立ち、自主的に団員になっている人が多いため、結果として平均年齢が高くなっているのかもしれません。ただ、60歳の方でも消防団の定年である70歳まで間は十分に活動できますし、私も70歳ぎりぎりまで活動します」(同)。
年齢層が高くなり、定員を割っている地域が多い横浜の消防団ですが、自らの志願で団員となる住民が多い点は特徴で、女性の参加が右肩上がりで増えているという明るい話題もあります。「日吉の分団でも団員となる女性が増えており、主婦や会社員の人を中心に、最近は大学生の団員も加わってくれて本当に心強い」と森さんは喜びます。
「日吉や綱島をはじめ、区内全体に人口が増えています。必ず来ると言われている大きな地震を乗り越えるためにも、どうか地域に力を貸していただければ」(同)。
地域防災になくてはならない消防団。問い合わせは、港北消防署庶務課(045-546-0119内線75)でいつでも受け付けているとのことです。
(参考情報)港北区の消防団は、下記のように地域の実情に応じて、「分団」と「班」によってきめ細かく担当地域が分かれています(2017年10月現在)。
<第一分団>
- 第1班 岸根町、新横浜1丁目
- 第2班 鳥山町
- 第3班 小机町(東部)
- 第4班 小机町(西部)
<第二分団>
- 第1班 菊名1~2丁目、3丁目の一部
- 第2班 富士塚1~2丁目
- 第3班 篠原東1~3丁目
- 第4班 篠原町(北部の一部を除く)、篠原西町、新横浜2丁目
- 第5班 仲手原1~2丁目、篠原台町
<第三分団>
- 第1班 錦が丘
- 第2班 大豆戸町
- 第3班 菊名3丁目の一部、4~7丁目
- 第4班 大倉山1~7丁目
- 第5班 師岡町
- 第6班 篠原北1~2丁目、篠原町(北部の一部)、新横浜3丁目
<第四分団>
- 第1班 綱島西1~6丁目、綱島台、綱島上町
- 第2班 綱島東1~6丁目、綱島台の一部
- 第3班 樽町1~4丁目
- 第4班 大曽根1~3丁目、大曽根台
<第五分団>
- 第1班 日吉5~7丁目
- 第2班 箕輪町1~3丁目
- 第3班 日吉本町4~6丁目
- 第4班 下田町1~6丁目
- 第5班 日吉1~4丁目
- 第6班 日吉本町1~3丁目
<第六分団>
- 第1班 高田町、高田西1、2、4、5丁目、高田西3丁目の一部
- 第2班 高田東1~4丁目、高田西3丁目の一部
- 第3班 新吉田町の西部
- 第4班 新吉田町の東部、南部、新吉田東1~3丁目、4丁目の一部
- 第5班 新吉田東1、2、5~7丁目の一部、綱島西4丁目の一部
- 第6班 新吉田東1、4~7丁目の一部
- 第7班 新吉田町の南部の一部、新吉田東4丁目の一部、8丁目、新羽町の北部の一部
<第七分団>
- 第1班 新羽町(南新羽)、北新横浜1~2丁目
- 第2班 新羽町(中之久保)
- 第3班 新羽町(大竹)
- 第4班 新羽町(中央)
- 第5班 新羽町(北新羽)
- 第6班 新羽町(自治会)
- 第7班 新羽町(町内会)
【関連記事】
・日吉・綱島に最悪のシナリオは「川崎直下地震」、今から何をどう備えるべきか(2016年4月19日、大きな地震が起きたらどうなるか検証)
・「春の褒章」で日吉から受章者、顔を見れば納得の地域貢献で著名な2氏(2016年5月5日、港北消防団の前分団長も受章)
【参考リンク】
・消防団の公式サイト(総務省消防庁)