日吉最古「第一校舎」に秘められた未来像と歴史、10月21日(土)に専門家が対談 | 横浜日吉新聞

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日吉キャンパス最古の校舎をテーマに専門家が語り合う貴重な機会です。

福澤諭吉記念慶應義塾史展示館は、今月(2023年)10月21日(土)の13時から日吉キャンパス内で記念講演会「慶應義塾日吉キャンパスをめぐって」を開くにあたり、参加者250人を10月18日正午まで募集しています。

10月21日(土)13時から15時まで日吉キャンパス内で開かれる記念講演会「慶應義塾日吉キャンパスをめぐって」と、11月4日(土)に日吉キャンパスで開かれる「建築特別見学会」の案内チラシ(主催者提供)

今回の記念講演会は、三田キャンパス内にある福澤諭吉記念慶應義塾史展示館(2021年5月開館)が行っている企画展「曾禰中條(そねちゅうじょう)建築事務所と慶應義塾」の一環で企画されたもの。

同企画展は第1期の「明治・大正編」を今年9月2日に終えており、10月19日(木)から第2期の「昭和編」(12月16日まで)がスタートします。

福澤諭吉記念慶應義塾史展示館(三田キャンパス内)による企画展「曾禰中條建築事務所と慶應義塾」は10月19日(木)から12月16日(土)まで第2期「昭和編」の展示が行われ、このほど保管されているとことが判明した第一校舎の図面原図も公開される予定(主催者提供)

記念講演会では昭和編の展示で重要なテーマとなる日吉キャンパスに焦点を当て、なかでも曾禰中條建築事務所が最初に手掛け、今も残る「第一校舎」について、建築史的に見た特徴や魅力を2人の専門家が語り合う内容となっています。

建築家の曾禰(そね)達蔵(1853~1937)が後輩である中條(ちゅうじょう)精一郎(1868~1936)とともに1908(明治41)年に開設した曾禰中條建築事務所は、「ビルディング」という名称を日本で始めて用いて東京・丸の内の基礎を築くなど、近代日本を代表する民間建築事務所と言われ、慶應義塾では明治末期以降に30件以上の建築物を手がけました。

日吉キャンパスの全体設計にも関わっており、中條が百年先を見据えながら畳二畳分におよぶ鳥観図を描き、それに基づき事務所の若手建築家だった網戸(あみと)武夫(1905~1999)が設計したと言われています。

日吉で最初に完成したのが1934(昭和9)年の第一校舎で、続いて2年後には第二校舎も設けられ、キャンパス像が形作られつつあったなか、太平洋戦争に突入。計画が中断したまま戦禍に巻き込まれてしまいました。

日吉キャンパスを象徴する第一校舎は現在、慶應高校の校舎として使われている(2023年5月撮影)

10月21日の記念講演会では、第一校舎から見えてくる曾禰中條建築事務所の思想や、その後の歴史について、建築史家で横浜国立大学名誉教授吉田鋼市さんと、第一校舎の歴史研究を続ける慶應義塾高校阿久澤武史校長が語ります。

主催する福澤諭吉記念慶應義塾史展示館は、「慶應義塾高等学校の校舎(第一校舎)の外観は、日頃からご覧いただくことができますが、なかなか一般の方の目に触れることがありません。大変面白いデザインの建物ですので、この講演会ではこの校舎を特にクローズアップしてお話をしていただきます」といいます。

会場は第一校舎の裏手に新設された慶應高校の「日吉協育棟・日吉協育ホール」。参加希望者は10月18日(水)正午まで公式サイト上で受け付けており、定員の250人を超えた場合は抽選になるとのことです。

なお、同展示館では11月4日(土)に日吉キャンパスの「建築特別見学会」(11時と14時の2回、90分間、各回定員15人)も企画しており、こちらは10月25日(水)正午まで参加希望者を受付中です。

来年で90年を迎える日吉キャンパスの歴史を背負った第一校舎。秘められた百年後の未来像はどんなものだったのか、再び思い返す好機となりそうです。

【関連記事】

日吉最古の校舎が伝える「キャンパスの戦争」、慶應塾高・阿久澤さんが歴史本(2023年6月5日、登壇者・阿久澤武史さんの著書と第一校舎について)

【参考リンク】

福澤諭吉記念慶應義塾史展示館「2023年度秋季企画展~曾禰中條建築事務所と慶應義塾Ⅱ 昭和編」(2023年10月21日の記念講演会や11月4日の日吉キャンパス建築特別見学会の案内など)

【From Keio Museums】曾禰中條建築事務所による最初の慶應義塾関係設計図面(三田評論ONLINE)

宮本百合子「父の手帳」(1937年)(青空文庫、娘で作家の宮本百合子の目から見た父・中條精一郎が描かれ、後半には事務所開設時の様子や曾禰達蔵に関する記述も)


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