日吉、港北区、横浜市、そして神奈川県代表としての長い「夏の大会」の日々が終了。高校野球界、そして“地域”に、忘れられない歴史のページを刻みます。
きょう(2023年)8月23日(水)から阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で行われた「第105回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園大会)」(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)決勝戦で慶應義塾高校(慶應塾高)(日吉4)は、「慶應義塾普通部」時代の1916 (大正5)年以来、107年ぶりとなる優勝を飾りました。
決勝戦では2年連続で全国制覇を目指す強豪・仙台育英高校(宮城県仙台市)に8対2で快勝し、「春のセンバツ(選抜)甲子園大会」で同高校に初戦で敗戦して以降、その悔しさをバネに「全国制覇」を目指してきた慶應塾高が終始リードを繰り広げ、大躍進の象徴ともいえる勝利で日本一をつかみ取りました。
まだ甲子園球場がなかった時代、「豊中グラウンド」(大阪府豊中市)での「慶應普通部」時代以来となる、歴史的な優勝となります。
“塾高”らしさで「野球」の楽しさ伝える
慶應義塾高校(塾高)野球部は、5年ぶり19回目(神奈川県代表としては6度目)となる「夏の甲子園」への出場を決める「神奈川県大会」では、愛知県に次ぐ全国で2番目に多い参加校数(167校、連合チームは1校としてカウント)のなか、7戦を勝利。
準決勝の東海大相模との対戦をはじめ7試合中5試合をコールドで決着するなど、「春の選抜」に続けての出場校である実力を発揮しての勝利を重ねてきました。
公立高校や私学の実力校といわれる高校との対戦時も、小宅雅己君や鈴木佳門(かもん)君、松井喜一君の3投手を中心とした継投でつなぐなど、丁寧に試合を運ぶシーンが目立ちました。
あと3アウトで敗戦、というところまで追い詰められた横浜高校との県大会決勝戦(6対5で逆転勝ち)や、「夏の甲子園」3回戦での広陵高校(広島県)との延長タイブレーク戦での勝利(6対3)など、苦しい試合展開でも決して諦めることはなく、理念として掲げる「エンジョイ・ベースボール」を体現するかのような笑顔あふれるプレーに、多く人々が魅了される勝利を重ねてきました。
日本の高校球児の中で最長となる最後の決勝戦までの日々を悔いなく戦い抜いた塾高ナインや監督・部員たち、チームを支える一人ひとりの“日々の地道な活動”が結実することになった今回の雄姿は、かけがえのない“歴史的な宝物”として、これからの塾高、そして日吉近郊の地域スポーツの歴史にも、その名を刻むこととなりそうです。
学校長が「地域からの声援」に感謝
今回の甲子園出場に至るまでの歩みや、「春のセンバツ甲子園」出場時にも「慶應義塾の卒業生のネットワーク、高校の同窓会の強力なサポート」についての感謝の想いを語っていた、同校の阿久澤(あくざわ)武史校長。
「社中」(しゃちゅう=同じ目的を持つ仲間)と呼ばれる各学校や組織のつながりによる後押しもあり、球場中に響きわたる「大声援」の中、勝ち越しヒットや好守、好投につながったシーンも多く見られていました。
また、「本校野球部の甲子園大会出場に際し、地元・横浜市や港北区の皆様、日吉商店街や東急日吉駅の皆様から力強い応援をいただきました」と阿久澤校長は“地域からの応援”についても感謝の想いを語ります。

毎試合ごとにチケットが売り切れるなど、「社中」と呼ばれる慶應義塾大学から幼稚舎までの在校生や卒業生のネットワークも注目を集めた
「県代表として堂々とプレーし、“笑顔”で野球を楽しみ、見事優勝に輝きました。これもひとえに日頃からあたたかく見守っていただいているおかげだと感謝しています」と、塾高生たちが日々過ごす日吉近郊の街、そこで野球部を応援し激励する人々の“存在”があってこその甲子園出場、そしてそこでの活躍であったと振り返っていました。
「横断幕」や号外配布、駅の掲示も
先月7月7日に開幕した「神奈川県大会」から数えると通算12試合、約1カ月半近くに及ぶ熱き戦いの日々を走り抜けた選手たちの活躍に、地元・日吉周辺や、慶應関係者、塾高の卒業生などから多くの称賛と歓喜の声が上がっています。
きょうの決勝戦が近づくにつれ、日吉駅周辺を取材するメディアも激増し、商店街など駅周辺では、カメラ抱えた報道陣が行き来し、テレビなどのニュースで取り上げる機会も目立ちました。
また、日吉駅付近や商店街の店舗では、関係者や通りかかる人々が集まってテレビやネット観戦をする人も現れるなど、駅前にいつもと異なる光景が見られました。
地元の自治会・町内会である日吉地区連合町内会(日吉本町西町会)の青博孝会長は、「日吉商店街の皆様と合同で、新しい“優勝”を祝う横断幕を設置しました」と塾高野球部のこれまでの活躍に地域として感謝し、その労を労(ねぎら)います。
日吉駅周辺では大手新聞社の販売店が「号外」を発行し行き交う人々に配布し、短時間で配り終えるなど注目を集めました。
一方、東急日吉駅構内でも、優勝を祝う横断幕やポスターを掲出。行先案内の電光掲示板で「感動をありがとう」といったメッセージを表示するなど、慶應塾高の選手・監督たちへの感謝の想いを綴っていました。
日吉駅構内の日吉東急アベニュー内の書店「丸善」では、甲子園に関する雑誌などの特別コーナ設置を8月30日頃までに予定しているとのこと。
しばらくの期間、日吉駅周辺で地域ぐるみの盛り上がりが続きそうです。
2023年夏「慶應塾高」の戦績
(※)リンク先は「バーチャル高校野球」(朝日新聞社など運営)の試合結果ページ、一部はダイジェスト映像や見逃し配信あり
「甲子園大会」での戦績
- 8月23日(水)決勝:慶應義塾高校 8-2 仙台育英(宮城)
- 8月21日(月)準決勝:慶應義塾高校 2-0 土浦日大(茨城)
- 8月19日(土)準々決勝:慶應義塾高校 7-2 沖縄尚学(沖縄)
- 8月16日(水)3回戦:慶應義塾高校 6-3 広陵(広島)(延長10回タイブレーク)
- 8月11日(金・祝)2回戦:慶應義塾高校 9-4 北陸(福井)
「神奈川大会」での戦績
- 7月26日(水)決勝:慶應義塾高校 6-5 横浜
- 7月24日(月)準決勝:慶應義塾高校 12-1 東海大相模(6回コールド)
- 7月20日(木)準々決勝:慶應義塾高校 7-2 横浜創学館
- 7月18日(火)5回戦:慶應義塾高校 8-1 市ケ尾(7回コールド)
- 7月16日(日)4回戦:慶應義塾高校 10-0 相模原(8回コールド)
- 7月13日(木)3回戦:慶應義塾高校 7-0 津久井浜(7回コールド)
- 7月10日(月)2回戦:慶應義塾高校 12-2 白山(5回コールド)
【関連記事】
・<夏の甲子園>打線爆発で初戦を飾った慶應塾高、満員のスタンドから大声援(2023年8月11日、甲子園初戦=2回戦のレポート)
・日吉から「全国制覇」目指す塾高野球部、甲子園出場を“地域から”盛り上げる(2023年8月2日、地域の盛り上がり)
・<夏の高校野球>慶應塾高が劇的な逆転勝利、5年ぶり“悲願”の甲子園出場(2023年7月27日、神奈川県大会決勝戦のレポート)
【参考リンク】
・バーチャル高校野球における「慶応」の紹介・過去の戦績(2006年以降の全試合結果)
・慶應義塾高等学校野球部サイト(活動情報など)