9回表の劇的な逆転3ランで「夏の甲子園」出場の悲願を達成し、“日吉から日本一”の目標に挑みます。
今月(2023年)7月8日から始まった神奈川県大会に出場していた慶應義塾高校(慶應塾高)(日吉4)は、きのう7月26日に横浜スタジアムで行われた決勝戦で横浜高校に6対5で逆転勝ちをおさめ、5年ぶり19回目(神奈川県代表としては6度目)となる「夏の甲子園大会」への出場を決めました。
猛暑のなか10時から始まった試合は、3回表に慶應塾高がエラーから出塁した走者を丸田湊斗君が左中間へ放ったタイムリー三塁打で先制。続く八木陽君がセンターに放った犠牲フライで2点目を挙げ、序盤に2点をリードして試合を進めます。
慶應塾高の先発ピッチャーは小宅(おやけ)雅己君。一昨日(7月24日)の東海大相模高校戦に続いての登板となりました。
4回までは無失点に抑えたものの、5回裏に横浜高校の萩宗久君がソロ本塁打を放ち、2対1と1点差に迫られたところで、6回表に慶應塾高は渡辺憩君が犠牲フライを放ち、3対1と再びリードを広げます。
しかし6回裏、チャンスで打席に立った相手のエース・杉山遥希君のセンター越え2塁打などで3点を失い、3対4と逆転を許します。さらに7回裏には横浜高校の2年生9番打者・峯大翔君にライトスタンド上段に本塁打を叩き込まれ、3対5に差が広がるなか、慶應塾高は投手を2年生の鈴木佳門君に交代。
以降の失点は防いだものの、反撃したい8回表には調子を上げる相手のエース・杉山君に三者三振を喫するなど、厳しい状況に陥ります。
2点差を追いつかなければ敗れてしまう9回表、慶應塾高は代打の安達英輝君がレフト前に放ったヒットで出た走者を、相手のエラーなどで1アウト2・3塁のチャンスにつなげます。ここで3番打者・渡邉千之亮君が粘ってフルカウントから振り抜いた打球はレフトスタンドに吸い込まれ、劇的な逆転3ラン本塁打となり6対5と土壇場で再びリード。
1点リードを奪って迎えた9回裏に登板した3年生投手の松井喜一君は、四球を出したものの横浜高校打線にヒットを許さず、慶應塾高が最後の最後で逆転勝利をおさめ、神奈川県大会で優勝を勝ち取りました。
単独優勝は61年ぶり、横浜高校の壁を乗り越える
昨年(2022年)秋の県大会の決勝戦では、横浜高校に3対6で敗れていた慶應塾高。
準優勝校として秋季関東大会に出場し、そこでベスト4入りしたことから、今年3月の春の選抜(センバツ)大会で甲子園に5年ぶりに出場しました。
春の甲子園では1回戦で前回優勝の仙台育英高校と対戦し、延長戦タイブレークに持ち込む激闘の末に惜敗となりましたが、続く5月の春の神奈川県大会でも優勝を果たし、今夏の大会で「第1シード」を獲得。
7月10日の初戦から危なげなく勝ち抜き、準決勝では難敵の東海大相模を6回コールドで破るほど力を見せつけ、甲子園への出場をかけた横浜高校との決勝戦では苦しみながらも勝ちをもぎ取りました。
5年前の夏に慶應塾高が甲子園(2018年)へ出場した際は第100回の記念大会。県内2地区に分かれた「北神奈川大会」の代表として、「南神奈川大会」を制した横浜高校とともに出場しています。
純粋な「神奈川大会」を制しての優勝は61年前の1962(昭和37)年以来なく、2年連続で大会を制してきた横浜高校という大きな「壁」を乗り越えられるかに注目が集まっていたなかで快挙を遂げることになりました。
日吉駅で「号外」、センバツの悔しさ晴らす夏出場
7月24日に行われた準決勝で東海大相模を相手に12対1で6回コールド勝ちをおさめるなど今大会で見事な戦いを見せてきた慶應塾高ですが、「甲子園で目標とする“日本一”を達成するには、13回勝ち続けなければなりません」と、試合後のインタビューで森林貴彦監督はまだ現状での戦いが「道半ば」であることを強調します。
「前回(春のセンバツ大会)の初戦敗退の悔しさを晴らすためには、甲子園に出場するしかないと思っていました」と森林監督。まずは“日本一”へのチャレンジへの舞台に上ることができることの喜びをかみしめ、前回の悔しさをバネに戦いに挑む決意を熱く語っていました。
それでも、試合直後のインタビューでは涙を浮かべながら勝利の感動を述べるなど、その喜びをチーム運営に尽力したという主将の大村昊澄(そらと)君を始めとした一人ひとりの選手、そしてスタンドとも分かち合う姿が見られていました。
決勝戦の入場者数は2万7000人(大会公式記録)と、猛暑の平日昼間とは思えないほどの観戦者が詰めかけた横浜スタジアム。
応援人数では横浜高校よりやや少ないと思われる状況でしたが、「スタンドからの大歓声に(夏の甲子園出場への)力をもらいました」と森林監督をはじめ多くの選手からは、塾高生や保護者、学校関係者などからの声援が甲子園出場の後押しになったといった感謝の言葉が多く聞かれました。
前回のセンバツ甲子園出場時に掲示された日吉の街での横断幕や、日吉駅での(東急電鉄駅員による)電光掲示板での応援のメッセージについても「嬉しかった」と語る選手もいるなど、“日吉の街からの激励”も届いた形での夏の甲子園出場。
試合後の15時頃には早くも日吉駅前で大手新聞社による号外が配られるなど、甲子園大会での戦いに向け、慶應義塾と日吉の街の盛り上がりに期待したいところです。
なお、第105回の記念大会となる「夏の甲子園」大会は、慶應義塾など全国から49校が参加し、組み合わせ抽選会を8月3日(木)に行ったのち、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で6日(日)から17日間にわたって開かれる予定です。
【慶應塾高「優勝」までの戦績】
- 7月10日(月)2回戦:慶應義塾高校 12-2 白山(5回コールド)
- 7月13日(木)3回戦:慶應義塾高校 7-0 津久井浜(7回コールド)
- 7月16日(日)4回戦:慶應義塾高校 10-0 相模原(8回コールド)
- 7月18日(火)5回戦:慶應義塾高校 8-1 市ケ尾(7回コールド)
- 7月20日(木)準々決勝:慶應義塾高校 7-2 横浜創学館
- 7月24日(月)準決勝:慶應義塾高校 12-1 東海大相模(6回コールド)
- 7月26日(水)決勝:慶應義塾高校 6-5 横浜
(※)リンク先は「バーチャル高校野球」(朝日新聞社など運営)の試合結果ページ
【関連記事】
・<夏の甲子園>慶應塾高の初戦は8月11日(金・祝)、全試合ネットで生中継も(2023年8月4日)※リンク追記
・新横浜駅で「夏の甲子園」に向け壮行会、“慶應塾高”らしさで夢の舞台へ(新横浜新聞~しんよこ新聞、2023年8月3日)※リンク追記
・日吉から「全国制覇」目指す塾高野球部、甲子園出場を“地域から”盛り上げる(2023年8月2日)※リンク追記
・<慶應塾高>センバツ甲子園は延長タイブレーク、敗戦なるも“大歓声”が後押し(2023年3月21日、今年の「センバツ甲子園」出場時のレポート記事)
・【過去記事】高知商の強力打線を止められず、慶應塾高の10年ぶり「夏の甲子園」は2回戦で終える(2018年8月12日、前回「夏の甲子園」出場時のレポート記事)
【参考リンク】
・第105回「全国高等学校野球選手権記念大会(夏の甲子園大会)」の案内ページ(2023年8月3日に抽選会、6日に開幕、日本高等学校野球連盟)
・神奈川大会決勝「慶応vs横浜」のスコアとダイジェスト映像(バーチャル高校野球)
・慶應義塾高等学校野球部サイト(活動情報など)