大綱橋近くに「綱島温泉の石碑」が復活、樽町の町内会が奔走し、綱島の有志も協力 | 横浜日吉新聞

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綱島温泉の石碑が大綱橋たもとの樽町側「大綱橋交差点」に“復活”しました。昨年(2018年)12月に設置場所だった敷地の建物解体により、行き場を失っていた「ラヂウム霊泉(温泉)湧出記念碑」が今月(2019年2月)15日、大綱橋至近の樽町2丁目にある国土交通省や横浜市が管理する土地に移設を終えました

石碑の移設を祝って樽町と綱島から温泉関係者が訪れ、港北区の林賢是副区長(後列右3人目)も駆け付けた(2月15日)

この記念碑は、今から85年以上前の1933(昭和8)年3月に綱島温泉の源泉地である現在の樽町2丁目付近に民間の手で建てられたもので、綱島街道の拡張などによる移設を経て、三度目の移転となります。

15日に行われた設置工事は、樽町4丁目にある有限会社中山造園資材が担当し、新たに台座を設置するなど半日ほどかけて実施。

解体現場から石碑を救出して預かっていた地元町内会「樽町第二親和会」の会長で神奈川県議をつとめる嶋村公(ただし)さんをはじめ、綱島側からは、85年前に石碑設置に関わった飯田助太夫氏のひ孫にあたる飯田助知(すけとも)さんや、綱島商店街連合会会長の中森伸明さん、かつて綱島温泉街で旅館を営んでいた佐藤誠三さん(綱島連合自治会会長)温泉関係者も駆け付け、工事を見守りました。

移設工事は地元・樽町の中山造園資材が担当し、多くの人がその様子を見守った

移設された場所は「ファミリーマート樽町二丁目店」の隣にあり、鶴見川の河岸を通る道路「川崎町田線」の拡張用として確保されている道路用地で、国土交通省や横浜市が管理。長い間、木々が生い茂った状態で置かれていました。

昨年夏ごろ、市が地元町内会に花を植えるなどの場所として活用を呼び掛けたことを機に、嶋村さんら樽町第二親和会が清掃などの活動を始めていた経緯もあり、石碑の移設場所として真っ先に思い立ったといいます。

道路用地に石碑を移設するにあたっては、樽町第二親和会が土地の使用許可を得るために奔走し、港北区も石碑の重要性を道路管理者に伝えるなど後押し。移設工事にかかった費用は、同町内会が所属する樽町連合町内会をはじめ、同じ綱島温泉街として縁の深い綱島商店街などの有志も負担したとのことです。

石碑の前で撮影に応じる飯田さん、移設工事には神奈川新聞や東京新聞、タウンニュースといった紙メディアをはじめ、地元ケーブルテレビ局のイッツコムやYOUテレビ、港北区の映像作品を多数制作している「港北ふるさとテレビ局」などが訪れ、当日の様子を取材していた

新たな石碑設置場所の至近には、温泉旅館「長楽」として使われていた建物が今も残っています。移設工事に立ち会った飯田さんは「私の父(飯田助丸氏=元県議)がもっとも好きで訪れていたのが長楽旅館で、その近くへ石碑が移ってきたのは縁を感じます。石碑を守っていただいたすべての方々に感謝しています」と感慨深そうに話しました。

また、石碑の救出や移設場所の確保に奔走した嶋村さんも、先祖が老舗の温泉旅館「琵琶圃(びわはた)」を経営していたという歴史があり、「今回の石碑をきっかけに、色々な方とつながることができた」と喜びます。

綱島温泉を研究している横浜開港資料館(中区)の調査研究員・吉田律人さんによると、こうした私設の石碑は、移設先を見つけることができずに苦労しているケースが多いといい、「わずか2カ月半で移設できたのは奇跡的」と驚きます。

石碑は記念碑などに使われることが多い「仙台石(稲井石)」が使われ、文字の彫りが深かったため、85年以上経った現在でも彫られた文字を読むことができる

「今回、石碑の移設にともなって、これまで土に隠れて見えていなかった文字も発見できた。樽町のみなさんにぜひ報告したい」(吉田さん)と来月(3月)9日に樽町社会福祉協議会が主催する講演会に向け、意欲を見せていました。

石碑の移設後は、付近を通りかかった人が立ち止まって「ここに移ってきたのか、よかった」スマートフォンなどで写真を撮るシーンもたびたび見られました。

綱島側からは大綱橋を渡ってすぐ、横断歩道の前にあるという好立地だけに、これまでよりも多くの人に綱島温泉の歴史が認識されることになりそうです。

【関連記事】

85年の歴史紡ぐ「綱島温泉の石碑」が消えた、民有地史跡の保存へ尽力を(2018年12月10日、移設の経緯)

綱島温泉の名残を求め歴史散策、開港資料館のツアーに定員の4倍が応募(2018年4月9日、温泉旅館「長楽」跡の写真も)

【参考リンク】

ラヂウム霊泉(温泉)湧出記念碑が移設された場所(グーグルマップ)

3月9日(土)樽町社会福祉協議会主催「福祉講座・綱島温泉の半世紀」の案内ページ(思いあいのまち樽町)


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