新横浜駅を出発、新綱島駅に向かう東急新横浜線車内と駅構内アナウンスに「緊迫感」があふれます。
東急電鉄株式会社と横浜市港北消防署、港北消防団は、きのう(2023年)3月3日(金)午後、18日(土)に開業予定の「東急新横浜線」の新横浜駅を出発した電車内での「液体が撒かれた」という想定でのテロ対応訓練を、新綱島駅(綱島東1)構内で初めて実施。
駅係員や消防署員、地元・綱島をエリアとする消防団員や救急隊、乗客に扮(ふん)した東急電鉄の社員やなど約140人が参加し、事故や事件、テロや災害など「有事」が発生した際の対応方法を“リアル”に共有しました。
新横浜駅を14時に出発した電車内で、まずは有毒な液体が撒かれたという想定での「車内確認を行う」というアナウンスが新綱島駅の構内に流れます。
電車が到着すると、先頭の1号車にはペットボトルから液体が撒かれ、その付近に倒れた傷病者の姿が。
「大丈夫ですか」と叫びながら駅係員が電車に近づき、ホームから電車内に不審物を発見と確認。
“テロ対策規定”に基づき、他の電車が新綱島駅に侵入しないよう緊急ボタンを押すとともに、119番通報を実施します。
「緊急事態発生、この電車からは離れてください」とアナウンスし、乗客を「歩ける方は地上階に避難してください」とホームから誘導。
到着した消防隊員が「本部」を設営した後、綱島消防出張所の特別高度救助部隊が撒かれた液体の確認や負傷者の救出、除染処理を行う様子を、約70人の“乗客役”の社員たちが最後まで見学していました。
綱島をエリアとする消防団員も仮救護所の設営や負傷者の搬出を行い、初となる鉄道駅での訓練に真剣なまなざしで臨んでいました。
予測不能な「事件・事故・テロ・災害」から“乗客を守る”には
今回の訓練について、東急電鉄安全戦略推進委員会の中弘昭課長は、「消防の皆さんの迅速かつ一糸乱れぬ動きに感激しました」と消防署員や消防団員を激励。
いよいよ3月18日に新横浜線が開業することに触れ、「テロの標的といったことはいつ起こるかわかりません。京王と小田急でつい最近粗暴行為がありましたが、一つの事例では渋谷から該当電車に乗ったということで、(渋谷駅を発着する東急電車が)いつ狙われてもおかしくない状況」と指摘します。
そして「まずは通報、その後避難誘導、また救助という分かりやすい流れを確認してもらえれば。普段の“机上訓練”ではなかなか理解できないところも多々あると思うので、今回の訓練を有事の際にどうやって動けばいいのかというところを各管内で参考にしてもらえれば」と、他エリアから駆け付けた乗客役の社員たちにも呼び掛けます。
さらに、「台風や浸水は予想ができるが地震やテロ行為はいざ、すぐに対応しなければなりません。今後もこういった訓練をしっかり繰り返すことにより、“いざ”という際に備えていきたい」と、“繰り返し”訓練を実施できればとの思いを語っていました。
消防署長は「初動」や「通報」の大切さを呼び掛け
訓練の最後に講評を行った吉田崇港北消防署長は、「新横浜線開業前のお忙しい中、東急の社員の皆様や消防団員の皆様にも多く参加いただき、大変リアルないい訓練ができました」と、まずは参加した人々への感謝の思いを表します。
そして、「各方面からの期待の大きい新横浜線の開業という、大きな期待に応えるためには安定した運行はもちろんだが、利用される(乗客の)皆さんが事故や事件、災害にあった時に安全を確保することが重要だと思う」まずは人命救助や“安全確保”が大切だと語ります。
そのためにも、「繰り返し訓練をおこなうこと、そして皆さんの“初動”が大切です。通報いただいた後、消防、警察、医療機関が駆け付けることになるが、まずはしっかり“通報”してもらえれば」と、日頃からの連携、そして迅速に連絡をとりあえる関係性や体制づくりについてもその大切さや必要性を呼び掛けていました。
“地下空間”らしい定期的な「訓練」を
東急新横浜線では、日吉駅から2駅、新綱島駅からわずか1駅となる新横浜駅から「東海道新幹線」に乗り換えできることが大きなメリットとなる一方、今年5月には「G7広島サミット」の開催も予定されていることか、“テロ訓練”の必要性があるといわれています。
特に新横浜線は地下空間を走行することもあり、中・長期的には、災害時も含めた“いざ”という事態に備えるためにも、幅広く“人命救助”という観点での定期的な訓練の実施がより大切になるといえそうです。
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【参考リンク】
・相鉄・東急 新横浜線 2023年3月開業予定(東急電鉄株式会社)