<鉄道・運輸機構に聞く>箕輪町と新綱島駅を結ぶ「綱島トンネル」の今 | 横浜日吉新聞

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箕輪町と新綱島駅(仮称)を結ぶ「相鉄・東急直通線(東急新横浜線)」の「綱島トンネル」で工事が進展しています。一方、先月(2020年)6月に新横浜トンネル工事の直上となる環状2号線上で陥没が相次いだ後、綱島トンネルでも今月7月8日(水)に真上の道路面が約8センチ盛り上がる現象が発生。現在の状況はどうなっているのか。工事主体である鉄道・運輸機構(独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」)東京支社(港区)に話を聞きました。

1.1キロの円形トンネル2本を掘削

綱島トンネルの位置図。東横線の高架橋に沿って左右に通っている市道の地下に単線トンネルをそれぞれ掘る。(鉄道・運輸機構の公式サイトに掲載されている平面図に建物などの名称(黒色の文字)を加えた)※クリックで拡大

綱島トンネルは、東急新横浜線の起点となる日吉駅側から見て、箕輪町2・3丁目と新綱島駅までの1100メートル(1.1km)を結ぶ円形トンネル

地上部から掘って後に上部を埋める形の箱型トンネルや、高架橋二層区間といった日吉駅側で行われている「日吉駅付近工事」と接続し、日吉駅と新綱島駅を結ぶ役割を担います。

工事はトンネル掘削(くっさく)の拠点となっている新綱島駅から行われ、約7メートル幅の円形トンネル(単線)2本を並べて設置。高田寄り(山側)のトンネルが日吉方面行き、綱島街道寄り(海側)のトンネルは新綱島駅行の線路として、それぞれ使われます。

新綱島駅付近の地下でシールド機を組み立てる様子(鉄道・運輸機構提供)

新綱島駅から掘り進むルートは、旧東急ストア綱島店(現ドラッグストア「クリエイト」)前で綱島街道と地下で交差し、洋服店「AOKI(アオキ)横浜綱島東店」の裏手付近で東急東横線の高架橋に合流

その先は、綱島東2丁目や綱島西6丁目、綱島東4丁目、箕輪町2丁目と3丁目など各町で、高架下の左右に通っている5.5メートル幅ほどの市道(箕輪第213号線・箕輪第259号などの側道)の真下を掘り進める形で、日吉駅方面へ向かいます。

1日に13m、1本はドンキ付近まで到達

箕輪町3丁目付近で「綱島トンネル」を新綱島駅側から見た際の掘削断面イメージ。東横線の左右にある市道の地下に上下2本の円形トンネルをそれぞれ別に掘る(横浜市「都市高速鉄道第7号相鉄・東急直通線 環境のあらまし」より)

日吉方面行のトンネルは、昨年(2019年)11月に掘削をスタート。工事を担当する鉄道・運輸機構東京支社工事第三課の中西孝治課長と大野友和課長補佐によると、24時間体制の掘削工事で1日あたり約13メートルを掘り進めており、現時点で「ドンキホーテ日吉店」(箕輪町2)の裏手付近の位置まで到達しているといいます。

この先、日吉方面行のトンネルは箕輪町2丁目にある「すし銚子丸日吉店」の裏手付近に設けられた「仮設立坑」まで掘削し、ここで別に工事が行われている箱型トンネルと接続し、日吉方面行のトンネル工事は終了。

次は仮設立坑内で掘削機(シールド機)を反転させ、再び新綱島駅へ向かって新綱島方面行のトンネルを掘ることになり、2本の掘削工事を終えるのは来年(2021年)3月を予定しているとのことです。

トンネル掘削の真上で道路が盛り上がる

箕輪町3丁目のトンネル掘削現場の真上で7月8日(水)深夜に起きた道路の盛り上がり(写真は7月11日12時ごろ)

地下で順調に進んできたという綱島トンネルの工事ですが、地上に見える形で異変が起きたのは今月7月8日(水)の深夜のこと。

掘削現場の真上に位置する箕輪町3丁目の市道(箕輪213号線=高架橋の高田寄り)上で、路面が約80ミリにわたって盛り上がる現象が起き、路面を監視していたトンネル工事の関係者が発見しました。

鉄道・運輸機構によると、今回の原因は「裏込め注入材」を流し込む際に、圧力が上がったことにあるといいます。

注入材が地質の弱い部分を通り道路下に

路面の隆起を起こす原因となった裏込め注入材とは何なのか。これを使うのは、次のような理由があります。

新綱島駅近くの新横浜トンネル工事拠点に運び込まれる「セグメント」、これを組み立ててトンネルの壁面とする

シールド機が掘削した地下の壁と、その直後に組み立てていくトンネルの壁(「セグメント」と呼ばれるコンクリートの壁)の間には小さな隙間ができるため、裏込め注入材と呼ばれるモルタルを圧力をかけて流し込み、隙間を埋めることで地表面(道路上)の変位を抑え、また地下水などが入らないようにする作業が行われます。

裏込め注入材を入れる際、圧力が上がって注入材が地質の弱いところを通り、地表面にある道路のアスファルトの下にたまって押し出される形で、盛り上がってしまったのだといいます。

路面隆起が起きた場所(写真左下)は地質が変化していたという(写真奥が日吉駅方面、7月11日)

隆起が起こった場所の切羽(掘削面)は、「柔らかい粘土から、硬いものが混じったところに入る境目」(同機構)となっており、地質が変化していたことも今回の現象につながりました。

隆起した地点の掘削は7月8日(水)に終えており、隆起の原因は解明されたものの、再発防止策を練るため同日時点で工事を停止。工事再開までの期間は長くはならないとのことです。

また、盛り上がった路面については、7月16日(木)までに元へ戻す工事が行われました。

どのくらい深い地下を掘っているのか

6月に掘削現場の真上で陥没が相次いだ「新横浜トンネル」(新綱島駅~新横浜駅=いずれも仮称=間、3304メートル)では、軟弱な地層も目立つ環状2号線下の浅い位置に掘らざるを得ないルートとなっており、そうした地点で陥没が起きていました。

日吉駅(右側)から新横浜駅(仮称)付近までの断面図。「新横浜トンネル」の真上での道路陥没は丸数字「2」の付近、トンネル位置が浅い付近で起きている(鉄道・運輸機構の「神奈川東部方面線~計画路線マップ」から図表の位置を移動させて使用)

綱島トンネルで発生した道路隆起原因は解明されているとはいえ、掘削場所の深さや地質がどうなっているのかは気になるところ。

鉄道・運輸機構によると、綱島トンネルは地下に置かれている新綱島駅から地上にある日吉駅方面へ向かって登り勾配で掘られており、もっとも深くなるのが新綱島駅付近で約30メートル(土被(どかぶ)り=トンネルの上部から地表面までの距離)。

もっとも浅いのは、シールド機が折り返す箕輪町2丁目の「すし銚子丸日吉店」付近で、約10メートル(土被り)だといいます。

硬軟2つの「地層」をまたいで掘削

2011(平成23)年6月に綱島地区センターや日吉台中学校など沿線5カ所で開かれた横浜市による説明会の資料には、日吉駅から羽沢駅(羽沢横浜国大駅)までの地質図が掲載され、「河川によって開析された谷底低地では、軟弱な沖積層粘性土(※図表中の水色の部分)が分布しています」と説明されていた(同説明会の横浜市資料より)※クリックで拡大

綱島トンネルを掘る場所は、「2つの地層をまたいでいる」(同)といい、新綱島駅側はおおむね硬質な粘土で、地層の硬さや軟かさを示す「N値(エヌち)」と呼ばれる値(あたい)でも「50」以上を示す強固さで、トンネル全長(1100メートル)のうち、これが500メートルほど続いているとのこと。

一方、箕輪町寄りを中心とした600メートルは、柔らかな粘土の層となっており、「これらの場所にも堅い所はあるが、ほとんどが粘土で、少しだけ砂の層もあったりと、色んなものが複雑に絡みあっている」(同)との見方で、N値も「0」から「5」程度にとどまるといいます。

今回の道路隆起も、地層の複雑な地点で起きたものでした。ただ、日吉方面行のトンネルを掘ったことで、地層を知ることにもつながったといい、これから掘ることになる“折り返し”の新綱島行トンネルの掘削は「順調に進められるのではないか」(同)と話します。

新横浜と異なる方式で掘削する背景

トンネルの掘削工事は、新横浜トンネル綱島トンネル異なる方式が選ばれています。

新横浜トンネルでは、泥水(でいすい)に圧力(泥水圧)を加えて掘削面(切羽)を抑えつつ、泥水を循環して掘削土を輸送しながら掘り進めるという「密閉型泥水式シールド工法」で実施。

一方、綱島トンネルで採用されたのは、「泥土圧(でいどあつ)シールド工法」という方式でした。

綱島トンネルを掘進するシールド機(鉄道・運輸機構提供)

工法の名も似ており、土を削るカッターの付いたシールド機を使って掘るという点では同じですが、その中身は若干異なります

泥土圧式シールドは、カッターが削った土砂に作泥材をまぜて攪拌(かくはん)することで流動性のある「泥土(でいど)」にし、地盤(地山)が崩れないように掘り進める工法のこと。

カッターの後部にある仕切り壁(隔壁=かくへき)内に泥土を貯め、そこへ圧力(泥土圧)をかけることで、土を削る際にかかる「土圧(どあつ=壁を押してくる土の圧力)」や地下水の水圧に対抗することができるといいます。

この工法は、坑外設備がコンパクトで済む点も特徴で、掘削の拠点となる新綱島駅の日吉寄りは工事スペースが制限されたため、適していたとのことです。

日吉駅付近での各工事も順調に進む

2本のうち、1本のトンネルがまもなく掘り終える位置にまで到達している綱島トンネル

「日吉駅付近工事」では、日吉駅から「擁壁(ようへき)区間」「高架2層区間」「箱型トンネル区間」を経て、図面上の「仮設立坑」と書かれた付近で綱島トンネルと合流する(日吉駅付近工事のパンフレットより)

一方、日吉駅と箕輪町までの区間は、東横線を走らせながら工事を行わなければならないため、かなりの難工事だと言われています。

鉄道・運輸機構によると、日吉駅付近の高架橋二層区間や箱型トンネルなど一連の「日吉駅付近工事」についても、順調に進んでいるといいます。

「東急・相鉄直通線」(東急新横浜線/新横浜から先は相鉄新横浜線)開業予定時期で、最長の場合とされる2023年3月までは、残り2年7カ月ほど。

日吉駅に近い「高架二層区間」では東横線の高架下に新たな線路の姿も(7月16日、日吉第一架道橋付近)

いずれも順調だという綱島トンネルの掘削と日吉駅付近工事の双方に加え、新綱島駅から先、現時点で工事を止めている新横浜トンネルと、3つのトンネルではもっとも掘削が進む「羽沢トンネル」(新横浜駅~羽沢横浜国大駅、約3500メートル)という3つの区間をあわせ、日吉駅から羽沢横浜国大駅までの全線が完成することになります。

7月25日追記:鉄道・運輸機構によると、羽沢トンネルについては、今年2月に新横浜駅(仮称)まで到達しており、掘削を終えたとのことです】

計画通りに「2022年度下期」(2022年10月~2023年3月)に開業を迎えることができるのか。これから2年間が特に重要な時期となります。

【関連記事】

連続陥没は新横浜トンネルが原因、「環状2号」で再発防止へ地盤補強も(新横浜新聞~しんよこ新聞、2020年7月27日)

また大豆戸町で「環状2号線」が陥没、直下で新横浜トンネル掘削の車線(新横浜新聞~しんよこ新聞、2020年6月30日、二度目の陥没時の記事)

【参考リンク】

綱島トンネル工事についてのページ(鉄道・運輸機構)

日吉駅付近工事(日吉駅~箕輪町区間)についてのページ(鉄道・運輸機構)


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