学校内での感染防ぐには?高田中の「スーパー技能員」が生み出す"安心セット" | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞

臨時休校が3カ月間にも及んだ横浜市立中学校。先月(2020年)6月1日から分散登校や短時間授業期間を経て学校を再開、ようやく7月から、新型コロナウイルス感染症対策によるさまざまな制約を設けながらも、多くの学校で通常の時間割での授業や、新年度の部活動をスタートしています。

新型コロナウイルス感染症対策を徹底するため同校で特命を受けた「たか中(高田中)研究開発製造部」の皆さん。左から熊谷副校長、青田さん、平林さん、宮崎さん

新型コロナウイルス感染症対策を徹底するため同校で特命を受けた「たか中(高田中)研究開発製造部」の皆さん。左から熊谷副校長、青田さん、平林さん、宮崎さん

それでも尽きないのは「感染の不安」。生徒の気持ちに寄り添い、より安心・安全に学校で生徒たちが過ごすための斬新な取り組みが高田中学校(高田町、横田由美子校長)で行われています。

感染症対策を徹底するため、新年度の休校期間中に同校で特命を受けたのが「たか中(高田中学校)研究開発製造部」。前任校の日吉台中学校(日吉本町4)から今年4月に着任したばかりの熊谷博文副校長が「研究開発製造部長」となり、数々の“感染防止”プロジェクトが執り行われているといいます。

このプロジェクトの中心役となっているのが、横田校長が「横浜でも数少ないスーパー技能員」と評する、技術員(技能職員)の青田行幸(みゆき)さん

感染症対策のため考案された「机上セパレーター」とフェイスガードが入った「たか中(高田中)安心セット」

感染症対策のため考案された「机上セパレーター」とフェイスガードが入った「たか中(高田中)安心セット」

青田さんは、「横浜市が大好きで、この仕事に応募しました。“横浜が世界一の街なんじゃないか”と思っていたので、採用試験に合格した時は、一生分の運を使い果たしてしまったかのような気持ちでした」と、それまで従事していた歯科衛生士の仕事から、全く異なる分野へのキャリア・チェンジを行った当時の心境について満面の笑顔で振り返ります。

市内3校の小・中学校で技術員としてのキャリアを磨いた青田さんは、横浜市の研修でも指導員として活躍中とのこと。

横田校長は、「安心・安全な学校を作りたい、という思いを理解してくれて、次々と感染症防止グッズを開発・製作してくれるんです」と、青田さんとともに技術員として奮闘する平林杉江さん、会計面からのサポートを行う事務職員の宮崎優子さんとともに結成する「研究開発製造部」メンバーの活躍を称えます。

生徒を守る「机上セパレーター」は試作や改良を重ね誕生

5、6回の試作を重ね完成した折り畳み式の「机上セパレーター」。下のゴム部分はセパレーターが倒れるのを防ぐため、後日さらに考案し改良されたもの

5、6回の試作を重ね完成した折り畳み式の「机上セパレーター」。下のゴム部分はセパレーターが倒れるのを防ぐため、後日さらに考案し改良されたもの

「研究開発製造部」から誕生した発明品の第一号は、折り畳み式の「机上セパレーター」。生徒を飛沫(ひまつ)感染から守るため、一つひとつの机に置くスタイルでのパーテーション(仕切り)の必要性を感じていた青田さんは、「板目紙(いためがみ=厚紙)など、様々な素材を使用し製作を試みましたが、5、6回の試作を重ね、プラスチック段ボールを土台として作りました」と、しっかりと3つ折りのセパレーターを支えながらも、軽量感があるそのメリットを強調します。

3つ折りの中央、前を見るための透明部分には、「セパレート素材が全く手に入らないことから、2枚重ねのカードホルダーをカットして使用することを思いつきました」と、薄すぎず、しっかりと透明度を保つ材料を得られたことを喜びます。

生徒の保護者ら10数名が5月下旬に学校に集結し、これを全校生徒の人数(約320人)分作成、実際に6月に入り使用を開始したところ、エアコンや扇風機の風で、せっかくのセパレーターが倒れてしまうというケースが発生。

「机上セパレーター」に守られ、音楽の時間にたて笛を吹く生徒たち。「たか中安心セット」として校内を持ち歩くことも(高田中学校提供)

「机上セパレーター」に守られ、音楽の時間にたて笛を吹く生徒たち。「たか中安心セット」として校内を持ち歩くことも(高田中学校提供)

それでもめげない「研究開発製造部」のメンバー。青田さんが「セパレーターの下の部分に穴をあけて、ゴムで机をくくり、定着させる手法で乗り切ったんです」と、生徒たちが授業の教室移動などでセパレーターを使用しないタイミングを見計らい、段階を踏みながら取り付けることに成功したと笑顔で説明します。

「生徒の安心・安全のために、とにかく“心配”をしながら、特に困っていることについて、何でもアイデアを形にしてくれるんです」と、横田校長。

斬新なアイデアと工夫で、まさに「スーパー技能員」活躍する青田さんら、研究開発製造部」一人ひとりの存在感の大きさを絶賛し称えます。

「たか中安心セット」や「テレビガード」などの発案が続々と

「たか中安心セット」を持ち運ぶ外側のビニール袋には、机の脇の金具にしっかりとくくれるように、ビニールのふちを折り返す工夫も

「たか中安心セット」を持ち運ぶ外側のビニール袋には、机の脇の金具にしっかりとくくれるように、ビニールのふちを折り返す工夫も

新たに生み出された「机上セパレーター」は、青田さんがなるべく安価なものをと探し歩いたフェイスガードとともに「たか中(高田中学校)安心セット」として命名。

セットとして収納するビニールの手提げも作成に四苦八苦したといい、「机の脇の金具にしっかりとくくれるようにと、ビニールのふちを折り返すといった工夫も施(ほどこ)しました」と、最終的に、ビニール袋がしっかりと安心グッズを包むことで、教室を移動しても使いやすい“セット”として仕上げることに成功したと笑顔で語ります。

さらに、英語の授業を行う際、「どうしても発音する際の口のようすなどを、マスクなしで伝えたい」という教員の要望に応えようと、それまで各教室などに置かれていたテレビを保護する目的で設置されていた透明ボードを取り外すことを発案、「感染症対策が終了後にはすぐに元に戻せるように」と、最小限の工作を加えての透明ボード、卓上の大型「テレビガード」を11個製作します。

テレビを保護する目的で設置されていた透明ボードを取り外し製作した卓上の大型「テレビガード」。英語の授業でも重宝されているという。高田中学校のマスコット・高田チュウ太や、青田さん手作りの紙の置物飾り(右)と

テレビを保護する目的で設置されていた透明ボードを取り外し製作した卓上の大型「テレビガード」。英語の授業でも重宝されているという。高田中学校のマスコット・高田チュウ太や、青田さん手作りの紙の置物飾り(右)と

また、7月からの吹奏楽部などの部活動再開を念頭に、「楽器を演奏するには、距離を空けるばかりでなく、やはり仕切りも必要」(横田校長)という観点から、倒れにくい譜面台に、薄めのビニールシートを貼り付けたという「ブラバン安心シート」も7枚作成。

たか中(高田中学校)の“ドラえもん”のような存在になりたいのです」と青田さん。

教職員の感染対策にも役立ちたいという思いから、6月下旬には、5枚折り畳み式でのワイド版「机上セパレーターDX(デラックス)」も考案・製作し、木工室など少し大きめの教室空間を中心に利用していると、またも輝く“笑顔”で、青田さんはその製作秘話を披露します。

心根優しい「たか中」生徒たちへの“愛情”がベースに

5枚折り畳み式でのワイド版「机上セパレーターDX(デラックス)」も考案・製作した

5枚折り畳み式でのワイド版「机上セパレーターDX(デラックス)」も考案・製作した

これまでも、季節感じる紙の置物づくりにみられる細やかな感性を活かし学校美化に取り組むばかりでなく、台風で倒れそうになった桜の木を縛る、学校内の老朽化した壁面をペンキや壁紙貼りなどで蘇(よみがえ)らせるといったチャレンジに「男性並み」、またそれ以上とも評される腕力と行動力で臨んできた青田さん。

日々の行動力の源泉は「生徒たちへの愛情です」と、青田さんは凛(りん)とした表情で言い切ります。

「青田さんが(自身と同じ2019年4月に)着任して以来、地域との関係もより良くなったと感じています」と、横田校長は、細やかな心使いで、地域の人たちとの交流スペースとなっている花壇の花の水やりや、玄関のリフォームといった、“地域との結節点”についても技術員としての使命を果たそうとする青田さんの姿に、日々感謝しているとの想いを語ります。

玄関まわりもペンキで“美しく”塗り上げた。学校の環境整備やメンテナンスに力を入れていることで、地域との関係もより良好になっているという。子どもたちには「学校(高田中)を大好きになってもらいたい」と語る青田さん

玄関まわりもペンキで“美しく”塗り上げた。学校の環境整備やメンテナンスに力を入れていることで、地域との関係もより良好になっているという。子どもたちには「学校(高田中)を大好きになってもらいたい」と語る青田さん

新型コロナ対策で、物置と化していたスペースを「第2職員室」としてリニューアルさせるなど、教職員の感染対策にも尽力する青田さんのチャレンジは、「まさに“美・ドラえもん”。これからもますます高田中学校を素敵な場所にしてもらえたら」と横田校長。

靴を脱いだら、自然と靴の向きをそろえる重い物を持っていたら、自然と“持ちましょうか”と声をかけてくれる。本当に、たか中(高田中学校)の子どもたちは、素直で、心根が優しいんです」と、着任以来、横田校長が、その“素直さ”と“優しさ”を感じているという同校の生徒たち。

青田さんら「研究開発製造部」メンバーは、これからも一丸となり、そんな「たか中」の生徒たちや、教職員たちにとっても必要なグッズをこれからもさらに生み出し、感染症対策に万全を期す考えです。

【関連記事】

高田と新吉田つなぐ「高吉橋」、橋名板を高田中・新田中の生徒が揮毫(きごう)(2020年6月29日)

学校長が“地域への感謝”で演奏プロデュース、日吉台中ライブは11/10(土)(2018年11月7日)※熊谷副校長が前任校の日吉台中学校で勤務した時代の記事

【参考リンク】

横浜市立高田中学校のサイト ※学校だよりに感染症対策についての取り組みなどについて詳しく記載されている


カテゴリ別記事一覧