箕輪町側から綱島街道を日吉駅に向かって緩い坂道をのぼっていく途中、左手の線路と道路に挟まれた狭い場所に細長い建物があり、その1階にしゃれた白い事務所があったのを覚えているでしょうか。「デザインとか設計とか書いてあるけど、何をやっている会社なんだろう?」と気になって覗き込んでみたこともあったかもしれません。
昨年(2015年)秋前に建物が取り壊されてしまったので、今となっては少し懐かしい思い出ですが、あの事務所は何だったのか――。少し気になっていたら、最近になって中央通りの近くにある「TSUTAYA日吉中央通り店」の隣のビルで見つけました。綱島街道の時と同じように“a.m.a design architect office”と書かれた白っぽい事務所です。
「あの場所は気になって覗き込んでしまいますよね。綱島街道を走る車からもよく見られました。最初は仕事していても人の視線が気になっていたのですが、だんだん慣れて気にならなくなりました」と笑顔で話すのは、この株式会社エー・エム・エーデザイン建築設計事務所で代表をつとめる朝倉元(はじめ)さんと美穂(みほ)さんです。
綱島街道沿いの建物が取り壊されることが決まったため、一昨年(2014年)10月に日吉駅前の商店街内に事務所を移転したといいます。
日吉に在住する者として、地元に理解を深めて欲しい
エー・エム・エーデザインは、その名の通り「建築設計」を行う事務所であり、朝倉さんはいわば建築家ということになります。「あまり自らは建築家と名乗ることは少ないのですが、確かに仕事の内容はそうですね」(朝倉さん)
現在、南は沖縄県石垣島から、北は仙台や塩釜での住宅デザインまで、時には大型病院や体育館といった公共施設の完成図をデザインすることもあるといいます。朝倉さんの活躍の場は日本全国に広がっています。
「仕事は全国各地からいただいていますが、私達自身がずっと日吉に住んでいますので、やはり地元の方に設計事務所の仕事を知ってほしいとの思いがあります。あえて、誰からも見える場所をと選んだ結果が綱島街道の事務所でした。ですので、色んな方に見ていただけたのは嬉しかったですね」(朝倉さん)
日吉を拠点に活動する建築家がいることを知ってほしいとの思いは今も変わっておらず、現在の事務所もわざわざ商店街の1階に構えており、通行人から見えるようになっています。
日吉での仕事やその役割とは
建築家の仕事といえば、どこかに籠って集中して作業をしているイメージがありますが、朝倉さんはそうではないようで、「平日は私かスタッフがいますので、気軽に覗いてみてください。中に入っていただければコーヒーやお茶をお出ししますよ」と話します。
エー・エム・エーデザイン建築設計事務所には、全国各地から建築設計や建物デザインの依頼が寄せられていますが、最近は地元での仕事も増えてきたといいます。朝倉さんの建築家としての代表作である「日吉台の家」は日吉本町にあり、ほかにも港北区内をはじめ、川崎市や都筑区内にも手がけた家や建物は多いそうです。
「依頼主の都合もあってすべてをご紹介できないのですが、日吉周辺の方からもいろいろな相談が寄せられていて、実際に設計やデザインを手がけたケースもあります」と、朝倉さんは明かします。
テレビのリフォーム番組ではありませんが、わざわざ建築家に依頼するのは、特殊な構造の建物や、こだわりの強い建築物を作る際だけというイメージを持っている方は多いと思います。テレビに出てくる「○○の匠(たくみ)」のように、敷居が高いのでは……と思ったりもします。実際、建築家とは普段はどんな仕事をして、どのような役割を果たしてくれるものなのでしょうか。
そんな建築家に対する「謎」について、日吉を知り尽くした建築家である朝倉さんが、横浜日吉新聞にて、4月から6月までの計3回、お仕事や建築デザインへの想いを執筆・連載予定です。ご期待ください。
【連載記事】
・<日吉の建築家コラム>設計事務所って、けっこう地味な仕事だったりします(連載第1回、2016年4月1日)
・<日吉の建築家コラム>大変化する日吉と綱島、地元の設計事務所が果たすべき役割(連載第2回、2016年5月1日)
・<建築家コラム>新たな宅地を見つけづらい日吉、地元の建築家に何ができるか(連載第3回:最終回、2016年6月1日)
【関連記事】
・綱島街道と東横線に挟まれた「細長く狭い土地」(箕輪1)の商業テナント取り壊しか(2015年9月3日)
【参考リンク】
・エー・エム・エーデザイン建築設計事務所