<日吉の建築家コラム>大変化する日吉と綱島、地元の設計事務所が果たすべき役割 | 横浜日吉新聞

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日吉の建築家コラム

160401_architect_rg最近、日吉近辺では街が大きく変化するような計画が幾つも進められています。東急・相鉄線の相互乗り入れに伴う鉄道建設工事(私達もこの工事で事務所が移転になりました)をはじめ、旧「アピタ日吉店」(箕輪町2)など一連の「野村不動産日吉複合開発計画(仮称)」や、パナソニック工場跡地の「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン(綱島SST)」(綱島東4)開発、日吉駅近くにある「日吉台学生ハイツ」(箕輪町1)の解体など、今までの日吉の風景ががらっと変えてしまうプロジェクトが次々と始まっています。

古くから親しまれた建物や施設がなくなることは、建築を生業(なりわい)とする私達からすると残念な思いもありますが、地元の活性化や利便性の向上、経済性など考えるとただ感傷に浸るだけなく、前向きにとらえていく必要もあると思っています。

日吉台学生ハイツは建設大手「安藤ハザマ」の手で2016年4月から約1年をかけて解体が予定されている

かつて私達の事務所も「日吉台学生ハイツ」のすぐ近くにありました

街が大きく便利に変化していくとともに、日吉を利用する人はこれからどんどん増えていくでしょう。本格的に日吉や綱島などの周辺地区に住むことを考える人は、これまで以上に多くなるはずです。

そんな大変化を迎える日吉・綱島の街で、地元在住の建築家である私達に何ができるのだろうか、どんなサポートができるのかと、日々考えています。

ただ、建築家や設計事務所が何者なのか、何をしているのかがいまいち知られていない現状もあり、ちょっと近寄りがたい存在だと思われているかもしれません。

そのようなわけで、今回は、多くの人が設計事務所に対して持っているであろうイメージについて、“中の人”の一人として、実態をお話しします。題して「設計事務所“3大あるある”」をひも解いていきましょう。

最初に、設計事務所“あるあるその1”です。

その1:設計事務所って敷居が高いのではないか?

設計だけでなく色んな仕事を知っているのが設計事務所です

設計だけでなく色んな仕事を知っているのが設計事務所です

例えば、ドラマなんかではよく高名な建築家が偉そうな態度で構えていて、所員に指示を飛ばし、依頼者にとっては話しにくくてとっつきにくいようなシチュエーションが映し出されたりもしますが、実際は決してそんなことはありません!

普段は顔が見えにくい職業なので、そのようなイメージを持たれてしまうようですが、中で働く人は、意外と話しやすく親身になってくれる人が多いのです。建築家が偉そうにしていては、良い建築物はできませんし、色んな方と力を合わせない限り、優れた建築物を完成させることはできないからです。

また、新築やリフォームのような建築相談以外でも、様々な悩み事に対応できることが設計事務所の強みです。

例えば「相続があり家を何とかしたい」「お店を始めたい」「インテリアを変えたい」「土地探しに悩んでいる」「庭づくりについて」などなど、設計事務所でもワンストップで相談に応じられる体制ができています。

建築家は、まったく何もない“ゼロ”の段階から建築物が完成するまでの過程と、完成後に使う人の背景や理想などを知らないと設計自体ができませんので、建築はもちろん、さまざまな業界・分野に関する幅広い知識を持っていたりします。設計事務所は、家や建物に関する“なんでも屋”といえるかもしれません。

もちろん、私達だけで解決ができそうにないときは、その分野の専門の方を紹介することもできます。仕事柄、建築業界や各業界にネットワークを持っていますので、何か困ったことがあったら、まず設計事務所へ相談してみてください。最近はカフェを併設しているところもありますし(私達も中央通り近くでドリンクメニューを用意してお待ちしてます!)、遠慮なく声をかけてください。

次に、設計事務所“あるあるその2”はこちら

その2:設計事務所にいろいろ頼むとお金がかかる(ずばり高い!)

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設計事務所の仕事は決まった形が無いので、即座に正確な金額を提示するのは難しいものの、概算見積もりを出してもらうことは可能なはずです

これもよく言われることです。お金の話です。何と比べて高いかということもありますが、前提として、相談を伺うのもわれわれ設計事務所の仕事です。ですので業務として有料にしている事務所もありますが、多くの場合、相談までは無料というケースがほとんどです。

実際の設計においてですが、私達の作るものは決まった形が無いものなので、即座に正確な金額を提示するのは難しいのは事実です。

が、良心的な事務所であれば事前のヒアリングを通してそのプロジェクトの総予算を把握して、概算見積を提示しながら進めていきますので、全体として高いといった印象を持たれることは少ないかと思います。またそういったところで依頼先を見極める方法もあります。

最後に、設計事務所“あるあるその3”です。

その3:設計事務所といっても多数あり、どうやって知り合ったらよいか分からない!(そもそもどこにあるの?)

おっしゃる通り、分かりにくいですよね。これもまた私達の仕事柄、時にこもって集中して作業することが多いため、マンションやビルの一室に入っていることが多いことが影響しているのでしょう。私達のように、目立つ場所に設けている事務所はまれかも知れません。

私達も色んな場所へ出かけて話をさせていただいています!

私達も機会を見つけて色んな場所へ出かけて話をさせていただいています!今回は日吉から少し遠いのですが、お気軽にお越しください

探し方としては、雑誌やインターネットを利用することが一般的ですが、やはり建築家との相性が一番大事です。その建築家の雰囲気を知るためにも建築関連のイベントで実際の設計事例を見たり、実際に話してみるのが良いでしょう。「相談=設計の依頼」と考えることはありません。まずは気軽に接してもらえたらと思います。

若干独断と偏見もあるかも知れませんが、建築家や設計事務所の実態について私達なりに説明してみました。基本的にこちらから“営業”をすることはない仕事であるため、家や建物で困っている方々にアプローチしづらい立場ともいえます。

私達としては、少しでも「日吉ライフ」のサポートができればと考えていますので、実際に日吉の事務所に来ていただいても大歓迎ですし、メールや電話などで問い合わせていただいても大丈夫ですよ。決して、建築家や設計事務所は怖い存在ではありませんから!「TSUTAYA日吉中央通り店」へ行くついでに、事務所の外からでも、そっと覗いてみてください。

<執筆者>

p160401a02朝倉元(はじめ):福岡県出身、1996年に武蔵工業大学工学部建築学科を卒業後、殖産住宅相互会社やアーネストホーム株式会社を経て2008年に日吉でエー・エム・エーデザイン建築設計事務所を設立

p160401a03朝倉美穂:横浜市港北区出身、1996年日本大学理工学部建築学科を卒業後、株式会社松下トータルプラン、アーネストホーム株式会社を経て2008年に朝倉元氏と日吉でエー・エム・エーデザイン建築設計事務所を設立

(提供:エー・エム・エーデザイン建築設計事務所)

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【参考リンク】

エー・エム・エーデザイン建築設計事務所


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