大学でも教えるママ陶芸家が日吉に、箕輪町の工房で陶器づくりの楽しさ伝える

横浜日吉新聞
京都生まれ、愛知県育ちという上大迫(かみおおさこ)千絵さん。愛知県立芸術大学で陶磁を学ぶ。作風を感じるワイルド・ストロベリーの絵の作品を手に。「花が好きで、小学校の花ボランティア活動にも力を入れています」と、花や草木の柄で彩る陶芸作品への想いを語ります

京都生まれ、愛知県育ちという上大迫(かみおおさこ)千絵さん。愛知県立芸術大学で陶磁を学ぶ。作風を感じるワイルド・ストロベリーの絵の作品を手に。「花が好きで、小学校の花ボランティア活動にも力を入れています」と、花や草木の柄で彩る陶芸作品への想いを語ります

日吉の街に陶芸の工房があり、ママ陶芸家が活躍しているのをご存知でしょうか。日吉駅から徒歩約10分。少し箕輪町の丘を上がった1丁目の住宅街に、ひっそりと、大学でも教える陶芸家が運営する「千の花(せんのはな)工房」があります。

この工房を運営するのは、瀬戸や常滑といった歴史的にも陶芸が盛んな土地・愛知県出身の上大迫(かみおおさこ)千絵さん。上大迫さんは、子育てをしながら、日吉地区の小学校の保護者会が主催するイベントでも陶芸教室を行い、また、2012年からは和洋女子大学(千葉県市川市)の非常勤講師として、学生や、社会人などの一般聴講生にも教鞭を執る“ママ陶芸家”としても広く知られる活動を行っています。

「母が油絵を描いていたので、美術に関心を持ち育ったんです」という上大迫さんが芸術の道を目指すようになったのは、高校生のとき。大学受験の前に雑誌で見た、ヨーロッパの有名な窯(かま)の記事を見て、「ろくろをやってみたいと思いました。陶芸は絵も付けられて、一人で成り立つところがすごいと思ったんです。一人で作品を作り、発表できると知り、この道を選びました」と、愛知県立芸術大学で陶磁を専攻したきっかけを語ります。

「千の花(せんのはな)工房」は日吉駅から徒歩10分程度、箕輪町1丁目の住宅街に。4名程度までの少人数でアットホームに陶芸に親しむことができる教室の開催で人気を博している

「千の花(せんのはな)工房」は日吉駅から徒歩10分程度、箕輪町1丁目の住宅街に。4名程度までの少人数でアットホームに陶芸に親しむことができる教室の開催で人気を博している

陶芸が盛んな愛知県での県立の芸術大学だけに、通常の芸術大学では、工芸部門は染色や漆器の専攻に分かれるのが一般的なのですが、愛知県立芸術大学では、瀬戸や常滑、隣の岐阜県でも美濃焼といった焼き物の産地を多く抱えている土地柄ということもあり、「陶芸しか選べない」(上大迫さん)というほど、陶芸界でのリーダー的な人材を育てる意味合いがある大学だったとのこと。

大学時代は、瀬戸焼のふるさと・愛知県瀬戸市で、江戸時代から続く工房で伝統技術を継承しているという加藤作助(さくすけ)教授に師事。加藤氏は愛知県立芸術大学の陶磁専攻設立に携わったという陶芸界では広く知られた重鎮で、上大迫さんは大学院修士、研修生としても大学に残り、加藤氏から陶磁の世界をじっくり学んだといいます。

「大学3年の時には、工業的なプロダクトや現代陶芸ではなく、伝統的な陶芸の世界への道を選択しました。柔らかい土、粘土に、1250度の熱を加え窯で焼くことによって、素材ががらりと変わり、別のものになる。そんな普遍的な陶芸の楽しさ、魅力を、より深く学び、広めることができたならと、陶磁器のプロフェッショナルの道に進んだんです」と上大迫さんは、ふるさと・愛知にて正統派とも言える伝統的な陶磁コースを極めた理由についても語ります。

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結婚がきっかけで日吉へ、国宝ゆかりの街で地域貢献活動も

窯(かま)のすぐそばには、製作途中の生徒の作品も並ぶ。東京都区内から通ってくる方もいるとのこと

窯(かま)のすぐそばには、製作途中の生徒の作品も並ぶ。東京都区内から通ってくる方もいるとのこと

愛知県立大学の在学時代から、上大迫さんの陶芸の腕は高く評価され、東海伝統工芸展では1998年から5回入選、瀬戸染付公募展では2000年、2002年の2回入選との結果も残します。結婚して横浜日吉に活動拠点を移した後も、名古屋丸栄百貨店名古屋栄三越銀座のアトリエ、瀬戸市美術館他にて作品を数多く披露。横浜ばかりでなく、東京や千葉など、首都圏各地で陶芸教室の講師としても活躍しています。

二度の出産を経て、多忙な子育ての合間を縫って活動する“ママ陶芸家”としても日々奮闘する上大迫さん。「より親しみやすい、日々の生活に根差した陶芸作品を生みだす楽しさを、ぜひ皆さんにお伝えできたら」と、日吉の小学校の保護者会活動で陶芸教室も開催するなど、日吉地区にもその活動の幅を広げています。

 秋草文壺(あきくさもんつぼ)は川崎日吉地区で1942(昭和17)年に発見され、1953(昭和28)年には国宝に指定。平安時代末の12世紀後半頃に愛知県の渥美窯(あつみよう)で焼かれたものと考えられている(写真:川崎市教育委員会ホームページより)

秋草文壺(あきくさもんつぼ)は川崎日吉の夢見ヶ崎地区で1942(昭和17)年に発見され、1953(昭和28)年には国宝に指定。平安時代末の12世紀後半頃に愛知県の渥美窯(あつみよう)で焼かれたものと考えられている(写真:川崎市教育委員会ホームページより)

「日吉は、1950(昭和25)年5月公布の文化財保護法により、陶磁器部門の新しい国宝として、第1号の指定を受けた秋草文壺(あきくさもんつぼ)(かつて慶應義塾が所蔵、現在は東京国立博物館に寄託)を出土した土地。また、やはり愛知県瀬戸市に生まれ、1961年に人間国宝に認定された陶芸家の加藤土師萌(はじめ)氏(1900~1968年)が、日吉に“日吉窯”を構えていたことでも知られています。この地で陶芸をできる縁を、大変嬉しく思っています」と上大迫さんは、日吉にかつてあった陶芸にまつわる歴史や偉人への想いも語ります。

子育てや大学での講義などの合間に、箕輪町に自ら構えた工房にて、地域の大人や子どもたちに陶芸を教え、陶芸の楽しさ、歴史・文化に至るまで、継承していこうとする上大迫さんの取り組み。「少しずつにはなりますが、少人数で、アットホームに、陶芸教室を開催しています」とのこと。

「ぜひ、多くの皆さんに陶芸の世界について知っていただき、工房でもぜひ陶芸の楽しさを知っていただけたら嬉しいです」と、日吉での陶芸教室への多くの参加を呼び掛けています。

【参考リンク】
千の花工房 陶芸教室(マナブック)

公開講座 陶芸ワークショップ「オリジナルの平皿を作ろう!(和洋女子大学)

夢見ヶ崎「秋草文壺」(川崎市教育委員会ホームページ)

[慶應義塾豆百科] No.84 国宝・秋草文壺(慶應義塾ホームページ)

人間国宝の陶芸家・加藤土師萌~日吉窯の跡もなく(WEBマガジンはまれぽ.com)

瀬戸焼きの伝統を継承する「陶芸家 加藤作助」(Revalue Nipponサイト)

(千の花工房陶芸教室提供)


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