<相鉄・東急直通の鉄道新線>日吉・綱島住民なら知っておきたい3つの焦点と展望 | 横浜日吉新聞

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ひよしコラム【こちらは2016年5月時点の古い記事です。新しい記事「<東急・相鉄直通線>日吉・綱島・高田住民から見たメリットとデメリット(2019年版)」をご覧ください】

大規模な再開発が相次いで行われている日吉と綱島の街ですが、そもそものきっかけは、東急電鉄と相模鉄道(相鉄)が乗り入れを行うために、新たな鉄道(新線)の建設が始まったことにあります。「相鉄・東急直通線」と呼ばれるこの鉄道新線は、大半が地下鉄であり、相鉄と東急が共同で運営する形となるため、どのような形で電車が走るのかを若干イメージしづらいのが現状です。相鉄・東急直通線に関する3つの謎と、2016年5月時点で分かっている焦点をまとめることで、開業後の姿に迫ってみました。

相鉄・東急直通線について、現時点で公式に発表されている内容は次の通りです。

1.整備する区間

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「相鉄・JR直通線」(2.7km)と「相鉄・東急直通線」(10km)の2段階で整備されており、大半が地下を走る(鉄道・運輸機構の資料より)

・JR東海道貨物線の「横浜羽沢駅」(貨物駅を旅客用に転用)付近から日吉駅までの10.0km
※横浜羽沢駅から相鉄西谷駅までの間(約2.7キロ)は「相鉄・JR直通線」と呼ばれ、2018年度(2019年3月末まで)内に完成予定としており、「相鉄・東急直通線」より先、または同時期に開業させることになっている

2.開業予定時期

2019(平成31)年4月(「予定時期」という“逃げ”が打たれている点に注意)

(※)2016年8月追記:「相鉄・東急直通線」については、事業主の鉄道建設・運輸機構がこれまで示していた「2019年4月の開通予定」を「2022年度下期(2022年10月~2023年3月)に開通」と3年半ほど延期すると2016年8月26日に公式発表しました。相鉄・東急直通線に関する最新の記事はこちらをご覧ください。

3.整備を行う主体

・独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」
※略称「鉄道・運輸機構」=鉄道建設を請け負う国の公益法人、北陸新幹線や北海道新幹線の建設もここが担当している

4.鉄道を営業する主体

・相模鉄道と東急電鉄

5.運行区間

相鉄が首都圏へ乗り入れる全体像、JRへの乗り入れは横須賀線の区間で途中停車駅も公式には明らかになっていない

相鉄が首都圏へ乗り入れる全体像、JRへの乗り入れにおける横須賀線区間での途中停車駅や、東急線の渋谷や目黒から先の区間の直通運転については、公式には明かされていない(鉄道・運輸機構の資料より)

・海老名駅または湘南台駅(相鉄)~西谷駅(この先、日吉まで新線区間)~羽沢駅(羽沢からJR横須賀線線方面または新横浜方面へと分かれる)~新横浜駅~新綱島駅~日吉駅、日吉駅から先は東横線・渋谷方面または目黒線・目黒方面へ分かれる

6.列車の運行頻度

・朝のラッシュ時間帯:1時間あたり10本~14本程度

・その他時間帯:1時間あたり4~6本程度

以上が相鉄・東急直通線の概要です。この鉄道の目的を一言で現すと「相鉄のために作っている」ということがいえます。現在、横浜駅で止まっている相鉄は、都内など都心へ出るためには、横浜駅で乗り換えが必要です。それを解消するために、途中でJR横須賀線や東急に乗り入れることで、都心までの距離をショートカットしてしまおう、という考え方です。

相鉄は都心への直通運転を行う一大プロジェクトとして大きく盛り上げている(同社特集ページより)

相鉄は都心への直通運転を行う一大プロジェクトとして大きく盛り上げている(同社特集ページより)

日吉や綱島での再開発は「おまけ」といいますか、鉄道工事に対する付随的な色彩が強いとの見方ができます。

実際、新駅ができる綱島には相応のメリットはありますが、実のところ、日吉ではあまり良いことがありません。目黒線の始発電車が大幅に減ってしまううえ、数年の間、工事に耐えなければなりません(今まさに耐えてる最中です)。唯一といえるメリットが、新横浜駅方面へ行きやすくなるという点くらいです。

また、同じ港北区内では、大倉山は駅の地下を新線が通るにもかかわらず、駅は設けられず“素通り”されてしまう形です。速達性を重視することや、駅を設けるためのスペースがなかった点が理由とされています。

そんなマイナス面はありますが、新線の開業によって、日吉は“交通の要衝”となり、綱島は2駅が利用できるようになるため、街の価値が上がることは間違いありません。ここはプラスに捉え、開業後の未来を考えてみる必要があります。

まず、そんな相鉄・東急直通線に関して湧いてくる疑問の一点目は、「電車は一体どのように運転されるのか?」という点です。

新横浜~日吉間は東急の運営となる見通し

相鉄は都心へ乗り入れるための新たな車両整備を進めている

相鉄は都心へ乗り入れるため車両のイメージ刷新や新たな車両整備を進める(相鉄のニュースリリースより)

相鉄・東急直通線の運行形態で明らかになっているのは、「朝のラッシュ時は1時間あたり10本~14本程度、日中は4~6本が直通運転される」ということくらいです。

以下は、確定している内容ではありませんが、巷(ちまた)に出ているさまざまな情報をまとめると、

新横浜~日吉間は「東急」が担当する見通し

新横浜と日吉駅では始発着列車が設けられる

上記の2つは現時点で確度の高い内容とされています。これを前提として考えると列車の運行形態は、

(1)相鉄線方面~新横浜~日吉~渋谷(→副都心線方面への乗り入れは不明だが、相鉄にはメリットがあるため推進?、ただ、JR埼京線へも乗り入れるため、新宿へは直通する)

(2)相鉄線方面~新横浜~日吉~目黒~白金高輪(→南北線・三田線方面乗り入れの可能性が高い)

(3)新横浜~日吉~渋谷(→副都心線方面への乗り入れは不明だが、「東急線内」のため乗り入れに支障は少ない?相鉄・東急ともに「新横浜止まり」の列車を設け、新横浜で接続させるようなことも行われるのではないか?)

(4)新横浜~日吉~目黒~白金高輪(→南北線・三田線方面乗り入れの可能性が高い)

(5)日吉~目黒~白金高輪~南北線・三田線方面(現状の目黒線列車)

日吉駅では、この5つの運行形態が考えられます。新綱島駅では日吉駅始発着の(5)を除く4つになります。

白金高輪駅は南北線や三田線からの列車は折り返しは可能だが、目黒線方面からの列車が折り返しは難しい構造となっている(ウィキペディアの「白金高輪駅」のページより)

白金高輪駅は南北線や三田線からの列車は折り返しは可能だが、目黒線方面からの列車が折り返しは難しい構造となっている(ウィキペディアの「白金高輪駅」のページより)

(2)と(4)の「目黒線」乗り入れ列車については、新線方面から来る列車は目黒駅までの乗り入れしかうたわれていませんが、目黒駅での折り返し運転は現時点で不可能に近いため、最低でも地下鉄の白金高輪駅までは運転することになるでしょう。

しかし、目黒線からの列車が白金高輪駅で折り返すという形も同様に現状の設備では難しいと考えられるため、東京メトロ南北線や都営三田線へ乗り入れる可能性が高いとみています。

一方、(1)と(3)の「東横線」乗り入れ列車ですが、渋谷駅での折り返し運転は現状でも可能なため、相鉄や新線方面からの列車は副都心線へは乗り入れずに渋谷駅止まり、という可能性がないわけではありません。ただ、相鉄としては、副都心線へ直通運転ができた方が沿線価値が上がるため、相互直通運転を行う可能性は十分にあると考えられます。

副都心線へ乗り入れた場合は、新宿三丁目や池袋、和光市までの運転とし、西武池袋線や東武東上線へは乗り入れない、との見方もできますが、この点はまったく分かりません

また、(3)は新横浜発着であり、いわば「東急線内」の運転(相鉄とは無関係区間)となるため、東急や東京メトロの車両を使えば、副都心線方面への乗り入れは特に問題は生じないとみられます。新横浜駅から副都心線方面へ直通というのは、東海道新幹線からの乗り換え需要や、企業の本社が案外多い新横浜という土地柄を点を考えても、価値があるのではないかと思われます。

一方で相鉄は東急やJR横須賀線だけでなく、大崎駅からJR埼京線へも乗り入れを行うとされており、そうなると、

・東急東横線

・東急目黒線

・JR横須賀線(横須賀線との合流地点<鶴見駅付近>までは「東海道貨物線」を通る形となるため、新川崎や武蔵小杉、西大井の各駅にも停車するとみられますが、大崎駅までの間の途中停車駅は現時点で明らかにされていません)(※)2018年1月時点では羽沢の次駅は武蔵小杉とみられます。詳細はこちら

・JR埼京線(湘南台や海老名から大崎を経て新宿駅まで直通することは表明されているものの、その先は不明)

・東京メトロ南北線(乗り入れた場合、埼玉高速鉄道へはどうするのか)

・都営三田線(三田線に相鉄の電車が走るのも想像しづらいのですが)

※このほか、相鉄からJR横須賀線経由でJR宇都宮線や高崎線、常磐線への乗り入れ構想も取り沙汰されていますが、ややこしいので割愛します(相鉄の電車にグリーン車を連結できるのでしょうか・・・)

少なくとも上記6路線に対応した車両(電車)を作る必要があります。これに加え、副都心線方面へ乗り入れるとなると、

・東京メトロ副都心線

・西武池袋線

・東武東上線

3路線にも対応できるような電車(車両)を作れるのかどうか、そのメリットがあるのか否か。なにより、考えれば考えるほど、頭が混乱してきそうです。一番分かりやすいのは、新横浜駅を境に、相鉄線の車両と東急線の車両を「分割運用」し、相互直通列車は東京メトロの車両でのみ行う、という形ですが、今のところ実現性はよく分かりません。(※)2018年1月時点で相鉄が新型車両を開発しました。詳細はこちら

相鉄直通線が開業後の日吉駅(綱島寄り)の様子、現在は2本ある目黒線の折り返し線(引き込み線)が1本に減らされるため、始発着列車は大幅に減ることになる

相鉄直通線が開業後の日吉駅(綱島寄り)の様子、現在は2本ある目黒線の折り返し線(引き上げ線)が1本に減らされるため、始発着列車は大幅に減ることになる(鉄道・運輸機構の資料より)

(5)は現在、日吉駅が始発着となっている「目黒線」の列車で、いわゆる「日吉から座っていける列車」ですが、大幅に減らされる予定です。日吉駅の折り返し設備は菊名駅と同様の規模に変更となるため、始発着列車は、多くても1時間あたり最大4本程度(日中は2本程度か)になるとみられます。

列車の運転に関するこのほかの疑問として、

新線内を通る「急行」は運転されるのか、運転する場合、新綱島は急行停車駅となるのか否か?(1日6万3000人の利用が想定される駅なので、停車駅にはなると思われますが、現在公表の日中1時間4~6本という運転本数や、駅間が長い<駅数が少ない>こと考えると、急行運転は微妙)

・新線との乗り換え駅となる日吉駅は、新たに東横線の「特急(Fライナー)」停車駅となる、ならざるを得ないのではないか?(新横浜方面への分岐駅となれば、わざわざ通過してしまうと乗客がかえって不便になると考えられます)

・新線方面への列車が新たにできると、東横線(日吉~横浜~みなとみらい)の運転本数は減ることになるのか?(少なくとも、綱島駅利用者の一部や、菊名駅からJRで新横浜駅へ向かう乗客と、横浜で相鉄線方面へ乗り換える人の多くは新線利用となるため、現在の本数を維持できるのかどうか)

といった疑問も次々湧いてくるのですが、電車の運転形態については今のところ不透明な点が多過ぎて、きりがないのでこのあたりで想像をやめておきます。

2800億の建設費は利用者が負担、運賃は?

主に税金を使って整備し、それを東急と相鉄に貸し出す形となる。最終的な負担は利用者に・・・(

主に税金を使って整備し、それを東急と相鉄に貸し出す形となる。最終的な負担は利用者に・・・(鉄道・運輸機構の資料より)

そして、住民としてもっとも気になるのが、新線の運賃はどうなるのかという点です。

この新線は、鉄道・運輸機構が建設し、それを相鉄と東急に有償で「貸し出す」という形となっています。約2800億円の建設費は「国」と「神奈川県・横浜市」「鉄道・運輸機構」の三者が3分の1ずつ負担しています。つまり、われわれの税金を使って作られている鉄道です。(※)その後、開業時期の延期にともないさらに税金による負担が増えています。詳細はこちら

相鉄と東急は相応のお金を払って線路や駅などの設備を借りることになるため、東横線や目黒線のように自社所有の路線と異なる運賃体系となる可能性があります。

東急線は現在、3キロまでの初乗りが130円(ICカードは126円)で、相鉄は3キロまで150円(ICカードは144円)ですが、この運賃レベルを新線でも維持できるかどうかが焦点です。

横浜駅から先の「みなとみらい線」の運賃表、東急と比べ割高感がある

横浜駅から先の「みなとみらい線」運賃表、東急と比べ割高感がある。新横浜と日吉の間ではこんな運賃体系にならないことを祈るばかり(同社ホームページより)

たとえば、2600億円近い建設費を使って作られた「みなとみらい線」(横浜高速鉄道)は、3キロまでの初乗り運賃が180円(ICカードも同様)と東急より50円も高い設定となっています。

相鉄・東急直通線は1日約26.4万人が利用すると想定されており、開業10年以上を経てようやく1日20万人の利用者数に迫ろうとしている「みなとみらい線」よりも営業条件は格段に良いのですが、約2800億円の建設費を負担させられるのは、鉄道会社で吸収できない限り最終的には利用者となりますので、いくらかの加算運賃は避けられないとの見方もできます。

東横線に乗れば綱島駅から日吉駅まで130円なのに、新綱島駅から乗ってしまうと160円・・・みたいな状況だけは避けてほしいのが住民の願いです。

ただ、運営者は、これまで鉄道運賃を低く抑え、沿線開発によって企業を発展させてきた歴史を持つ東急です。“西武グループの牙城”と言える新横浜へ、初めて鉄路で進出する形になります。西武では成しえなかった周辺宅地開発をからめて沿線価値を上げる、という東急お得意の手法により、鉄道運賃は抑えてほしい、そんなことを期待するばかりです。

新綱島と日吉の間に「新駅」の噂は本当か?

最後は疑問というよりも、新線に関して、日吉や綱島で最近聞く「噂(うわさ)」についての考察です。

日吉と新綱島の間に新駅ができるのではないか?」

そうした噂が一部で流れており、横浜日吉新聞にも「本当か」との問い合わせを複数の方からいただいています。これについて鉄道・運輸機構に問い合わせたところ、「そうした事実はない」という回答でした。

そもそもなぜ、新駅の噂が出てきたのでしょうか。考えられる理由は次の通りです。

・アピタ日吉店跡地などの「野村不動産日吉複合開発計画(仮称)」(箕輪町2丁目)や「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」(綱島SST、綱島東4)をはじめとした巨大再開発が行われているため、「駅も一緒に作るのではないか」という期待感が周辺住民などに醸成されつつある

・再開発にともない、周辺で住宅の販売が過熱している=販売現場でのセールストークも過熱し、新駅の噂の出所となっている可能性が高い

綱島と日吉の間は東急線内でもっとも長い駅間距離(2.2km)となっており、その中間に駅ができても不思議ではない。1.1キロ区間で駅が設けられているケースも多い(代官山~学芸大学間の各駅や新丸子~武蔵小杉間など)

という3つの背景が考えられます。さらに新駅を作るうえで、

・ドンキホーテ日吉店や回転寿司チェーン「銚子丸日吉店」の付近には“駅が作れそうな雰囲気の土地”がある

日吉駅から箕輪町2丁目にかけての工事断面図

日吉駅から箕輪町2丁目にかけての工事平面図と断面図、「銚子丸」や「ドン・キホーテ日吉店」の付近からトンネルの形状が変更となるのは事実(鉄道・運輸機構の資料に本紙で赤字にて場所の説明を加えた)

・上記の付近から新綱島駅方面にかけては、地下のトンネル形態が円形トンネルの単線型(上下で1本ずつの独立型トンネル)に変わっており、技術的な面はともかく、2つのトンネルの間に駅を作ることは、物理的に不可能ではないはず

という2つの条件面からも気になるところです。

一方で、否定的な面としては、

大倉山駅のほぼ真下を新線が通るのに駅は設けられない

大倉山駅のほぼ真下を新線が通るのに新線の駅は設けられない

・真下にトンネルを通す大倉山でさえ駅を作らなかったのに、いきなり日吉と新綱島の間に作るとは考えづらい

・新駅の計画が公式に持ち上がったことは一度もないし、都市計画を進めているとの動きも見えない

というのも事実です。

本紙の結論としては、「現在のところ新駅を作る動きは、まったく見られないし、本紙では察知できていない」ということになります。

なお、相鉄・東急直通線とは別に、現在は日吉止まりの市営地下鉄グリーンラインを鶴見駅まで延伸する構想もあり、実現化して横浜市内だけを通るルートが選ばれた場合は、日吉5~6丁目に新駅を作る可能性はあると考えられます。

ここまでが新駅の噂に関する現状報告です。なお、これらの話は今のところ一部の「噂」レベルを脱していませんので、過大な期待を持たないほうがいい、ということだけはお伝えしたいところです。

以上、ここまで、

・新線の運転区間やダイヤはどうなるのか

・新線の運賃は東急線より高くなってしまうのか

・新線の日吉と新綱島の間に駅ができる噂は本当か

これら3つの謎について迫りましたが、現時点で不透明な点ばかりです。横浜日吉新聞では引き続き注意深く追いかけてまいります。

(※)なお、新綱島駅など新たに設けられる駅の名については、今も「仮称」扱いとなっており、開業までに変更の可能性は残されています。駅名でさえ、確実ではないのが現状です。

【関連記事】

2019年4月の東急・相鉄直通まで4年弱、日吉住民から見たメリットとデメリットを考える(2015年8月15日)

【参考リンク】

相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線の公式ホームページ

相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線(神奈川東部方面線)について(鉄道・運輸機構)

相鉄による「都心直通プロジェクト」のページ


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