慶應義塾の学生たちが奏でる演奏会、時代を超えて愛された「古楽の響き」を、ここ日吉の街で体感してみませんか。
慶應義塾大学の教養研究センターとクラシック・ヨコハマ推進委員会、日吉音楽学研究室は、あす(2023)年12月20日(水)18時30分から19時30分まで「慶應義塾大学コレギウム・ムジクム・オーケストラ演奏会」、今週末の23日(土)14時から16時まで「慶應義塾大学古楽アカデミー・オーケストラ・小合唱演奏会」をそれぞれ行います(開場は各開始時刻の30分前より)。
日吉駅前にある慶應義塾大学日吉キャンパス協生館内「藤原洋記念ホール(藤原ホール)」(日吉4)を会場として両演奏会は開かれる予定です。
2001(平成13)年度に、日吉キャンパスにおける実践的な音楽の授業の一環として始まったという「慶應義塾大学コレギウム・ムジクム」。
「音楽大学ではない一般大学において、これほどの多彩な授業を展開し積極的な活動を行っている例は、アメリカでは見られますが、日本においてはほとんどありません。慶應ならではのユニークな取り組みと言えます」と、日吉音楽学研究室の平山香織さん。
コレギウム・ムジクムとは、古楽復興を目指す愛好団体の意で、現在では、オーケストラ・クラス、ピリオド楽器(古楽器)を用いた古楽アカデミー・オーケストラ(および室内アンサンブル)、小編成の合唱という3つのクラスが正規の授業として開講され、定期的に演奏会を開催しています。
あす12月20日(水)に開かれる演奏会では、エクトル・ベルリオーズ(1803-1869)の「序曲『海賊』」作品21 (H 101)、ロベルト・シューマン(1810-1856)の「交響曲第2番ハ長調」(作品61)を演奏披露する予定です。
また、12月23日(土)の「古楽アカデミー・オーケストラ・小合唱演奏会」では、ジャン=バティスト・リュリ(1632–1687)による「アルミ―ド」組曲、ルイ・ジョゼフ・フランクール(1738-1804)の「アルミ―ド」よりパッサカリア、クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1714-1787)による「アルミード」組曲の3つの「アルミード」を採り上げる予定です。
トルクァート・タッソ(1544-1595)による、もっとも人気を博した叙事詩『解放されたエルサレム』にも描かれたという「アルミ―ド」。
平山さんによると、17世紀の幕開け前後にイタリアで新しい舞台芸術としてのオペラが誕生、瞬く間にヨーロッパに広がっていく中で、もっとも人気を博した同作品は、十字軍の活躍を描いた長大な作品になっているといいます。
その中で描かれた「アルミ―ド」は、オペラなどだけでなく、美術作品でも頻繁に扱われるほどの人気を博したといいます。
作品の中で描かれた魔女の「アルミード」は、キリスト教の騎士である「リナルド」を誘拐。
魔法を用いて彼を愛人として幽閉しますが、やがてはリナルドの友人たちが彼を救い出し、彼女は捨てられ置き去りにされるというストーリー。
早い時期に成功した「アルミード」が、リュリが晩年に書いたオペラ作品として1686年に初演されたものだといい、リュリが世を去った後も、幾度もパリで再演されたとのこと。
しかし、リュリが残した状態で上演が重ねられたわけではなく、オペラが披露される度に大きく手が加えられていったといいます。
フランクールの作品はその「改訂版」で、リュリが初演したときから100年近くが経過した、1778年に舞台化。グルックの「アルミード」は、フランクールによる再演版の前年の1777年にパリで初演。
ウィ―ンで宮廷作曲家を務めていたというグルックですが、マリー・アントワネットがフランスに嫁いだことにより、パリとの関係が深くなり、リュリのスタイルを踏襲したようなオペラを上演していたとのこと。
平山さんもその変遷を熱く語る、世代を超えて愛された「アルミ―ド」の歴史的な経緯とその変遷を紐解き、演奏会で披露するチャレンジは、古楽や17世紀以降のオペラ史をたどる意味でも、趣深い演奏会となりそうです。
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【参考リンク】