実践的授業で学べる日吉音楽学研究室、新春も藤原ホールで3公演 | 横浜日吉新聞

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日吉周辺の音楽ファンからも熱き声援が注がれています。慶應義塾大学日吉キャンパス(日吉4)では、日吉音楽学研究室が、同大学の学生に向け実践的な音楽の授業を複数開講し、発表の成果としてオーケストラやオペラ作品を一般に公開

2019年12月に公演したオペラ「フィガロの結婚」の出演者である石井明(総監督・指揮、右)と朝倉春菜さん(スザンナ役・中央)が、FMヨコハマ「YOKOHAMA My Choice!」に出演したことを記念して(日吉音楽学研究室提供)

2019年12月に公演したオペラ「フィガロの結婚」の出演者である石井明(総監督・指揮、右)と朝倉春菜さん(スザンナ役・中央)が、FMヨコハマ「YOKOHAMA My Choice!」に出演したことを記念して(日吉音楽学研究室提供)

同大学の学生や卒業生、関係者らから好評を博すばかりでなく、日吉周辺の地域まちづくりにも貢献する役割を果たしています。

1999(平成11)年に着任した佐藤望教授(現国際基督教大学教授)と、石井明教授が、日吉キャンパスにおける共通科目である総合教育科目の音楽一環として、「より実践的な授業の開講が、今後の日吉における音楽教育のために良いのではないか」と話し合い、オーケストラや合唱の授業や演奏会を開催。

音楽とその歴史を学び伝え、発表することを目的とした「慶應義塾コレギウム・ムジクム」(古楽復興を目指す愛好団体の意味)を創設したことにより、日吉音楽学研究室としての活動が本格的にスタートするに至ります。

藤原洋記念ホール(藤原ホール)は日吉駅前の綱島街道沿い、慶應義塾創立150周年の2008(同20)年夏に新キャンパス棟として完成した「協生館」内にある

藤原洋記念ホール(藤原ホール)は日吉駅前の綱島街道沿い、慶應義塾創立150周年の2008(同20)年夏に新キャンパス棟として完成した「協生館」内にある

当初は、学内の講堂(広めの教室)やオープンスペースを活用してのコンサートの開催だったといいますが、慶應義塾創立150周年にあたる2008(同20)年夏には、その記念事業として綱島街道沿いにある新キャンパス棟「協生館」が完成。

館内にオープンした500人規模を収容可能なホール・藤原洋記念ホール(藤原ホール)の設計にも佐藤教授、石井教授らは提案を行い、「類まれだという素晴らしい音響設備」(石井教授)を実現し、以降、より本格的なオーケストラやオペラ演奏、音楽の歴史をリアルに学ぶことができる古楽教室にもより力を入れるなど、実に“多彩な音楽”関連の授業を学生たちに提供しているといいます。

地域連携の実践として古楽オーケストラやオペラを披露

藤原ホールという発表の場を得られたこともあり、より高度な学術研究・教育機関としての日吉音楽学研究室は、慶應義塾の卒業生や大学周辺の人々にも認知されることに。

慶應義塾大学コレギウム・ムジクム古楽アカデミー。古楽を学べる授業は、音楽専門の大学でも珍しいという。授業の曜日を土曜日に設定していることから、卒業生も一部受け入れている(同研究室提供)

慶應義塾大学コレギウム・ムジクム古楽アカデミー。古楽を学べる授業は、音楽専門の大学でも珍しいという。授業の曜日を土曜日に設定していることから、卒業生も一部受け入れている(同研究室提供)

同センターが実践してきたという地域連携の取り組みの中で、学生が履修する音楽授業の発表・成果の場として、オペラは3年に1回、古楽や合唱は年に数回(夏、冬など)の実践的ステージの披露が行われています。

石井教授は、「慶應日吉キャンパスでは、学生一人ひとりの興味や資質に併せ、導入的な授業からかなり深い内容を扱うものまで、 多彩な音楽関連の授業を提供しています。なかには、実習や実技、演習を含む音楽の授業もあり、このことは他の一般大学にはほとんど見られない大きな特徴となっています」と、アカデミックな環境の中、より実践的なレベルに至るまでの音楽教育、そして体験を行っていけることが、大きな特色になっていると、力を込めて語ります。

「フィガロの結婚」に出演したオペラ歌手の佐田山千恵さん(右)、日吉音楽学研究室の平山香織さん(同研究室提供)

「フィガロの結婚」に出演したオペラ歌手の佐田山千恵さん(右)、日吉音楽学研究室の平山香織さん(同研究室提供)

横浜市が、芸術ジャンルの一環としての事業として行っている「横浜音祭り」の開催に合わせ、2013年にはオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」、2016年には「ドン・ジョヴァンニ」、そして2019年には「フィガロの結婚」と、いずれもモーツァルトの人気作品を扱い、チケットも連日売り切れとなるなど、日吉周辺の熱心なファンも獲得しているといいます。

特にオペラでは、間口を少し広げて、音楽を専門的に学んできた学生ばかりでなく、音楽未経験者、例えば体育会の学生も活躍しているのです。舞台装置や演出、踊りや照明といった細かなところまで、指導者として招くプロの声楽家らと学生が交わり、一つの作品として作り上げていくことが大きな魅力となっています」と、石井教授は、音楽そのものの力、それを学び、共有し、作り上げていく喜びを、一人ひとりの学生やプロの音楽家、卒業生、そして地域の人たちまでもが感じられる取り組みとして、同研究室を作り上げてきたと説明します。

新春も3つの演奏会で成果発表、生誕250周年のベートーヴェン作品も

明日(2020年)1月15日(水)18時30分開演(18時開場)の「コレギウム・ムジクム・オーケストラ演奏会」の案内チラシ。今年はベートーヴェン生誕250周年ということもあり、記念する演奏会から新年の演奏が幕開けとなる(同研究室提供)

明日(2020年)1月15日(水)18時30分開演(18時開場)の「コレギウム・ムジクム・オーケストラ演奏会」の案内チラシ。今年はベートーヴェン生誕250周年ということもあり、記念する演奏会から新年の演奏が幕開けとなる(同研究室提供)

この冬も、学生がこれまでの「学びの成果」を発揮する機会を設けており、先月(2019年)12月に披露されたオペラ「フィガロの結婚」のほか、石井教授らの専門分野である古楽ジャンルを中心とした、3つの企画でのステージ披露を行う予定となっています。

まずは、明日(2020年)1月15日(水)18時30分開演(18時開場)の「コレギウム・ムジクム・オーケストラ演奏会」。ビゼーの「交響曲ハ長調」、生誕250周年の記念すべき一年となるベートーヴェン「交響曲第7番」を、石井教授の指揮で披露します。

また、今週末1月18日(土)14:00開演(13時30分開場)には、「コレギウム・ムジクム・古楽アカデミー・オーケストラ演奏会~音楽で出会う諸国の人々」として、テレマン作曲「管弦楽組曲 変ロ長調」や、ラモーの「ダルダニュス組曲」他の楽曲を、石井教授の指揮・チェンバロ演奏で実施する予定です。

さらに、来月2月7日(金)18時30分開演(18時開場)には、「コレギウム・ムジクム・アカデミー声楽アンサンブル演奏会~3つの世紀の合唱作品」を計画。シュッツ作曲の「ムジカリッシェス・エグゼクィエン(挽歌)」や、プーランク作曲「人間の顔」、寺嶋陸也作曲「魔のひととき」を、声楽アンサンブルで披露する予定です。

今週末1月18日(土)14時開演(13時30分開場)で行われる「コレギウム・ムジクム・古楽アカデミー・オーケストラ演奏会~音楽で出会う諸国の人々」の案内チラシ(同研究室提供)

今週末1月18日(土)14時開演(13時30分開場)で行われる「コレギウム・ムジクム・古楽アカデミー・オーケストラ演奏会~音楽で出会う諸国の人々」の案内チラシ(同研究室提供)

いずれも会場は、日吉駅前の藤原ホール(入場無料・事前申し込み不要)。

「日吉に来たら、何かをやっているな、と感じられる街に」との想いを抱いているという石井教授、同研究室の職員・研究員、そして何より「教養」として同大学の授業を履修した学生たちが、より実践的な音楽ステージの披露により輝くことができる取り組みの成果が、これからも広く日吉の街から、日本、そして世界へと発信されていきそうです。

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【参考リンク】

慶應義塾大学 日吉音楽学研究室の公式サイト

コンサート情報(同)

コレギウム・ムジクムと古楽アカデミーについて(同)

慶應義塾大学教養研究センターのサイト ※各演奏会についての詳細リンクなど

開催概要~クラシック・ヨコハマ(同推進委員会) ※ 街づくりと連動した音楽イベントとして多く開催


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