“横浜のパナソニック”がさらに変化するきっかけとなるのでしょうか。
パナソニックホールディングス(HD=グループ本社、大阪府門真市)は今月(2023年)11月17日、都筑区池辺(いこのべ)町に本社を置くパナソニックオートモーティブシステムズ株式会社(永易正吏社長)の株式50%以上を米国の投資ファンドに売却すると発表しました。
パナソニックHDは2022年4月から家電やAV機器、自動車関連、電子部品、電池など主な事業ごとに8つの主要子会社を設けており、オートモーティブシステムズはそのうちの1社。
自動車コックピットや安全運転支援システム、車載充電システムといった自動車業界向けの事業を展開しており、都筑区の本社をはじめ国内外に61の拠点を持ち、従業員数は約3万人にのぼるといいます。
2023年3月期の売上は1兆2975億円で、パナソニックグループ全体の売上(8兆3789億円)で見ると15%ほどを占めていますが、車載半導体をはじめとした部材の高騰や円安などを背景に営業利益は162億円と他の事業領域と比べて低い水準にとどまっていました。
パナソニックHDは今回の株式売却について、「今後、更なる強化が求められるソフトウェア開発や電動化への対応において、長期的な成長を図るため、継続的な投資が必要」と説明。
同社が100%保有するオートモーティブシステムズ株式の一部を米国の投資ファンド「アポロ・グローバル・マネジメント」のグループ会社へ2024年3月末までに売却し、今後は株式の保有比率が50%以下となる「持分法適用会社」とする予定です。
そのうえで、パナソニックHDは株式の一部売却後についても「グループの一員としてPAS(パナソニックオートモーティブシステムズ)を支援し、互いの企業価値最大化に向けて他のグループ各社と共に連携を図っていきます」としています。
パナソニックオートモーティブシステムズは、綱島東に本社工場を置いていた松下通信工業株式会社が一大事業に育てたカーラジオ事業を源流としており、2003(平成15)年に同社が分割されて社名が消滅した際には、カーオーディオやカーナビといった事業を前身企業が引き継いでいました。

松下通信工業が1960(昭和35)年から本社を置いていた綱島東の本社工場は2011年に閉鎖され、2018年から「綱島SST」となった。写真の左手部分に現在は米アップルの研究所が建っている(2015年8月撮影)
綱島東の松下通信工業が消えて工場が閉じられた後も、都筑区に本社を置く“横浜のパナソニック”として現在も売上1兆円を超える事業規模を保っているオートモーティブシステムズ。
パナソニックHDは今回の株式売却を機に資金調達などによって「業界トップクラスの競争力と経営体質を備えたリーディングプロバイダー」として成長させたい考えです。
【関連記事】
・「綱島SST」がまちびらき、先端技術と人を集め“イノベーション創出”を目指す(2018年3月27日、松下通信工業の跡地は「綱島SST」に変わり、式典では当時のパナソニック社長もあいさつした)
【参考リンク】
・「パナソニック ホールディングスと Apollo がパナソニック オートモーティブシステムズの事業に関するパートナーシップについて基本合意」(PDF、2023年11月17日)
・オートモーティブ事業の歴史(パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社、松下通信工業が担っていた事業が目立つ)