日吉と綱島の風景が一変する5つの巨大再開発、2016年5月の最新動向をまとめました | 横浜日吉新聞

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ひよしコラム日吉駅から綱島駅へ向かう綱島街道(東京丸子横浜線)を日吉駅東口から歩くと、右に相鉄・東急直通の鉄道新線の工事が行われ、左手では各所で再開発の動きが見られます。まさに「右を見ても、左を見ても工事中」という状態が数年は続くわけですが、近未来を想像することで、工事中の風景が少しは楽しくなるかもしれません。

箕輪町1丁目(日吉駅東口周辺)から綱島東1丁目(綱島駅東口周辺)にかけて、現在進行している「日吉台学生ハイツ跡地」「野村不動産日吉複合開発計画(仮称)」「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン(綱島SST)計画」「新綱島駅(仮称)周辺の土地区画整理事業・市街地再開発事業」「綱島駅東口(駅前)再開発計画」という5つの再開発計画について、最新の状況と今後の動向・焦点を簡潔にまとめてみました

まずは日吉駅東口から綱島街道を歩いていきましょう。日吉駅から5分以内の場所で行われている旧「日吉台学生ハイツ」の再開発についての現状です。

箕輪町1丁目「日吉台学生ハイツ跡地」

 

綱島街道から見た「日吉台学生ハイツ」

綱島街道から見た解体前の「日吉台学生ハイツ」

<土地面積>

  • 約4700平方メートル

<土地内容>

  • 日吉台学生ハイツ(東京・スチューデントハウス日吉台)の跡地

<現状>

  • 2016年4月から約1年間かけて解体工事中

<公式発表済みの計画>

  • 跡地活用については一切発表されていない

<焦点と現時点での動向>

  • 日吉駅徒歩5分、慶應大学日吉キャンパスの隣という好立地、5つの再開発のなかでは最小規模
  • 現在の土地所有者は伊藤忠が過半数を出資する合同会社日吉プロパティーズ
  • 近隣の「野村不動産日吉複合開発計画(仮称)」や「綱島SST計画」との連携が行われるのか否かが焦点の一つ
  • 伊藤忠商事は学生向け共同住宅事業に参入し第1号を2017年3月に武蔵小杉にてオープン予定で、慶應義塾大学は日吉5丁目の西松建設寮跡地や綱島SSTで国際学生寮を相次ぎ新設を表明
  • 実質的な土地所有者である伊藤忠と、隣接する慶應大の動向を考えると、跡地は大学に関連した施設が作られるとの見方もできる
  • 一方、駅に近い好立地のため分譲マンション建設を期待する声もある

以上が「日吉台学生ハイツ」の跡地に関わる現状ですが、実のところ現時点では、その後は何になるのかまったく決まっていません。解体工事以外のすべては予測である点だけは覚えておいていただけたらと思います。

日吉台学生ハイツ跡地を後に、緩い坂道を下り切ると、左手に見えてくるのが日吉や綱島住民に親しまれた大型ショッピングセンターの「アピタ日吉店」(旧「サンテラス日吉」)の建物です。今年(2016年)3月に完全閉店して以降は、解体を待つだけの状態です。

日吉と綱島でもっとも巨大な再開発地の状況は、現時点で下記の通りとなっています。

箕輪町2丁目「野村不動産日吉複合開発計画(仮称)」

 

店内も店外も人の気配がない旧アピタ日吉店(2016年3月30日)

解体を待つ旧アピタ日吉店(2016年3月30日)

<土地面積>

  • 約56,000平方メートル

<土地内容>

  • アピタ日吉店と駐車場の跡地
  • 野村総合研究所のデータセンター、社員寮の跡地
  • 損保ジャパン日本興亜の研修施設・オフィスの跡地

<現状>

  • 今年中に敷地内すべての建物の解体工事に着手
  • 社員寮敷地の一部は近隣に建設中「プラウド日吉」のモデルルームとして使用中

<公式発表済みの計画>

  • 住宅を核とし、商業施設などの生活利便施設の建設
  • サービス付き高齢者向け住宅の建設
  • 横浜市立日吉台小学校第二方面校(仮称)の建設

<焦点と現時点での動向>

  • 綱島街道沿いにおける5つの再開発地のなかで最大規模、東京ドーム1つを建てても余るくらいの広さ
  • 住宅は一戸建てではなくマンションとなるのは確実
  • 合計戸数が1000戸という報道だけでなく、最大で1500戸になるとの見方も出ている
  • マンションの高さは40メートル前後(14~15階建て程度)となる見通し
  • 大型スーパーは建たないものの、日常の買物に使えるスーパーは整備される見通し
  • 再開発地内を縦断する通路が設けられ、歩行者と自転車専用道となる見込み
  • 「生活利便施設」の内容がどういったものになるのかに注目
  • 「綱島SST」との連携がうたわれており、綱島SSTで導入されるエコ関連の施設やシステムがどこまで導入されるかに注目
  • 2020年4月開校予定の新小学校は旧野村総研のデータセンター跡(大型マンション「プラウド日吉」の近く)に建設
    小学校の建設予定地は現在、野村総研のデータセンターが建っている場所となる(横浜市が公開した資料より)
    小学校の建設予定地は現在、野村総研のデータセンターが建っている場所となる(横浜市が公開した資料より)
  • 新小学校の通学区については、市がたたき台として、2016年5月時点で「箕輪町2丁目」と「綱島東4丁目」のほぼ全域(日吉南小学校と綱島東小学校の学区内は除く)が示されている
  • 新小学校の通学区や学校名などは今年中に議論が行われる予定
  • 新小学校建設予定地に高圧線と鉄塔が接しており、子どもへの影響を懸念する声もある
  • 再開発全体において、新小学校建設以外の細かな内容が発表されていないため、今後何らかの「目玉」が追加される可能性もある。国の「特区」を使った再開発が行われるのではないかとの見方も。

以上がアピタ日吉店など3つの跡地を使った「野村不動産日吉複合開発計画(仮称)」の現状です。5つの再開発地ではもっとも大きい規模の開発となっており、その行方に注目が集まります。

すぐ隣の「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン(綱島SST)」(綱島東4)が商業施設が中心となっているのに対し、野村不動産日吉複合開発計画は、日吉駅から徒歩10分圏という交通利便性を持つためか、住宅地(マンション)を主とした居住地としているのが特徴といえます。

では、次の綱島SSTへ移動しましょう。米アップルの研究開発施設が建設されることで、日本国内だけでなく、海外のメディアからも注目を集めています。綱島SSTの現状は次の通りです。

綱島東4丁目「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン(綱島SST)」計画

 

綱島SSTの完成予定イメージ(Tsunashima SST協議会資料より)

綱島SSTの完成予定イメージ(Tsunashima SST協議会資料より)

<土地面積>

  • 約37,900平方メートル

<土地内容>

  • パナソニック綱島事業所(工場)跡地

<現状>

  • 米アップル開発研究所の建設中(12月稼働予定)
  • 東京ガスによるタウンエネルギーセンターの建設中(アップルと同時期に稼働開始か)

<未着手の公式発表済み計画>

  • 10階建てマンション(94戸+保育所)
  • アピタ綱島日吉店(仮称)
  • マネジメントセンター/国際学生寮(慶應大)
  • ENEOS(エネオス)の水素エネルギーステーション(綱島街道側)

<焦点と現時点での動向>

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綱島SST内の施設位置図(クリックで拡大、綱島SSTホームページより)

  • 綱島街道沿いにおける5つの再開発地のなかでもっとも計画が進展しており、2019年3月までには全面完成し「まちびらき」となる。相鉄・東急直通線の開業と同時か以前に出来上がる形となる
  • パナソニックと野村不動産を核に、さまざまな企業を巻き込んで国内最先端のまちづくりを志向しており、エコ化やセキュリティ面など綱島での開発経験を他の開発でも生かしていく考え
  • 米アップルが米国以外で研究・開発拠点を設けるのは異例であるため、世界のマスコミから注目を集めている
  • 再開発地内で最大規模となる「アピタ綱島日吉店(仮称)」は2017年秋に開業予定
  • 10階建てマンション(10階建て94戸+保育所)は2018年3月中旬に完成予定
  • マネジメントセンター/国際学生寮(慶應大)は2018年3月までに完成予定
  • クリニックや薬局、カーシェアリング、サイクルシェアサービスなどの施設建設やサービスが提供される予定だが、現時点では詳細不明
  • 秘密主義が徹底しているとされる米アップルが一般市民向けの公開部分(例:自社製品ショールームなど)を作るのか否かは国内外から注目を集めそう
  • アピタ綱島日吉店(仮称)の専門店街にはどのような店舗が入居するのかは注目
  • 新綱島駅から徒歩10分程度の場所となるが、路線バスの再編やシャトルバスなどの交通手段が確保されるか否かが気になる(例:新綱島駅~綱島SST~旧アピタ周辺の再開発地~日吉駅など)

以上が綱島SSTの現状です。ほぼ計画が固まった状態であり、5つの再開発のなかではもっとも進んでいるといえます。加えて、都市部における再開発の先進事例として、隣の野村不動産日吉複合開発計画はもちろん、他地域にも影響を与える可能性があります。もしかしたら“綱島SSTモデル”が国内外に広がっていくかもしれません。

綱島SSTの次は綱島駅に向かいます。綱島街道の近くに2019年4月に開業が予定されている新綱島駅(仮称)周辺の再開発の状況です。日吉側から見て綱島街道の左側、かつて温泉施設「東京園」があった綱島東1丁目の一帯は、地下深くに新綱島駅が設けられ、地上部では大規模な再開発が行われます。

綱島東1丁目「新綱島駅(仮称)周辺の土地区画整理事業・市街地再開発事業」

 

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28階建ての再開発ビルは地権者らによる「新綱島駅前地区市街地再開発準備組合」が事業主体となり、横浜市はそこからフロアを買い取る形で「区民文化センター」(芸術ホール)を整備する計画(横浜市の説明会資料より)

<土地面積>

  • 約27,000平方メートル

<土地内容>

  • 日帰り温泉施設「東京園」の跡地
  • 駐車場や農地、宅地などの跡地

<現状>

  • 地下に新綱島駅を建設中
  • 「東京園」や駐車場など駅建設部分は更地化

<公式発表済みの計画>

  • 地下1階地上28階建て複合ビル(高さ100メートル弱、240戸マンション+商業施設)建設
  • 複合ビル内に区民文化センター(芸術ホール)設置
  • 地下自転車駐車場(1000台収容)の建設
  • バスターミナル建設(日吉・鶴見方面のバスが発着)
  • 綱島街道など周辺道路の拡幅
  • 3つの広場を整備

<焦点と現時点での動向>

新駅の上には新たな道路が整備され、5台分のバス乗降場が設けられる。日吉や鶴見方面のバス(1日約430台)は新駅から発着する予定(横浜市が説明会で公開したスライド資料より)

新駅の上には新たな道路が整備され、5台分のバス乗降場が設けられる。日吉や鶴見方面のバス(1日約430台)は新駅から発着する予定(横浜市が説明会で公開したスライド資料より)

  • 新綱島駅の出入口は3カ所設けられる
  • バスターミナルは5つの乗降場が設けられ(うち1つは降車用)、日吉や鶴見方面へのバス(約430本)が発着する
  • 再開発区域のなかでは、マンション「リビオ綱島」と歴史的建造物の「池谷(いけのや)家住宅」の周辺以外は、取り壊し・再編の対象となっている
  • 目玉は複合ビル。高さ100メートル近くの28階建てマンション部分と、6階建て程度の商業施設・公共施設の棟に分かれている
  • 複合ビルの建設主体は周辺の地権者による「再開発準備組合」だが、建設や運営に際してはノウハウを持つ東急電鉄が協力する模様
  • 横浜市立の区民文化センター(芸術ホール)は6階建て部分の上部2~3フロア分が使われ、300人程度収容のホールや区民向けのギャラリーなどが設けられる予定
  • 商業施設の棟にどういった店舗が設けられるのか、保育所などの公共施設が設けられるのかに注目
  • 工事の着工は2018年4月以降となり、2021年3月までにすべてを完成させる予定
  • 現在の焦点は綱島駅と新綱島駅の連絡通路の整備方法。地下道案と地上の歩行者専用通路(ペデストリアンデッキ)案があるが、東口の再開発計画が決まらないため未決定
  • 新綱島駅の再開発にともない建物が取り壊されてしまった綱島温泉「東京園」は、地元住民らが復活を熱望。現在、同園を含めた地権者らの間で今後どうするかを議論中

ここまでが新綱島駅の周辺における再開発計画です。地下深くに新たな新綱島駅(東横線~日吉~新綱島~新横浜~相鉄線)ができることで、地上部を一変させようとの計画です。

こちらは駐車場や農地などが多かったため、再開発に踏み出しやすかったといえますが、次の綱島駅東口は、駅に近い“一等地”ながら、古くからの低い建物が密集。今も再開発の兆候はほとんど見られず、今後の行方が決まっていない地域です。

 綱島東1丁目「綱島駅東口(駅前)再開発計画」

※正式名称は「綱島東一丁目地区地区計画」※このうち「D地区」にあたる部分)

5つに分けられた再開発区域のうち、

地区計画は新綱島地区(A~CとE地区)と一体的に策定され、5つに分けられた区域のうち、綱島駅前(東口)は「D地区」となり、具体的な内容はほとんど決まっていない

<土地面積>

  • 約17,000平方メートル

<土地内容>

  • 飲食店を中心とした商店などが現存

<現状>

  • 横浜市がまちづくりの方向性を定める地区計画(綱島東一丁目地区)を策定中
  • 旧「綱島駅ビル」は地区計画から除外、東急電鉄は同ビルの解体と高架橋の耐震工事に近く着手
  • 地区計画の近接地で東急不動産が7階建て42戸のマンション計画

<公式発表済みの計画※方向性のみ>

  • 建替えや都市機能の更新などと併せ、駅前にふさわしい商業・業務・都市型住宅などの機能集積を図り、安全な歩行者空間の確保を推進する
  • バス、タクシーなどの乗降機能の充実を図る

<焦点と現時点での動向>

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綱島東口は3社の路線バスとタクシーと自家用車と歩行者が狭い道路に混在する状況で長年改善が望まれていた(2015年11月撮影)

  • 綱島駅東口から綱島街道まで一帯の再開発計画
  • まちづくりの方向性(地区計画)は決まりつつあるが、具体的な内容は何も決まっていない
  • 低い建物やビルが密集しているエリアだけに、大規模な再開発を行う場合は地権者との個別交渉が課題か
  • 東口地区の再開発計画が進まない限り、新綱島駅との連絡通路建設や、バス・タクシー乗り場などの再編整備が進まない
  • 旧綱島駅ビルのみが対象エリア外となっているが、持ち主である東急電鉄によって何らかの開発が行われる見通し

以上、周辺道路が狭くバスやタクシー、自家用車、自転車、歩行者がひしめき合っている綱島駅の東口ですが、現状では再開発へ向けた前進は見られるものの、具体的な計画については公表されていません。

まちづくりの方向性を定める地区計画の決定を機に、歩行者の安全性と新綱島駅への連絡路が確保され、バスなどが走りやすく、タクシーに乗車しやすい環境の改善が望まれるところです。

今回は綱島街道沿いで計画されている5つの再開発に関して、2016年5月現在の現状をまとめました。肝心な「綱島街道」自体の改善(拡幅)については、近くまとめて公開いたします。

※2016年8月追記:「相鉄・東急直通線」については、事業主の鉄道建設・運輸機構がこれまで示していた「2019年4月の開通予定」を「2022年度下期(10月以降)に開通」と3年半ほど延期すると2016年8月26日に公式発表しました。相鉄・東急直通線に関する最新の記事はこちらをご覧ください。

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