【沿線レポート】“百年に一度”とも言われる「渋谷」の一大再開発が進展するなか、その対象は明治神宮前〈原宿〉駅や代官山駅といった周辺部にまで広がりを見せています。
渋谷の再開発は、2013(平成25)年3月に東急東横線を地下化し、東京メトロ副都心線との相互直通運転を始めたことが契機でした。
地下駅化にあわせ、東急グループは駅の地上部にあたる東急文化会館の跡地に「渋谷ヒカリエ」(2012年4月開業、地上34階・地下4階建て)を建設。
渋谷ヒカリエをリーディングプロジェクト(先導的な役割)とし、地上駅の跡地などを持つ東急グループが中心となって駅周辺の再開発が怒涛ごとく進められていくことになります。

渋谷駅の周辺ではすでに多くの高層ビルが完成しているが、再開発はまだ続いている。画像手前が青山方面、右上の「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト(Shibuya Upper West Project)」が旧東急百貨店本店(2023年1月閉店)の跡地再開発(画像は東急グループ提供)
駅周辺における再開発の歴史と今後の計画を次にまとめてみました。
渋谷駅の周辺における主な再開発
<東横線の地下化以前>
- 2000年4月開業:渋谷マークシティ(地上25階・地下2階建て、銀座線車両基地の跡地など、営団=現東京メトロ・京王グループ・東急の共同開発)
- 2001年5月開業:セルリアンタワー(地上41階・地下6階建て、東急本社跡地)
<東横線の地下化直前>
- 2012年4月開業:渋谷ヒカリエ(地上34階・地下4階建て、東急文化会館跡地)[地図1]
<地下化後に完成した駅周辺の再開発>
- 2017年4月開業:渋谷キャスト(地上16階・地下2階建て、都の宮下町アパート跡地を活用)[地図2]
- 2018年9月開業:渋谷ブリッジ(地上3階建て、代官山寄り旧東横線の線路跡地を使った小規模再開発)[地図4]
- 2019年3月開業:渋谷ソラスタ(地上21階・地下1階建て、道玄坂エリアの南平台プロジェクト=東急関連のオフィスビル跡地)[地図5]
- 2019年10月開業:渋谷フクラス(地上19階・地下5階建て、駅西口の旧「東急プラザ渋谷」跡地)[地図6]
<東横線の地上駅跡などを活用>
- 2018年9月開業:渋谷ストリーム(地上35階・地下4階建て、地上駅と渋谷川に沿った線路跡地)[地図3]
- 2019年11月開業:渋谷スクランブルスクエア(地上47階・地下7階建て、東急・JR東日本・東京メトロの共同開発、※2期工事は2027年完成)[地図7]
<その他>
- 2020年7月開業:ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK、宮下公園等整備事業)(地上18階・地下2階建て商業施設・ホテルなど、区立宮下公園を活用した渋谷区・三井不動産による再開発)
<進行中の再開発計画>
- 2023年11月以降開業予定:渋谷サクラステージ(Shibuya Sakura Stage、渋谷駅桜丘口地区)(地上39階・地下4階建てなど、西口歩道橋デッキとつながるJR線路沿いの一帯約2万6000平方メートルにおよぶ大型再開発)[地図8][参考リンク]
- 2024年度上期開業予定:渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH、渋谷二丁目17地区)(地上23階・地下4階建て、渋谷ヒカリエに隣接する「シオノギ渋谷ビル」などの跡地約3460平方メートル)[地図9][参考リンク]
- 2027年度竣工予定:渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト(Shibuya Upper West Project)(地上36階・地下4階建て、東急百貨店本店跡)[参考PDF]
- 2027年度開業予定:渋谷スクランブルスクエア第2期(中央棟・西棟)(地上13階・地下5階建てなど、駅西口側、東急東横店などの跡)[参考PDF]
<東急関連以外の再開発計画>
- 2029年度竣工予定:シブヤ・リジェネレーション・プロジェクト(Shibuya REGENERATION Project、渋谷二丁目西地区)(渋谷ヒカリエの裏手一帯、東京建物・UR都市機構などによる1万8800平方メートルにおよぶ大型再開発)[参考PDF]
まさに「100年に一度」と呼ぶにふさわしい再開発ラッシュが2017(平成29)年以降に加速しており、日吉・綱島で言えば、プラウドシティ日吉(アピタ日吉店跡地など)や新綱島駅といったレベルの再開発計画が狭い範囲で繰り返されているようなイメージです。
大半のプロジェクトは“渋谷の大家”とも言われる東急グループが関与していますが、同グループ以外でも東京建物やUR都市機構などが「渋谷二丁目西地区」の大型再開発を計画しており、今後も数年間は渋谷駅の周辺で解体や建設工事が続くことになりそう。
さらに東急グループは、駅から2.5キロ以内を「広域渋谷圏」と定義して“Greater SHIBUYA(グレーター・シブヤ)2.0”と名付け、渋谷の次駅となる明治神宮前(原宿)や代官山でも新たなまちづくりに乗り出しました。
明治神宮前駅で2つの角に東急プラザ
注目は明治神宮前〈原宿〉駅で、相互直通運転を翌年に控えた2012(平成24)年4月にグループの東急不動産が神宮前交差点にあったブランド店「原宿GAP(ティーズ原宿=t’s harajuku)」の跡地を使い、旗艦店となる商業施設「東急プラザ表参道原宿」を開業し、東急グループが足場を築いていたエリアです。
東横線から直行できるようになった東京メトロ副都心線の駅前で営業を続けて10年超、今度は東急プラザの対角にあった老舗オフィスビルの再開発に乗り出します。
来年(2024年)春の開業に向けて建設が進む地上9階・地下3階建ての商業施設「東急プラザ原宿ハラカド」は、凹凸のガラス壁面と大胆に緑化した屋上部が特徴的な建物。上部を飲食フロアやフードコートとする一方、ビル全体をクリエイターが集う場所を志向し、クリエイターズマーケットフロアなどを設け、地下には交流拠点として「銭湯」もつくる予定だといいます。
なお、ハラカドの対面に位置する東急プラザ表参道原宿は今後、「東急プラザ表参道オモカド」との施設名に変更が予定されています。
副都心線のホームからも近い神宮前交差点で、二つの角を東急プラザの“ハラカド”と“オモカド”が占めることになり、渋谷の次駅でも東急グループが存在感を増すことになりそうです。
代官山駅前で「フォレストゲート」
一方、東横線沿線の代官山駅前では、国内初の外国人向け高級賃貸アパートだった1955(昭和30)年開業の「代官山東急アパート(代官山ラヴェリア)」(7階建て)の跡地を使い、東急不動産が「フォレストゲート代官山(Forestgate Daikanyama)」の建設を決定。工事が続けられていました。
フォレストゲート代官山は、賃貸住宅・シェアオフィス・商業施設で構成する「MAIN(メイン)棟」(地上10階・地下2階建て、57戸)と、サステナブルな生活体験を提供するという木造2階建ての「TENOHA(テノハ)棟」で構成され、今年10月下旬の開業に向けて工事が大詰めの段階を迎えています。
すでに再開発の動きがある明治神宮前〈原宿〉駅や代官山駅に加え、東急グループが定義した渋谷駅から2.5キロ以内の「広域渋谷圏~グレーター・シブヤ」では、中目黒や恵比寿、広尾、青山一丁目の付近までを含むことになっており、今後、どのような形で新たなまちづくりが誘発されていくのかにも注目が集まります。
【関連記事】
・渋谷駅の周辺が高層ビルだらけに、激変する街で「東横線」利用者には恩恵も(2019年4月15日)
【参考リンク】
・東急グループの渋谷まちづくり戦略「エンタテイメントSHIBUYA」「広域渋谷圏(GreaterSHIBUYA)構想」(渋谷周辺の再開発の全体像)
・広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)のまちづくり(東急不動産、東急プラザ原宿「ハラカド」やフォレストゲート代官山など)