(※2019年4月時点の記事です)来年(2020年)夏開催の「2020年東京オリンピック」を控え、渋谷駅の周辺が「高層ビル」だらけの街になりつつあります。日吉や綱島などに住む東急東横線の利用者にとって、切っても切れない関係にある“渋谷再開発”の現状をまとめました。
乗換の不便化も、旧駅跡を使った再開発には好機
今から6年ほど前まで、地上にあった頃の旧渋谷駅は、東京都心へ通う東横線利用者が必ず下車しなければならない終着駅。
そんな駅が2013年3月の地下化で東京メトロ・副都心線との相互乗り入れを開始し、今では日吉・綱島から原宿(明治神宮前)や新宿三丁目、池袋方面へ通う場合は、渋谷駅を“スルー”できる環境に変わりました。
渋谷駅で下車する必要のなくなった人にとっては「直通」という大きなメリットが得られた一方、渋谷へ通ったり、今も乗り換えをしなければならなかったりする人にとっては、新たな駅がJR山手線や東京メトロ銀座線から離れた場所に設けられたうえ、地下5階に置かれたホームから地上部までが遠くなるというデメリットが生じました。
そうした不便さも生まれる一方で、東急グループでは、地上にあった旧東横線渋谷駅のスペースが空いたことを好機ととらえ、「100年に一度」という周辺再開発プロジェクトに着手。「エンタテイメントシティSHIBUYAの実現を目指す」として、JR東日本や東京メトロも巻き込んだ巨大再開発が行われています。
ヒカリエ見下ろす47階建て「スクランブルスクエア」
東横線の渋谷駅利用者にもっとも関係するのが、「渋谷スクランブルスクエア(東棟)」と名付けられた高層ビルで、旧東横線渋谷駅の跡地などを使って建てられ、今年11月に開業を控えます。
現在の東横線渋谷駅の真上にあたる位置には、2012年に建てられた「渋谷ヒカリエ」(旧「東急文化会館」跡)があり、ここも地下4階・地上34階建ての渋谷を代表する大規模高層ビルですが、道路を挟んで真正面にあたるJR側で建てられている渋谷スクランブルスクエアはさらに巨大で、渋谷ヒカリエを見下ろすことさえ可能です。
高さは230メートル・地上47階(地下7階)建てにおよび、その高さから、最上階には日本最大級だという屋上展望空間「SHIBUYA SKY(シブヤスカイ)」が設置され、2020年東京大会時には観光スポットにもなりそう。
同ビルは、東急だけでなくJR東日本と東京メトロの3社が事業主体となっているのも特徴で、すでに下層階の一部は使用を始めており、東横線の「ヒカリエ改札口」近くからJR線との乗り換えルートとなる「14番出口」の一部として活用されています。
ビルの完成後、フロアの多くはオフィスとして使われますが、地下2階から14階までは商業施設となるため、東横線とJR線の乗り換え時に立ち寄るには、最適な環境といえそうです。
旧ホームや雑居ビル壊し、35階建て「ストリーム」
もう一つ、旧渋谷駅の跡地などを使って昨年9月にオープンしたのが「渋谷ストリーム」です。旧渋谷駅ホームの代官山駅寄りの一画にひしめいていた雑居ビルなどを、旧ホームや高架橋もろとも取り壊し、東急が地上35階・地下4階建ての高層ビルに生まれ変わらせました。
渋谷駅が地上にあった頃、空いている座席を見つけるため、前へ前へとホーム上を歩き、次第に細くなっていくホームに屋根が切れてしまったあたり。その付近に渋谷ストリームが設けられています。
渋谷ストリーム内の商業施設は1階から4階にとどめ、その他は「エクセルホテル東急」や、米グーグルの日本法人が入る予定のオフィスフロアなどとして利用。
東横線の利用者が頻繁に使えるという大型商業施設ではありませんが、明治通りの恵比寿寄りにあるオフィスへ通っている場合などは、ランチや夕食スポットとして活用できそう。
また、11月にオープンする渋谷スクランブルスクエアとは歩行者デッキで直結しているため、渋谷ヒカリエとあわせて3つのビルを回遊することも可能で、東横線利用者の渋谷駅における買物やレジャー環境は一段と充実することになります。
西口バスターミナル前「東急プラザ渋谷」は復活
“渋谷の大家”とも言われる東急グループが100年に一度と力を入れているだけあって、この程度で終わらないのが今回の再開発。
渋谷ヒカリエやスクランブルスクエアのある東口だけでなく、JR駅をはさんで反対側にあたる西口(南口交差点側)でも変化が起きています。
日吉や綱島などへの深夜急行バスも発車するバスターミナルの前にあった商業施設「東急プラザ渋谷」が2015年3月に閉店。跡地には「渋谷フクラス」と名付けた18階建ての複合ビルが建設されており、今年12月に開業を予定しています。
ビルの2階から8階と最上階などに「東急プラザ渋谷」を“復活”させるほか、1階の一部には空港リムジンバスも乗り入れるバスターミナルも新設されます。その他のオフィスフロアには、近くの高層ビル「セルリアンタワー」に本社を置くGMOインターネットグループが移転してくる予定。
多くのフロアが商業施設となる渋谷フクラスは、西口(南口)側の主要立ち寄りスポットとなりそうです。
建物59棟を一気に解体し、高層ビル2棟を新たに建設
東急プラザ渋谷が復活する形の西口(南口交差点側)から続く歩道橋で玉川通り(首都高速3号渋谷線)を渡った先、雑居ビルが立ち並んでいた「桜丘口(さくらがおかぐち)」(桜丘町のJR線路寄りの一画)と呼ばれるエリアでは、さらに大規模な再開発計画が進んでいます。
山手線・渋谷駅の恵比寿寄り沿って立ち並んでいた30棟以上の古い雑居ビルなどを、隣接するエリアも含めて計59棟の建物を今年12月までにすべて解体して更地化。
そこで生まれた跡地約2万6000平方メートルを使い、「地上39階・地下4階建て」と「地上29階・地下2階建て」など計3棟のビルを2023年度(2023年3月~2024年3月)に完成させる予定としています。
西口(南口)側の再開発エリアは、東口側にある東横線利用者からはもっとも遠い位置にあたりますが、“反対側”でも風景を一変させる動きが着々と進行中。
こうした動きは、渋谷の街と付き合っていくうえで、注目ポイントの一つです。
埼京線やメトロ銀座線はホーム移動で乗換便利に
大規模再開発にともない、東横線の利用者にとって最大のメリットとなりそうなのが、JR埼京線・湘南新宿ラインや東京メトロ銀座線との乗り換えが便利になることです。
2020年春には、これまで恵比寿寄りに離れて設けられていた「埼京線・湘南新宿ライン」のホームが、旧東横線の渋谷駅跡地を使う形で山手線の横に移設されることに加え、銀座線のホームも2020年3月までには渋谷ヒカリエと直結できる位置まで移す計画で工事が進んでおり、東横線からの乗り換え距離が短縮されます。
東横線の利用者にとって、渋谷の街が好きな人にはより魅力的で便利な街に、人の多さや不便な乗り換え環境を嫌って目黒線などへ通勤ルートを変えた人でも、もう一度振り返らざるを得ないかもしれないレベルの大変化が起こっている渋谷駅周辺。
日吉や綱島から東京都心への通勤・通学ルートを選択する時には、少なからず影響を与えることになりそうです。
渋谷駅周辺の主要ビルまとめ(2019年4月)
- 【東口】渋谷ヒカリエ(2012年オープン済み):東横線・副都心線ホームからもっとも近い34階建ての複合ビル。17階より上はオフィスフロアで、DeNA(ディーエヌエー)などが本社を置く
- 【東口】渋谷スクランブルスクエア(東棟)(2019年11月オープン予定):渋谷ヒカリエの真正面(JR駅側)に建つ地上47階建て超高層ビル。屋上に展望施設「SHIBUYA SKY」も
- 【東口】渋谷ストリーム(2018年9月オープン済み):旧渋谷駅の代官山寄りに建設した35階建てビル、商業施設は1~4階のみ。オフィスフロアには米グーグルの日本法人が入る
- 【西口(南口)】渋谷フクラス(2019年12月オープン予定):「東急プラザ渋谷」を建て替え復活させる形の18階建てビル。オフィスフロアにはGMOグループが近所から移転入居予定
【関連記事】
・東横線利用者は便利になる渋谷駅大工事、銀座線や埼京線がホーム移動で運休も(2018年4月13日、ホーム移設工事についても)
・<東横線渋谷駅>JRや銀座線との乗り換え不便を緩和へ、出口改良や動く歩道新設(2017年3月26日)
・<東横線と近接>激変する「横浜駅西口」、26階建ての駅ビルや超高層タワーも誕生へ(2018年11月29日、東横線の横浜駅付近でも再開発が進む)
【参考リンク】
・渋谷再開発情報サイト(東急電鉄)