新綱島駅の「地上駐輪場」が着工、池谷家の桃畑は縮小も“一部移植”で存続へ | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞

「新綱島駅」の地上駐輪場が着工、来年(2023年)3月の開業時期を目標に工事が進められています。

綱島東1丁目「池谷家住宅」付近に広がる生産緑地の一部を横浜市に寄贈し、新たに地上駐輪場(左)が作られることになった(12月1日)

綱島東1丁目「池谷家住宅」付近に広がる生産緑地の一部を横浜市に寄贈し、新たに地上駐輪場(左)が作られることになった(12月1日)

横浜市都市整備局は、来年3月の東急新横浜線の開業時期を目標とし、新綱島駅の再開発エリア南東側に新設予定の地上部約100台分の平面駐輪場の工事を今月12月1日から開始。

駐輪場の需要増大が予想されることから、市から土地所有者に打診、土地の寄贈を受け、来年3月末までの完成を目指し工事をおこなっています。

寄贈される予定の土地は、新綱島駅の東側に位置する旧家「池谷(いけのや)家」(綱島東1)が所有する生産緑地と、市道を挟んで隣接する8台分の駐車場用地

工事前の「桃畑」。南東側の約4メートル幅、約20メートルにわたり市に寄贈されることに(11月27日)

工事前の「桃畑」。南東側の約4メートル幅、約20メートルにわたり市に寄贈されることに(11月27日)

通常、生産緑地は一定期間の利用制限があるといいますが、「寄贈を受け、公共性が高い施設として駐輪場としての土地利用が可能となります」と横浜市綱島駅東口周辺開発事務所(綱島西1)の担当者。

新綱島駅の駐輪場は当初、地下駅と道路(地上)の間にある地下空間を使って約1000台分を設ける計画となっていましたが、駅の北東側に、地下空間を使った機械式駐輪場システムを採用し500台分を確保、残る500台分は綱島街道を挟み綱島駅東口側のエリアに設置することになっています。

しかし機械式駐輪場の完成が新駅開業時には間に合わない可能性が高まっている上に、機械式では収容できない特殊な自転車を置くことができる「平面式」の工事を急ぐことになったと、同開発事務所の担当者は説明します。

新駐輪場は100台収容、定期利用を予定

寄贈予定地に植えられた「イチョウ」の木との別れを惜しむ池谷さん(11月27日)

寄贈予定地に植えられた「イチョウ」の木との別れを惜しむ池谷さん(11月27日)

来年(2023年)3月末までの完成を目指しているという、今回着工した新しい「地上駐輪場」用地の広さは併せて約270平方メートル

機械などは設置せず、平面での利用を想定しており、約100台を収納することを想定。「定期利用」用の駐輪場として、完成後は横浜市道路局が管理・運営をおこなうといます。

工事がスタートした12月1日以降、生産緑地側の樹木の伐採(ばっさい)からおこなわれ、更地にした後、平面駐輪場の建設に移る予定。

桃畑の南側、鶴見川寄りの掘削は、駐輪場予定地の延長として、擁壁(ようへき)をL字に作るために工事をおこなっているとのことで、「最終的な駐輪場の完成・オープン時期は未定」(同担当者)とのことです。

桃の木“5本”移植し「桃」栽培は継続へ

「桃畑」と公道を挟み隣接する8台分の駐車場用地も「地上駐輪場」用地として寄贈される(12月1日)

「桃畑」と公道を挟み隣接する8台分の駐車場用地も「地上駐輪場」用地として寄贈される(12月1日)

土地を寄贈した池谷家の第16代当主・池谷道義さんは、「(池谷家の)地域貢献として寄贈することを決めました」と、今回の市からの提案を受け入れた“決意”について説明します。

綱島の歴史を伝える「桃畑」は縮小するも継続する予定だといい、「今回の工事に伴い、桃の古木を3本伐採、5本は移植しました」と、まずは桃の木を残すための対応は優先的におこなったといいます。

今回の工事で、木々の伐採に名残惜しさを感じたという池谷さん。

老朽化した3本は伐採したものの、残る5本は北側の「桃畑」に移植された(12月5日)

老朽化した3本は伐採したものの、残る5本は北側の「桃畑」に移植された(12月5日)

隣接する、かつてあったゴルフ練習場「綱島ピーチゴルフセンター」(2017年2月閉店)跡地商業施設の開発計画も、当初計画していたものより「原料高、物価高などの影響を受け、事業内容を見直す方向で進めています」と、こちらも規模も縮小しての開発になる可能性が生じていることを明かします。

「池谷家の皆さんには、かねてより再開発事業へのご尽力や多大なる地域貢献をいただいています」と市の開発事務所担当者。

規模は縮小しても「桃畑を残していくことができれば」と語る池谷さん(12月1日)

規模は縮小しても「桃畑を残していくことができれば」と語る池谷さん(12月1日)

池谷さんは「これだけ工事が進み畑の脇まで重機や人が入り土を動かしたことが、今後の農作物(桃) の育成、収穫に影響が出るのではないかという不安はあります」と、工事の影響については心配が尽きないと語ります。

まだ全体像が見えにくい「新綱島駅」完成後のイメージの中、そして「綱島の桃」古民家の歴史を、どのように“地域の資産”として継承していくのか。

一人ひとりの「未来志向」の上に事業が成り立ち、また土地への想いを何層にも重ねてのそれぞれの事業が進む中、これから先の歴史的資産や自然環境保全の在り方についても、より大きな議論が必要な時期に差し掛かっているといえそうです。

【関連記事】

新綱島駅の駐輪場、地下に自動収容する「機械式」で500台超を確保(2022年8月29日)※新駅・綱島駅東口再開発エリアでの「地下駐輪場」予定地と詳細など

新綱島駅の工事機材でライトアップ、綱島の歴史伝える「桃の花」が満開に(2022年3月29日)

新綱島駅近くの市道「切り替え」に注意、鶴見川沿い工事プラント跡は商業施設に(2022年4月13日)※当初計画より事業を縮小しての開発をおこなう予定とのこと

<ST線フォーラムレポ3>四度目の節目を迎えた綱島の未来像~綱島・池谷さん(2022年8月24日)※「相鉄・東急直通線フォーラム」で地域の歴史やまちづくりへの想いを披露した

【参考リンク】

新綱島駅自転車駐車場整備事業 ※地下駐輪場について掲載


カテゴリ別記事一覧