アピタ跡地は巨大再開発に、タワーマンションと学校新設という噂の真実味を探る

横浜日吉新聞
2015年11月29日の閉店が予定されている「アピタ日吉店」

2015年11月29日での閉店が予定されている「アピタ日吉店」

ご注意!こちらは2015年9月21日公開の記事です。最新情報はこちらをご覧ください】2015年11月29日とされる「アピタ日吉店」の閉店日まで2カ月半を切りました。跡地については、神奈川新聞の報道で野村不動産が取得し、近隣の「綱島サスティナブル・スマートタウン(綱島SST)」(綱島東4)と同様にエコな仕組みを取り入れたマンションを建てる意向があると言われています。一方、地元では跡地に「タワーマンション」と「学校」が建つのではないかという噂が飛び交っています。その背景と実現度合いを探ってみました。

地元の有力者によると、アピタ日吉店の土地だけでなく、隣接するNRI野村総合研究所(野村総研)と損保ジャパン日本興亜損保の土地も合わせて「3つが一体化して再開発されるのは、ほぼ間違いない」との見方を示しています。

その見方が正しければ、土地の推定面積は5万100平方メートルで、東京ドームを1つ建てても余るくらいの規模となり、パナソニック工場跡地より巨大な再開発地が生まれることになります。

そこへタワーマンションと学校が建てられるのではないか、との噂は、次のような背景やストーリーに基づいているようです。

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「日吉ロイヤルマンション」が5つ入る規模の土地

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綱島街道を挟んでアピタの真正面にある「日吉ロイヤルマンション」

まずは「タワーマンション」です。
その定義を17階建て以上のマンションという形で考えると、可能性は十分にあるといえます。

たとえば、アピタ日吉店の綱島街道を挟んだ正面には、1988年に建てられた「日吉ロイヤルマンション」があります。ここは258戸の14階建て大型マンションですが、建物の面積は3260平方メートルで、駐車場や公園などを含めた総敷地面積は約1万平方メートルとされており、もし、アピタなど3つの跡地に建てるとすれば、5つ分が建設できることになります。

また、武蔵小杉駅近くにある59階建ての「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」(794戸)は、日本有数の超高層マンションですが、敷地面積は9312平方メートルです。アピタ跡地は、このクラスのタワーマンションを2~3棟建てても余るくらいの規模があります。

アピタ跡地は、タワーマンションを建てない、という選択肢を考えづらいほどの規模を持つ再開発地であることから、この噂が出ているようです。

タワーマンション建設と引き換えに学校を新設する?

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黄色い点線の部分が損保ジャパン日本興亜とNRI野村総研の敷地。「プラウド日吉」は野村不動産が工場跡地に建設中の大型マンション

そして「学校」の登場です。
高層マンションは、敷地いっぱいに建てられるわけではなく、土地の規模に応じて建物の高さや、緑化しなければならない面積の割合が決められています。また、日照が遮られるなどの環境変化が起こりうることから、地域住民の理解が欠かせません。

もし、学校を建てるとなると、表立った反対の声を小さくすることができるでしょうし、一般的に公立の学校校舎は高層の建物になることはありません。また、グラウンドも付随してきます。
この低い校舎とグラウンドの「空中権」をマンション側に譲ることで、マンションは高層化でき、学校側は校舎の建設費用に充てられる可能性があります

空中権は、東京駅丸の内駅舎の改築工事の際にも話題となりました。東京駅は高層化ができるだけの土地はあるのですが、あえて建物を低く抑えているため、この「高層化できる権利(空中権)」を周辺のビルに売り、その資金が赤レンガの駅舎建て替え費の大きな足しになったといわれています。

アピタ跡地でも、市が学校を新設する代わりに、タワーマンションを建てることを認める、そんな構想を描いているのではないか――といった想像から「タワーマンション+学校建設」の噂が広まっているようです。

人口増で未だ2階建てプレハブが不可欠な地元小学校

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北綱島小学校は教室不足でグラウンドに2階建てのプレハブ校舎が建てられている(2015年9月16日撮影)

学校建設の噂については、もう一つの背景もあります。
綱島東4丁目にあったパナソニックの工場が閉鎖する際、綱島地区の住民が約9000名の署名とともに「教育・文化・福祉関連の施設」を建設するよう横浜市に要望書を出しています。

綱島駅周辺から箕輪町の近く(綱島西や綱島東)にかけては、近年はマンションや住宅の新設が相次いでおり、特に小学校の受け入れが追い付いていない状況です。

この地区にある北綱島小学校(綱島西5)と綱島東小学校(綱島東3)では、今もグラウンド内に2階建てのプレハブ校舎が建っているような状況です。道路一本隔てて綱島と隣接する日吉南小学校(日吉本町4)も最近になって増築が行われています。

子どもの人口減が叫ばれ、横浜市内でさえ公立学校の統廃合が議論されるなか、綱島や日吉周辺ではベビーブーム時代のようなプレハブ校舎を建てなければならないほど、人口が増えているのです。

横浜市の最高意思決定機関である「市会」でもこんな見方が示されています。

「平成25(2013)年5月時点での義務教育人口推計では、平成25年と平成31(2019)年の児童数の比較で、まず綱島東小学校は588人から703人で115人の増、日吉台小学校は616人から643人で27人の増となっています。両校の通学区域内の事業所跡地等に住宅が建設された場合には、この児童数はさらにふえる可能性があると考えます」(2014年3月7日、予算第一特別委員会で大山しょうじ議員に対する横浜市教育委員会・佐竹広則施設部長の答弁)

横浜市側でも綱島や日吉で小学校が足りない状況を認識してはいるのですが、パナソニック跡地の開発では、市は米アップルの誘致こそ行ったものの、学校などの公共施設を建てることはなく、綱島住民の要望に対しては「ほぼゼロ回答」という結果となっています。

住民要望にゼロ回答だった綱島SST「今度はさすがに」

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綱島駅東口の綱島街道付近では2019年4月の開業を予定する新綱島駅の建設関連工事が進む。右側は綱島温泉「東京園」の建物。地下駅の上部には28階建ての複合ビル(商業・公共施設や240戸の住宅)とバスターミナルなどが整備される予定(2015年8月29日撮影)

この先、東急線と相鉄線との相互乗り入れにともない、新綱島駅の開業が2019年4月に控えています。利便性が高まる綱島から日吉にかけての一帯は、さらなる人口増加が予想されています。

地下駅となる新綱島駅の上部には28階建ての複合ビルが作られ、そこだけでも240戸の共同住宅が整備されるという計画が最近になって市から明らかにされました。

また、綱島東や箕輪町の周辺は、工業地帯として栄えた土地であり、戦後から高度経済成長期にかけて進出した企業や工場が数多くあります。現在のアピタ日吉店などが建っている場所も工場跡地でした。

近年は企業や工場の敷地を売却して、マンション・住宅に変えるケースが相次いでおり、今後も止まることは考えづらい状況です

そうした流れを考えると、このまま“放置”しておけば、いずれ公立学校がパンクしかねません

住民の間に「パナソニック跡地には公共施設をほとんど作らなかった分、今度のアピタ跡地では、さすがに作るのではないか」との期待が込められ、学校建設という噂になっているとみられます。

日大が小学校を新設し「小中高一貫教育」構想の噂

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日大中学・高校のグラウンド側から見たNRI野村総研のデータセンター(左)と損保ジャパン日本興亜の建物。中央遠くに見えるのは「日吉ロイヤルマンション」

ただ、同じ学校でも気になるのは、アピタなど3つの敷地に隣接する日大中学・高校の動きです。

アピタやNRI野村総研、損保ジャパン日本興亜は、戦前からこの地にあった岡本工作機械製作所の跡地を使い、30~40年前に建てられたものですが、日大中学・高校は1947(昭和22)年から一貫してこの場所で学校運営を続けています

現在、同校の生徒数は中学・高校合わせて2200人以上にのぼります。校舎の新設や拡張を行ってきたものの、余裕があるとはいえず、隣接する土地を確保したい、との思いがあっても不思議ではありません。

また、日本大学が今年2015年4月に藤沢市で付属小学校を新設し、小中高の一貫教育を行い始めたこともあり、「アピタ跡地に付属小学校を作り、日吉でも小中高の一貫校とするのではないか」との噂も多く聞こえてきます

「損保ジャパン日本興亜の土地は、まだ他社に売っていないと聞いている」(地元関係者)との見方もあり、開発を主導するとみられる野村不動産ではなく、日大が取得する可能性がゼロとはいえません。

アピタのライバルとなりうる商業施設の建設は考えづらい

パナソニック跡地では「アピタ横浜綱島店」の建設に向け、既に土地の調査が行われている

パナソニック跡地では「アピタ横浜綱島店」の建設に向け、既に今年4~5月に土地調査が行われている

タワーマンションや学校ではなく、大型商業施設が建てられる可能性はないのでしょうか。

パナソニック跡地でも当初、大型ショッピングセンターなどの商業施設を誘致するのではないか、との噂や期待感がかなり広まっていました。

ある地元有力者は「ユニー(アピタ)は日吉店を閉店しても、近くに横浜綱島店を新しく作って営業を続けるのだから、自らのライバルを生み出するような再開発計画に手を貸すとは思えない」と指摘します。

そう考えると、マンションや近隣住民が日常の簡単な買物ができる程度のスーパーが作られるかもしれませんが、アピタ横浜綱島店の”ライバル”となるような大型ショッピングセンターなどの商業施設が建てられる可能性は、今のところ低いといえそうです。

アピタ日吉店の近隣住民にとっては、現在より買物事情が便利になるかどうかは微妙な状況です。

再開発で何を「誘導」するのか、横浜市の役割が重要に

パナソニック跡地とアピタ日吉店の位置図

パナソニック跡地(綱島SST)とアピタ日吉店の位置図、中間地点にある「プラウド日吉」も含め、すべて野村不動産が関わっている

一つ言えるのは、さまざまな噂が飛び交っているものの、情報として公開されているのは、アピタ日吉店が11月下旬で閉店するということだけです

「(再開発について)市や野村不動産から具体的な話は何も聞いていないし、もし方向性が決まっていたとしても正式発表までは言うはずがない。パナソニック跡地の時も、新聞にスクープされてから慌てて市の担当者が説明に来たくらいだった」と、ある地元関係者は明かします。

パナソニック跡地の開発では、今のアピタ跡地のように噂話ばかりが飛び交っている頃、横浜市会でも何度か質問されており、興味深い記録が残っています。

工場が撤退する直前の2011年2月23日、綱島住民から要望書が出ていることに関連し、市会の酒井誠議員が今後の対応を市側に質問した時の答弁です。

「先ほども言いましたように、土地利用の転換に際しては周辺に大変な影響を起こすということでございますので、まずは周辺の環境に配慮した計画にしていただくため、壁面後退ですとか緑化などを誘導してまいりたいと思いますし、次に、地域のまちづくりに貢献する計画としていただくように、広場や通路の整備、子育て支援施設などの導入を誘導してまいりたいと思っております。また、そのために市や地域の貢献につながるように誘導していくということがまず必要になるだろうと思っております」(櫻井文男都市整備局長=当時)

この答弁を聞く限り、住民からの要望書が出された2011年2月時点で、市は用地を取得して学校などの公共施設を建設する考えはなかったようで、パナソニック側に対しては「広場や通路の整備、子育て支援施設などの導入を誘導」することだけが述べられています。

そして3年後の今年(2015年)3月、綱島SSTの開発計画が公式発表された際には、「広場や通路の整備」も「子育て支援施設」(保育所)もきっちりと計画に盛り込まれていました

民間企業が主導する再開発とはいえ、アピタ跡地はパナソニック跡地以上の巨大規模となる可能性があります。横浜市が適切に調整することはもちろん、野村不動産などの開発主体に何を「誘導」していくのかが今後の大きな焦点となりそうです。

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