30年ぶり「箱根駅伝」を目指す慶應、日吉で活動の競走部が支援呼びかけ | 横浜日吉新聞

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30年ぶりの箱根出場に向け日吉で奮闘中です。

2024年正月に第100回を迎える「箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)」の本大会出場を目指す慶應義塾大学の「競走部」は、クラウドファンディングを通じて不足する活動資金の支援を広く呼びかけています。(※2023年10月14日追記:クラウドファンディング後の最新記事はこちらをご覧ください

「箱根駅伝」の公式サイト、近年は正月に慶應チームの姿を見ることはほとんどなくなったが、慶應は1920(大正9)年の第1回大会から出場しており、これまでに出場30回、総合優勝1回の戦績を持つ古豪

正月の風物詩となっている箱根駅伝は、今から1世紀以上前の1920(大正9)年に当時の東京高等師範学校(現在の筑波大学)と明治大学、早稲田大学、慶應大学の4校で始めたリレー形式の長距離走

日本で最初の五輪選手となったマラソンの金栗四三(かなくりしそう、東京高等師範)が企画したことでも知られます。

創始大学の一角となった慶應は大正期から戦前にかけて、1932(昭和7)年の第13回大会で総合優勝を果たすなど頻繁に上位に入る活躍を見せていました。

慶應大学の「競走部」は創部106年の歴史を持ち、約150人の部員が短距離や中距離、長距離、跳躍(ちょうやく)、投擲(とうてき)など各「ブロック」ごとに分かれ活動する。「短短ブロック」には男子100メートル日本記録保持者である山縣亮太選手も所属した。箱根駅伝を目指す「長距離ブロック」は約30人が所属。日吉キャンパス内に拠点を置き、陸上競技場で練習を行っていることが多い(同部の公式サイトより)

しかし戦後は日本大学や中央大学、早稲田大学、法政大学など初期のライバル勢に押され、東洋大学や日本体育大学、専修大学といった有力校も力を伸ばすなかで、慶應は本大会へ出場しても下位に沈む年が増え、次第に予選会を突破することさえ難しくなります。

本大会への出場は記念大会として出場枠が増やされた1994(平成6)年の第70回大会以来、30年近くにわたって遠ざかっている状況です。

創部100年を機に強化プロジェクト

そんな現状を変えようと2017(平成29)年に立ち上がったのが「慶應箱根駅伝プロジェクト」で、競走部の創部100年を機に実績豊富な保科光作コーチ(日本体育大学出身、日清食品グループ陸上競技部元コーチ)を招くなど本格的な強化を開始。

古豪復活へ向け2017年に立ち上がった「慶應箱根駅伝プロジェクト」の公式サイト

学内では駅伝競技のあり方や強化方法などを多面的に研究する「ランニングデザイン・ラボ」を設立し、同部OBでもある蟹江憲史教授(政策・メディア研究科)らが学術面から同部を支え、日吉に拠点を置く「スポーツ医学研究センター」は選手のメディカル面からサポートする体制を整えます。

現在はまだ予選会を突破するまでにはいたっていないものの、出場権を得られなかった大学の優秀選手で構成される「関東学生連合チーム」に3年連続で選手が選ばれており、箱根駅伝で慶應の名を復活させる道筋を付けつつあります。

資金支援やスポーツ推薦なき環境

ただ、同部が「大学当局からの資金支援もない、スポーツ推薦もない『雑草集団』」と自らを紹介するように、慶應では部活動に対して大学をあげての特別な支援を行うことは一般的ではなく、スポーツに秀でた有力高校生を全国から集められるような制度もありません。

スポーツ推薦のない慶應大学の競走部には、高校時代に駅伝強豪校で鍛え上げられたエリート選手はほとんどいないという(「慶應箱根駅伝プロジェクト」のクラウドファンディングページより)

たとえば、首都圏の大学スポーツ界で中心的な存在を成す野球部やラグビー部であってもOBらが中心となって別に一般社団法人を設けて地道な支援を行うなど、関係者が部活動の資金面を支える姿が見られます。

戦力強化につながる高校生をスカウトする際も、監督やコーチ陣は競技のことよりも、まずは入学試験を突破するためのアドバイスを行うことが最重要となっており、選手を集める道のりも平坦とはいえません。

箱根出場へ活動資金を幅広く募る

部活動の“自主独立”が求められる慶應のカルチャーは、100年以上の伝統を持つ競走部であっても例外はなく、寄付を中心に強化資金を集めているものの、他の有力校のように十分に確保するまでにはいたっていないといいます。

同部では昨年、初めてクラウドファンディングを通じて寄付金の募集を行っており、選手の強化につなげる夏合宿を実現させました。

「慶應箱根駅伝プロジェクト」のクラウドファンディングページ、活動資金集めには苦労しているという。なお、クラウドファンディング基盤(プラットフォーム)の草分け的な存在である「READYFOR(レディーフォー)」は、創業者が慶應大学の出身という縁もあって、今年から慶應義塾と業務提携が始まり、体育会や学生団体、研究室などが利用しやすくなっている

今年も強化合宿を中心とした活動費720万円を募っており、7月9日現在で340人から664万円を集めていますが、目標額にはまだ達していない状況です。

「今年度のチームは、主力選手たちが箱根駅伝出場校のメンバーとも遜色のない力をつけてきており、課題となっている中間層の底上げができれば、今年度の第100回記念大会で30年ぶりの箱根駅伝本選出場に大きく近づけると考えています」と助監督の細萱智大さんは話します。

2024年正月に行われる箱根駅伝本選への出場校を決める今年の予選会(10月14日実施)は、第100回記念大会として例年より3校多い13校(シード校10校を含め計23校が本選出場)に出場枠が広がりました。

慶應は10月に開かれる予選会を勝ち抜き、30年ぶりの箱根駅伝出場を目指す(昨年の予選会の様子、クラウドファンディングページより)

箱根駅伝の第1回大会に出場した103年前にはまだなかった日吉キャンパスに拠点を置き、古豪復活へ闘志を燃やす競走部の「無名の雑草集団」(細萱さん)を30年ぶりの箱根路へ送り出し、日吉から新たな歴史を刻むことはできるのでしょうか。

【関連記事】

慶應競走部が「箱根駅伝」予選突破に挑戦、地域貢献イベントも開催へ(2023年10月14日)※リンク追記

【参考リンク】

「みなさまと、ともに箱根へ|慶應箱根駅伝プロジェクト」(慶應義塾体育会競走部、クラウドファンディング「READYFOR(レディーフォー)」)

慶應箱根駅伝プロジェクト(箱根駅伝への出場に向けた取り組み状況など)

箱根駅伝公式サイト「歴代優勝校」の紹介(第1回大会から第98回大会までの全成績を掲載、第13回大会の優勝など戦前を中心に慶應が活躍)

【新 慶應義塾豆百科】箱根駅伝と慶應義塾(2021年2月27日、三田評論ONLINE、箱根駅伝と慶應大学の歴史について)


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