【レポート】東横線の利用者なら少しは聞いたことがあるかもしれない「飯能(はんのう)」という駅名。日吉や綱島からも電車一本で行ける埼玉県の街に今月(2019年3月)16日、アニメで知られる北欧の童話「ムーミン」の世界を伝える「ムーミンバレーパーク」がオープンしました。少し遠いけれど日吉や綱島の“沿線”ともいえる場所に出掛けてみました。

飯能市では漫画・アニメ作品「ヤマノススメ」(しろ/アース・スター エンターテイメント)と連携した三つ折りのマップを作成し、飯能駅から作品の舞台となった天覧山を経由してメッツァへいたる約2時間40分のハイキングコースを提案(「ここなの飯能大冒険マップ(第2弾)」より)
時おり、東横線の電車の行先として聞くことがある飯能は、埼玉県の所沢の先にある人口約8万人の「市」で、登山をテーマとした漫画・アニメ「ヤマノススメ」の舞台にもなった「天覧山」のように、豊かな自然が残る首都圏近郊の街として知られます。
一方、今では日中1時間に1本の割合で「元町・中華街」まで直通する列車が運転されるなど、池袋駅まで約50分という交通環境もあり、昭和末期から山を切り拓いて開発された巨大な住宅地を中心に首都圏のベッドタウンの役割も担っています。
そんな飯能市内で、かつてレクリエーション施設として使われていた「宮沢湖」という人造湖畔に市が新たに誘致したのが、北欧をテーマとした「メッツァ」(metsa=フィンランド語で「森」)と名付けられた複合施設。
メッツァのメイン施設が、北欧フィンランドの作家による童話「ムーミン」の世界を表現した「ムーミンバレーパーク」で、フィンランド以外では初の進出だといいます。湖を中心に東京ドーム約4つ分という大きさを持つ森のなかで“ムーミンの世界”を感じられるようになっています。
日吉駅や綱島駅から東京メトロ副都心線を経由して、西武池袋線へ直通する電車で約1時間半。横浜や東京都心にはあまりない自然中心の複合施設である「メッツァ」と「ムーミンバレーパーク」の様子を写真でご紹介します。
(※)写真はクリックで拡大します

日吉駅や綱島駅からの急行は、地下鉄・副都心線内や西武線内に入ると各駅停車に変わって急に時間がかかることがあるため、武蔵小杉や自由が丘、渋谷などの特急停車駅で「Fライナー」(東横線内は「特急」で走る各線の最速列車)に乗り換えたほうが早く着けるケースが多くあります

Fライナーなどへの乗り継ぎが良ければ約1時間半で飯能駅に到着、日吉駅・綱島駅からの運賃は930円(ICカード916円)です。なお、元町・中華街からの観光列車「Sトレイン」(西武秩父行=写真)も途中の飯能駅に停車するので、別途指定席料金はかかりますが、自由が丘駅や渋谷駅などで乗り換えれば使えそうです(関連記事はこちら)

フィンランド語で「森」を意味する「メッツァ」内にある「ムーミンバレーパーク」へは飯能駅前から直行バスで約13分(運賃200円)の距離。バスは土休日(日中)が1時間あたり7~10本、平日(日中)は4~5本の割合で運転中です。ハイキングとして徒歩でアクセスする方法もあります

メッツァと「ムーミンバレーパーク」の開園は朝10時から。オープン間もない休日だったこともあり、開場1時間ほど前にはかなりの行列となっていましたが、園内が広すぎるせいか、それとも他のテーマパークで慣らされたためか、あまり気にはなりませんでした

メッツァの一番奥まった部分にあるのが「ムーミンバレーパーク」。入場料は中学生以上1500円、4歳以上小学生まで1000円と比較的安価ですが、パーク内のレストランやグッズは“テーマパーク価格”に設定されており、さらに4種類の有料アトラクションには別途料金(700円~1500円)も必要

こちらがメインエリアの“ムーミン谷”。ランドマーク的な青い「ムーミン屋敷」内を見学するには、時間指定ガイドツアー(1000円)への参加が必要。開門と同時に当日券券売機へ向かって“ダッシュ”して入手している人が多く、すぐに売り切れていました。
左側の「コケムス」(フィンランド語で「体験」の意)と名付けられた建物が園内のメインといえる施設で、ムーミン博物館的な展示が行われているほか、レストランや大型ショップもここに置かれています

こちらは有料アトラクションの「リトルミイのプレイスポット」(700円、いたずら好きなキャラクター「ちびのミイ」が主人公の約10分の小劇)と「海のオーケストラ号」(写真右奥、1000円、映像を使った10分間の冒険アトラクション)。時間指定の当日券を入手するためにどちらも長い列ができていました

パーク内で食事のできる場所はコケムス内のメインレストラン「ムーミン谷の食堂」(税別1200円~1500円程度の価格帯)と出入口付近の「パンケーキレストランLettula (レットゥラ)」(税別1600円~2500円程度の価格帯)の2カ所。写真のパンケーキレストランは湖が見えるテラス席も。なお、再入場が可能なので、隣接する「メッツァ」内の飲食店街まで歩けば、多数の店から食事内容を選べます

「パンケーキレストランLettula (レットゥラ)」では北欧色の濃いメニューが特徴で、デザート的な内容とグリル的な内容が混在し、料理内容も想像しづらいので日本人には若干戸惑うことも。価格帯も高めですが、写真の「ほうれん草とベーコンのLettu(レットゥラ)」(税別1500円)など、日本であまり目にしない料理がメインなので、試してみる価値はあるかもしれません

左に映る灯台付近が「おさしび山」と名付けられた一番奥のエリア。自然が多いのが特徴です。なお、メッツァ内では「カヌー」のレンタル(中学生以上1時間2000円)も行われていて、湖上からパークを眺めることもできます

メッツァ(ムーミンバレーパーク)からの直通路線バスはJRの東飯能駅も結んでおり(日中は土休日1時間1~3本、平日1~2本運転)、JR東飯能駅から八高線・川越線に乗れば30分ほどで観光地の川越まで行くこともできます
【コラム】ムーミンに「ディズニー」を期待してはいけない
日本ではアニメで知られる有名作品「ムーミン」の“テーマパーク”が新たに生まれたということで、首都圏で話題となっている「ムーミンバレーパーク」ですが、長年親しまれている「東京ディズニーランド(TDL)」や「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」のような世界的巨大テーマパークをイメージして出掛けると、困惑したり落胆したりするはずです。
両テーマパークのように、誰もが楽しめるエンタテイメントとして緻密に計算されて作られた巨大施設とは違い、現時点でムーミンバレーパークには大掛かりなアトラクションはなく、客に称賛されるようなスタッフのホスピタリティも、独自の世界観で来園者を没入させるような仕掛けも見られませんでした。
今はオープン当初の珍しさで大量に来場する客をさばくのに精一杯という様子で、これから徐々に進化させていきたい考えなのか、押すだけで簡単に答えられる満足度の回答機が園内各所に置いてありました。
そもそも「ムーミン」は童話の世界。洗練されたエンタテイメントを求めるものではなく、園内の自然や館内の展示物を楽しみながら、のんびりと物語の世界を空想するというのが最適な過ごし方なのでしょう。
森と湖に囲まれた自然の豊かさは、この施設ならではの魅力。市が誘致したこともあって、メッツァ自体に無料エリアを多く設け、テーマパークに入らなくても楽しめる点は好感が持てます。
ただ、混雑している今は、メッツァの魅力である自然を満喫しづらい可能性も高いので、SNSに写真をアップできればいいや、という気持ちで行くことをおすすめします。園内には“フォトジェニック(写真映えする)”なスポットが数多く作られています。
なお、園内の一部レストランや各種キャラクターグッズの価格帯は、“世界的テーマパーク”のような水準に設定されているので、子ども連れで行った際には、予算面で少しばかり「覚悟」が求められるかもしれません。(K)
【関連記事】
・<レポート>東横線から秩父への観光列車「Sトレイン」、子連れ旅行にも使えそう(2017年8月12日、飯能駅に停車)
【参考リンク】