地下鉄ブルーラインが小田急「新百合ヶ丘」へ延伸を発表、日吉にもプラス | 横浜日吉新聞

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現在は終点の「あざみ野」(東急田園都市線=横浜市青葉区)から6キロほど先の「新百合丘」(小田急線=川崎市麻生区)まで地下鉄ブルーラインを延伸する計画(横浜市・川崎市の発表資料より)

【2019年1月時点の記事です】今から11年後の2030年、横浜市営地下鉄が小田急線の駅につながります。横浜市と川崎市は共同で地下鉄ブルーラインを青葉区のあざみ野駅から川崎市麻生(あさお)区の新百合ヶ丘駅(小田急線)へ延伸する計画を今月(2019年1月)23日に正式発表しました。日吉や高田などのグリーンライン沿線からはセンター北駅での乗り換えにより、小田急線沿線へのアクセスが向上することになります。

両市の発表によると、現在はブルーラインの終着駅となっているあざみ野駅から、6キロほど先にある新百合ヶ丘駅の南口まで延伸する内容で、途中には「青葉区嶮山(けんざん)付近(※あざみ野ガーデンズ付近)」「青葉区すすき野付近」「麻生区の王禅寺または白山付近」の3カ所に駅を設ける計画です。

地下鉄が建設される可能性のある道路では、多くの路線バスが行き交っている(あざみ野駅近く)

地下鉄が延伸する青葉区と麻生区の一帯は、「すすき野団地」(青葉区)や隣接する「虹ケ丘団地」(麻生区)といった大型の団地群をはじめ、「美しが丘西」(青葉区)や「王禅寺(おうぜんじ)」(麻生区)などの一戸建て住宅地が“市境”を感じさせない形で連なっています。

現在はマイカーをはじめ、新百合ヶ丘などの小田急沿線駅と、あざみ野や「たまプラーザ」などの東急田園都市線の駅を結ぶ路線バスが主要な交通機関となっています。

あざみ野駅から新百合ヶ丘駅までは、路線バスでは30分程度を要しますが地下鉄の開通により約10分で結ばれるようになり、両市では1日8万人程度の利用者を見込みます。

横浜市営地下鉄として初めて川崎市内である麻生区内へ乗り入れることになるため、建設費として必要な1690億円~1760億円は、国や借入金などを除き、両市が「1対1」の割合で負担するとのことです。

川崎市麻生区側では「3つのルート」案を提示

麻生区側では3つのルートを提示しており、「東側(ヨネッティー王禅寺)ルート」を有力案としている(横浜市・川崎市の発表資料より)

両市の計画では、あざみ野駅から嶮山付近(青葉区のあざみ野ガーデンズ付近)を通って、すすき野付近(青葉区の麻生区市境付近)へ至るという青葉区側のルートは決まっていますが、麻生区側は決めかねている状態で、「西側(白山)ルート」「中央(王禅寺公園)ルート」「東側(ヨネッティー王禅寺)ルート」の3案を提示

このなかで両市は、3つ目の「東側ルート」を有力候補として明記しました。

尻手黒川道路沿いにある「田園調布学園大学」には構内も含め多くのバス路線が集まる。また、至近には川崎市のプール・老人施設「ヨネッティー王禅寺」も置かれている

同ルート上付近には、約1100人の学生が所属する「田園調布学園大学(旧調布学園短期大学)」に加え、大学の目の前といえる位置には、ごみ処理センターの余熱を利用した川崎市のプール・老人施設「ヨネッティー王禅寺」も置かれています。

田園調布学園大学周辺のバス停は、東急や小田急、川崎市バスによるバス路線が充実しており、隣接する川崎市宮前区や多摩区、青葉区美しが丘西などへのアクセス性が高まるため、「より整備効果の高い案」(両市)として評価。2019年度中(2020年3月末まで)にはルートが正式に選定される予定です。

川崎市独自の鉄道計画は止め、横浜市営で延伸へ

麻生区の中心といえる新百合ヶ丘駅は、路線バスが集約されているほか、行政機関や大型商業施設、昭和音楽大学や日本映画大学が駅周辺に集まっている

今回、横浜市の地下鉄であるブルーラインが延伸を決めた新百合ヶ丘は、駅前に麻生区役所や川崎西合同庁舎(入国管理局や税務署など)が置かれ、昭和音楽大学日本映画大学も位置するなど「行政・文化・芸術」が揃った人気の住宅地で、「しんゆり」の愛称で知られています。

一方、鉄道網は新宿方面への小田急線しかなく、“川崎市内”にありながら、距離的にも心理的にも、臨海部に近い川崎中心部からはもっとも遠い副都心といえます。

そのため、川崎市は市内各地を縦貫させる目的で、中原区の武蔵小杉(当初は元住吉)から子母口、久末(いずれも高津区)、宮前平(宮前区)などを経由して新百合ヶ丘までを結ぶ市営地下鉄(川崎縦貫高速鉄道線)を計画し、詳細なルートまで検討していた経緯があります。

川崎市は武蔵小杉から新百合ヶ丘までを結ぶ市営地下鉄(川崎縦貫高速鉄道線)を計画し、結びつきの薄い市内地域を繋ぐ考えだったが、昨年3月に正式廃止されている(川崎市サイトより)

ただ、この計画は「財政負担が極めて大きい」(同市)などとして昨年(2018年)3月に正式廃止されたばかり。川崎市は独自での鉄道整備を断念する一方で、横浜市を後押しする形でブルーラインの延伸計画を決めました。

新百合ヶ丘は、ブルーラインとつながることで東急田園都市線方面や、新幹線乗り換え駅である新横浜へのアクセスが強化されることになります。ただ、今まで以上に横浜市側とのつながりが強化され、川崎市との結びつきがより薄くなる懸念もあります。

日吉や高田などグリーンライン沿線からの視点では、一度の乗り換えで、新百合ヶ丘へ行き来ができることになり、小田急沿線へのアクセスが良くなることは、プラスといえそうです。

【関連記事】

新横浜~新百合ヶ丘は27分、「ブルーライン」延伸で途中駅のルート公表(新横浜新聞~しんよこ新聞、2020年1月22日、その後の動き)

「日吉駅~鶴見駅」間の事業化検討を明記、京浜臨海部の再編整備プランに(2018年10月1日、ブルーライン延伸の次にグリーンライン延伸の議論が行われるとみられている)

【参考リンク】

横浜市営地下鉄ブルーライン「あざみ野~新百合ヶ丘」を延伸へ(2019年1月23日、横浜市都市整備局)


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