<小杉の日本医大再開発から考える>アピタ跡でも超高層タワマン2棟は建設可能 | 横浜日吉新聞

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ひよしコラム日吉の日常で知った情報や出来事をみなさんと共有する「ひよしコラム」の4回目です。アピタ日吉店の閉店が今月(2015年11月)29日(日)に迫り、名残惜しさや今後の買物不安は根強くありますが、これからまず考えたいのが跡地の活用法です。

以前、本紙の記事(2015年9月21日)では、

・アピタ跡地だけでなく隣接するNRI野村総合研究所(野村総研)と損保ジャパン日本興亜損保の土地も合わせた巨大再開発となる可能性が高い

・その場所にはタワーマンションと小学校が建てられるとの噂が地元で飛び交っている

という内容をお伝えしたことがありました。

何も決まっていない現段階ではすべてが「もしも」という仮定の話となってしまいますが、隣接する2つの土地とアピタ日吉店の土地を合わせた再開発が行われるとすれば、推定で東京ドームを1つ建てても余る規模となる「5万平方メートル」の再開発となります。

この5万平方メートルの土地を開発するとなれば、どんなイメージになるのでしょうか。

日吉の隣、川崎市中原区の武蔵小杉と新丸子付近で、今まさに同規模の再開発計画が進んでいます。

アピタなど3敷地を合わせた規模と同じ面積

日本医大の再開発区域はちょうどアピタ日吉跡など3つの敷地と同規模(川崎市の発表資料より)

日本医大の再開発区域はちょうどアピタ日吉跡など3つの敷地と同規模(川崎市の発表資料より)

この再開発は、武蔵小杉駅と新丸子駅のちょうど中間あたりに位置する「日本医科大学(日本医大)」新丸子キャンパス再編病院の立て替え移転計画に端を発しています。

日本医大の再開発に関わる敷地面積は推定5万1000平方メートル余で、アピタ跡地など3つの敷地を合わせた面積と近似した規模です。

そのため、ここで描かれている計画は、アピタ跡地などにもそのまま転用することも不可能ではありません。跡地の未来をイメージするうえで、格好の計画ともいえます。

明日のアピタ跡地の姿、と想像してみると、日本医大の再開発から近未来像が見えてくるかもしれません。

三菱地所レジデンスが”小杉名物”タワマンを計画

空から見た現在の再開発区域(グーグルマップに本紙で加筆)

空から見た現在の再開発区域(グーグルマップに本紙で加筆)

日本医大は病院のほかに学生が学ぶ「新丸子キャンパス」を併設していましたが、このグラウンドを含めたキャンパスの多くを東京都武蔵野市に移転。この空いた土地に病院を新設移転するという計画を描いています。

病院の移転新設自体は大して珍しいことではないのですが、注目はそれ以外の土地活用です。

新病院(看護系の教育施設も含む)の建設に必要なのは、1万4000平方メートルだけなので、残る約3万7000平方メートルは、日本医大としては直接は必要がありません。

そこで登場したのが、川崎市と三菱地所レジデンスです。

現在、大学の校舎が建っている土地の大半を川崎市に「公立小学校」の建設用地として長期間にわたり貸し付け、一番広い残りの土地(2万1000平方メートル)は三菱地所レジデンスに販売しました。

武蔵小杉から徒歩5分という好立地で、相当規模の土地を手に入れた三菱地所は、当然“武蔵小杉名物”といえるタワーマンション建設を計画します。しかも50階建てのツインタワーです。

5階建ての病院だった場所がいきなり50階建てに

日吉の高台から眺める武蔵小杉駅付近のタワーマンション群

日吉の高台から眺めた武蔵小杉駅付近のタワーマンション群

ただ、今まで5階建て程度の病院建物があった場所に、いきなり50階建ての建物を、しかも2棟も建てるのですから通常では考えづらい計画です。この再開発地域は「第1種住居区域」となっており、アピタ跡地の「準工業地域」より厳しい規制があるはずの地域なのです。

ここで川崎市の出番です。まず、日本医大から長期で借りた土地には公立小学校を新設することを決めていましたが、さらには、タワーマンションの下層部分を無償で譲り受け、老人福祉センターなどの高齢者福祉施設を作るとの約束を日本医大と三菱地所の間で結んだものです。

このほか再開発の一部敷地を使い、それなりの規模の公園まで新設される予定です(川崎市が建設費を負担するか否かは不明です)。

つまり、川崎市は「公立小学校」と「老人福祉施設」「公園」という3つの公共施設と引き換えに、50階建てタワーマンション2棟を建てることを認めた形といえます。

「公共施設」さえ提供すれば超高層化もOK?

日本医大の再開発と規模感が同じというだけで、アピタ跡地に50階建てのタワーマンション2棟が建つかどうかはまったくわかりませんが、計画上は不可能ではない、ということはこの日本医大の事例が示しています。

一方、隣あった区ながら横浜市港北区と川崎市中原区では、街づくりの方針も、抱えている課題も異なりますので、同じような考えを持っているとは思えません。日吉に超高層タワーマンションが必要か否かの判断もあるでしょう。

しかし、可能性としては、アピタ跡地でも市に「小学校新設」の敷地提供やマンション下層階部分などの無償譲渡を行うことで、横浜市さえ認めれば、開発を主導する野村不動産が50階建てタワーマンションを建てることも可能だということを言いたいのです。

アピタの跡地に、50階建てのマンションが2棟建った時のことを想像してみると、いくら小学校や公共施設ができたとしても、果たしてこれが箕輪町周辺の街づくりにおいてベストな姿なのだろうか、と考えさせられてしまいます。

【関連記事】
アピタ日吉店跡地に公立小学校、3敷地合わせ「1000戸程度のマンション」も(2015年11月20日)

アピタ跡地は巨大再開発に、タワーマンションと学校新設という噂の真実味を探る(2015年9月21日)

【参考リンク】

学校法人日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画における老人福祉センター等の整備に係る覚書を締結しました(2015年11月13日、川崎市が発表、詳細図あり※注意:PDFファイルです)

日本医科大学武蔵小杉病院


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