【コラム】東急東横線と相互直通運転する「みなとみらい線」(横浜高速鉄道)が開業から15周年を迎えようとしています。今、同路線では東横線利用者にも少し関係する大きな計画を進めようとしています。それが終点の元町・中華街駅の先に線路を伸ばし、地価の高い住宅街として知られる「山手エリア」の地下に独自の“車庫”をつくること。背景には東急電鉄からの要望もあったといいます。
桜木町駅行だった東急東横線がみなとみらい線とつながり、「元町・中華街行」となったのは、2004年2月1日。地上にあった東横線の横浜駅が地下深くに置かれたことに戸惑いを覚えた人も多かったかもしれません。
この頃は、地上を走っていた日吉駅と綱島駅の間が高架化され、途中の踏切が消えて間もない時期で、まだ日吉駅までは目黒線が来ておらず、元住吉駅も地上に置かれ、東京側の終点も渋谷駅でした。
その後、日吉駅への目黒線延伸や元住吉駅の高架化、東京メトロ副都心線を通じた西武池袋線や東武東上線との乗り入れ、そして2023年3月末までの「東急新横浜線」(相鉄・東急直通線)建設計画など、東横線沿線の環境は15年で激変しつつあります。
その影響は「みなとみらい線」の“自社車庫”新設計画という形で現われた格好です。
みなとみらい線は、自社の独自車両を6編成(1編成8両)持っているものの、横浜駅から元町・中華街駅間(約4.1キロ)の自社線内に車両の置場(留置場)がないため、東急の「元住吉車庫」を間借りしている状態。しかし、その期限は今年(2019年)1月までとなっており、今後、長期の借地延長は難しい状況だといいます。
そこで計画されたのが、元町・中華街駅の先「山手エリア」の地下に4編成を停めておける「車両留置場」を新たに作るというもので、終点の先に留置場を設けることで、折り返し運転も容易になり、定時運行や遅延の解消にもつながることが期待されています。
ただ、計画されている場所は、横浜一の高級住宅街として知られる「山手」。大半は「港の見える丘公園」などの公共用地の地下を活用するものの、そこへ向かうまでの一部は住宅街を横切ることになり、上部の土地所有者から地下を活用させてもらうための「区分地上権」を設定する必要があります。
このほど横浜高速鉄道が公開した昨年(2018年)10月に開いた住民説明会の議事要旨などによると、地元住民からは「山手地区は環境を守る街づくりをしているなかで本計画は不適当ではないか」や、「計画ルートの土地所有者であるが、今の事業計画はほぼ賛成できないため、ルートから私の家の下を外してほしい」といった反対意見が出ています。
加えて、「今回の事業計画をやる理由がわからない」や「東急電鉄の車庫を延長して借りればよい。もしくは東急電鉄と合併すればよいのではないか」といった声も上がったことが記録されていました。
これに対し同社は「東急電鉄も自社の車両置場に苦慮されており、元住吉車庫は自社使用したいと表明がありました。他に車両置場がないかも含めて協議を重ねてきた結果として自社線内に整備することになりました」と説明。
さらに、「東急電鉄との協議の結果、車庫の長期延長は難しいとなったため、自社で整備することとしました。東急電鉄と合併の予定はありません」(2018年10月27日の説明会議事要旨)と回答しています。
東急電鉄に“元住吉の車庫から出て行ってほしい”と言われ、山手の住民からは「車庫新設反対」の声が上がり、苦しい板挟み状況のみなとみらい線。開通から15年を迎えるなかで計画されている“新車庫”は、東急線の運営にも影響を与えるだけに、今後の行方が気にかかります。
【関連記事】
・横浜駅などから元町・中華街での折り返しは「不正乗車」、みなとみらい線が啓発運動(2016年11月26日)
【参考リンク】
・みなとみらい線車両留置場の整備計画を進めています(2018年12月17日、横浜高速鉄道株式会社)