日吉の池本さんがつなぐ「日米友好」のシドモア桜、3/27(月)に植樹 | 横浜日吉新聞

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樹木医の池本三郎さんは日吉生まれ・育ち。3月27日(月)に植樹する「シドモア桜」を港北区役所の職員と一緒に接ぎ木し、準備しているという

樹木医の池本三郎さんは日吉生まれ・育ち。3月27日(月)に植樹する「シドモア桜」を港北区役所の職員と一緒に接ぎ木し、準備しているという

日吉在住の樹木医が「桜」を守り広める活動を行っているのをご存知でしょうか。きょう(2017年3月)25日(土)に始まる第33回「全国都市緑化よこはまフェア」の横浜市港北区での事業として、来週(3月)27日(月)13時より、大倉山記念館前(大倉山2)にて「シドモア桜の植樹式と講演会」が開催されます。

当日、植樹を行う樹木医の池本三郎さん日吉生まれ・育ちで現在も日吉在住。かつて勤務した横浜市職員時代に、市職員としては初の「樹木医」となった池本さんは、現在も日吉や港北区、また全国各地の「桜」を守り、次世代に語り継ぐための普及活動を行っています。

日本の桜が海を越え米国・ワシントン市に植えられたのは今から百数年前の1912年(明治45年)。東京から「友好と親善」を目的として同年3月27日にポトマック河畔へ植樹されたことで有名です。

横浜山手・外国人墓地のシドモアの墓前に植えられた「シドモア桜」(池本三郎さん提供)

横浜山手・外国人墓地のシドモアの墓前に植えられた「シドモア桜」(池本三郎さん提供)

この桜の植樹を提唱したのが、アメリカ人で日本も訪問していた、地理学者・文学博士・ジャーナリスト・写真家と当時多彩な才能を発揮していたエリザ・シドモア(1856~1928年)。「シドモア桜」の語源となった女性です。

シドモアが最初に日本を訪れたのは1884年(明治17年)とされており、日本を巡る中で桜の美しさに魅了されたシドモアは、自身の著書「日本・人力車旅情」(1891年刊行)の中でも、上野や向島の桜について紹介。「いつかアメリカに桜を」と長年の夢を抱き、訴えたというシドモアは、アメリカの大統領夫人へこの地に日本からの桜を移植することを提案。見事にその夢は結実するも、晩年はアメリカを離れ、スイスで生涯を終えたといいます。

故郷を離れ異国の地で死を迎えたシドモアを悼(いた)み、その死を惜しむ日本政府の配慮により、その遺骨はシドモアの母と兄が眠る横浜山手の外国人墓地へ移され、シドモアはここ横浜の地に永眠することになったのです。

シドモアが遺した書籍「日本・人力車旅情」(1891年刊行)は、1987年に日本語訳され横浜・中区の有隣堂から出版された(アマゾンの紹介ページより)

シドモアが遺した書籍「日本・人力車旅情」(1891年刊行)は、1987年に日本語訳され横浜・中区の有隣堂から出版された(アマゾンの紹介ページより)

シドモアが遺した書籍「日本・人力車旅情」は、1987年(昭和62年)に日本語訳され横浜・中区の有隣堂から出版。1991年(平成3年)、シドモアの功績を後世に遺そうと、ワシントンから里帰りした桜が、シドモアの墓前に植樹されることになります。この里帰りをした桜が「シドモア桜」と呼ばれ、今も毎年春になると、横浜・外国人墓地にて美しい花を咲かせているのです。

この「シドモア桜」の里帰りに横浜市職員として携わったのが池本さんでした。米ワシントン・ポトマックから海を越え、桜は5本届いたといい、1本はシドモアの墓の傍らに、そして他4本は外人墓地の「アメリカ区」に植樹します。

うち3本は枯れてしまったといいますが、シドモアの墓を見守る桜は現在も健在。2001年(平成13年)からは、シドモア桜の「心」を各地に伝えるべく、主に「接ぎ木」の手法を用いて、シドモア桜の普及活動を横浜市の事業として開始

退職後も活動を続ける池本さんらの手により、横浜市中区の本牧や元町商店街、緑区・鴨居駅北側の鶴見川土手や都筑区・川和駅前などの市内各所、そして長野県、富山県など県外にもその植樹の輪が広がっています。

日吉の丘公園(リンクは横浜市サイト)に植えられた「シドモア桜」。(2017年)3月23日の時点ではまだ開花していなかった。池本さんら日吉の丘公園愛護会のメンバーが種から植え育てた菜の花が見頃。シドモアの「遺志」であった様々な種類の桜の花を楽しめるよう植えているという

日吉の丘公園(リンクは横浜市サイト)に植えられた「シドモア桜」。(2017年)3月23日の時点ではまだ開花していなかった。池本さんら日吉の丘公園愛護会のメンバーが種から植え育てた菜の花が見頃。シドモアの「遺志」であった様々な種類の桜の花を楽しめるよう植えているという

2002年に2万平方メートルもの広大な「斜面緑地」を活かした公園としてオープンした、その名の通り、地元・日吉(箕輪町3)の丘に広がる「日吉の丘公園」にもシドモア桜を植樹した池本さん。

「今は、春になると美しい花を咲かせる大木に成長しました」というシドモア桜の他に、山形・長井地方の天然記念物だという桜を「種」から育てて育成するなど、「日吉の丘」が新たな桜の名所として後世に残るようにと日々志し、公園への種まきや、長く手掛けてきた公園造成スキルを活かした「自然いっぱいの」美しくも楽しい公園づくりを行っています。

大倉山での植樹については、「都市緑化フェアに際し、“桜”といえばシドモア桜、ということでこの植樹についての提案させていただきました」と、これからも市民らとの協業で、公園美化や樹木など草木のもたらす恵みをこれからも地域の皆さんにもより伝えていきたいと願う池本さん。

シドモア桜の植樹式・講演会開催を知らせる横浜市のプレスリリース(3月23日発表)

シドモア桜の植樹式・講演会開催を知らせる横浜市のプレスリリース(3月23日発表)

日吉で生まれ育った池本さんが愛する日米友好の架け橋・シドモア桜は、今回、大倉山公園内の記念館付近に1本、また同じ大倉山公園の敷地内に2本植えられる予定です。

植樹式の会場となる大倉山記念館は大倉山駅より徒歩7分。会場は記念館前の屋外で、雨天決行。植樹式当日は池本さんや、「シドモア桜の会」会長の恩地薫さん大倉精神文化研究所・平井誠二さんの「桜の歴史」に関する講演を併せ実施。事前予約は不要です。

【2017年4月6日追記】

日吉の丘公園に植えられているシドモア桜も満開近付き、ようやく見頃となりました(2017年4月5日15時頃撮影)

日吉の丘公園に植えられているシドモア桜も満開近付き、ようやく見頃となりました(2017年4月5日15時頃撮影)

【関連記事】

現在と過去の港北区を体感し学ぶ貴重な講座、6月から10月まで全6回の受講者募集(2016年6月3日)

【参考リンク】

シドモア桜の植樹と講演会(横浜市港北区区政推進課)

花見が100倍楽しめる!桜をめぐる物語(TBSテレビ世界ふしぎ発見!)※シドモア桜の紹介で池本さんがTV出演

米国から「里帰り」シドモア桜、25周年(東京新聞、2016年3月27日)

並木に桜咲く頃~個性豊かな並木の樹木(並木ねっと) ※接ぎ木の方法についての記述あり

第25回 シドモア桜の会(NPO法人 高峰譲吉博士研究会)※「シドモア桜の会」についての説明あり

桜だより~山形県長井市の伊佐沢の久保ザクラ(日比谷花壇サイト)


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