新綱島の「池谷家住宅」が歴史的建造物に認定、幕末生まれの古民家 | 横浜日吉新聞

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綱島東の古民家として知られる「池谷(いけのや)家住宅」が歴史的建造物として市から認定されました。

横浜市都市整備局は今月(2024年)1月24日付けで「池谷家住宅主屋(おもや)」(綱島東1)を「横浜市認定歴史的建造物」として新たに認定したことを発表しました。同認定建築物は市内で102件目、港北区内では4件目となります。

かつて「桃」生産の中心地だったことを伝える「日月桃(じつげつとう)」の碑が残る池谷家住宅(資料写真、2019年3月撮影)

この認定制度は、国の文化財保護法に基づいて保存を促す「文化財」とは別に、市がまちづくりの観点から歴史的な建物が持つ価値を認め、保存と活用を積極的に図っていこうという趣旨で1988(昭和63)年度から独自に始めたもの。

長年親しまれた街の景観として建物の外観を保持していくことを最優先とし、耐震補強や内部改修時に費用の一部を市が助成することで、所有者に対し現役の建物として活用を促している点が特徴です。

港北区内で最初に登録されたのは、東急による分譲地として発展した日吉駅前で分譲当時の原型をとどめている住宅だった(資料写真、2015年撮影)

これまでに港北区内では日吉地区にある3つの建築物が認定されており、いずれも現役の住居などとして活用中です。なお、綱島地区に認定建築物はありませんでしたが、綱島西で明治期に建てられた「飯田家住宅」が文化財として市に指定されています。(ページ下部に一覧を掲載)

池谷家住宅は現在も玄関に「桃園」の看板を掲げている(2021年3月撮影)

今回、市に認定された池谷家住宅は、横浜開港の2年前となる1857(安政4)年に完成した古民家。綱島地区を中心に“歴史スポット”として広く知られた存在ですが、これまで文化財や歴史的建築物としての指定や認定は受けていませんでした。

江戸時代から16代にわたって続く池谷家で現当主をつとめる池谷道義(みちよし)さんは、「まだ(指定や認定を)受けてなかったんですか、と多くの方に驚かれます」といい、「私の父の時代も含めて167年にわたって守ってきた建物ですが、現在はもう住居として使うことは難しい」と明かします。

綱島駅東口周辺のまちづくりイメージ(東口側の高層再開発ビルは未着工)、池谷家住宅は新綱島駅のほぼ真上に位置する(横浜市のニュースリリースより)

新綱島駅の大型再開発が進むなかで駅のほぼ真上という位置にある同住宅は、綱島の歴史を広く伝えるシンボル的な存在。どう活用していくべきかを長年悩んできたといい、「歴史的建造物として認定されたことは、今後の活用に向けた第一歩になる」と池谷さん。

現状では新綱島駅の再開発(区画整理)が落ち着く来年度(2025年度)以降にも改修に着手したい考えで、建物内に置かれた膨大な資料や古民具などの整理を専門家の協力を得ながら行っている最中だといいます。

住宅内には江戸時代からの民具や船なども保管されている(資料写真、2017年撮影)

「この家は関東大震災後の大正期、昭和は1982(昭和57)年と半世紀ごとに改修してきました。今回実現すれば“令和の大改修”ということになります」(池谷さん)

今回、歴史的建造物として認定を受けたことについて大倉精神文化研究所平井誠二理事長は、「建物を維持していくために大変な努力を続けてこられたと思う。ただ、個人の力だけで残すのは限界があり、行政に歴史的な価値が認められたのは喜ばしい」といい、「幕末からの歴史を持つ古民家であり、それを目の前で見られることは綱島の魅力となるはずです」と話していました。

横浜開港より2年ほど早い幕末に建てられた貴重な歴史的建物として活用方法が今後検討される(資料写真、2017年撮影)

市都市整備局は「綱島地区の歴史を継承しながら、池谷家がこれまで行ってきた地域貢献を踏まえ、地域の魅力向上やにぎわい形成に資する機能による活用を検討します」(発表資料)としています。

池谷(いけのや)家について

地域学習の場として綱島周辺の小学生を対象に毎年見学会を行っている(資料写真、2017年撮影)

  • 江戸中期から旧南綱島村(主に現在の綱島東など)の名主(なぬし=村長的な立場)であり、旧北綱島村の名主だった飯田家とともに鶴見川の河川改修や村の運営に尽力。
  • 現当主で16代目の池谷道義(みちよし)氏から見て曾祖父(そうそふ)にあたる道太郎氏(日月桃=じつげつとう)の栽培を始め、大正期には「綱島の桃」として一大特産品として育成。現在も少量ながら栽培を続ける。

「日月桃(じつげつとう)」のラベルには道太郎氏の名も記載されている(資料写真、池谷家内で2017年撮影)

  • “綱島の桃”の舞台となっていたのが今回の古民家。幕末期の最上層民家の特徴を残しており、「ヒロマ」と呼ばれる広大な空間と太い大黒柱、「コナシビヤ」と呼ぶ大きな作業用の土間などを持つ。普段は非公開

港北区内の「横浜市認定歴史的建造物」一覧

)港北区も含めた「横浜市認定歴史的建造物」の一覧はこちら

【参考】港北区内の「文化財(一般建造物)」

  • 大倉山:横浜市大倉山記念館(横浜市指定有形文化財)[建築年代:1932(昭和7)年/指定:1991(平成3)年11月]
  • 綱島西:飯田家住宅(横浜市指定有形文化財)[建築年代:1889(明治22)年/指定:1994(平成6)年11月]
  • 小机町:雲松院(本堂・山門)(横浜市指定有形文化財)[建築年代:1753(宝暦3)年=本堂/指定:1995(平成7)年11月]
  • 新羽町:西方寺(本堂・山門など)(横浜市指定有形文化財)[建築年代:1721(享保6)年=本堂/指定:1997(平成9)年11月]
  • 篠原台町:山口家住宅主屋(国登録有形文化財)[建築年代:1938(昭和13)年頃/登録:2005(平成17)7月]

)港北区を含めた一覧は横浜市「文化財・埋蔵文化財」のページに掲載

【関連記事】

<新綱島駅>再開発地に隣接の「池谷家住宅」、周辺5校600人超が見学会(2023年2月17日、周辺の小学生にも知られた存在)

【参考リンク】

都市整備局都市デザイン室「『池谷家住宅主屋』を歴史的建造物として認定しました!」(2024年1月24日発表)


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