<5年ぶり復活・下田町通信>コロナ禍を経て見直す日本の「文化」とつながり | 横浜日吉新聞

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法人サポーター会員による提供記事です】下田町、そして日吉から新価値観や、新たな文化を発信するエッセイ「下田町通信」が久しぶりの復活です。

下田町に在住し、株式会社Cross Dimension(クロス・ディメンション)を運営する黒須悟士(さとし)さんが新型コロナ禍を経て、5年ぶりとなる思いを執筆しました。

コロナ禍を経た地域社会は今

港北区日吉エリアから発信エッセイ「下田町通信」

新型コロナウイルス禍を通して生活や仕事に大なり小なり変化のあった方も少なくないと思います。

コロナ禍を前向きに捉えますと、テレワークの機会が増えた方は、家族と過ごす時間が長くなり、買い物や散歩を通して地域社会との接点も増えたのではないでしょうか。

これまで接点のなかった平日昼間の家庭や地域社会は、そのような皆様の目にどのように映りましたか。

下田町では、新しく増えた店もあれば、残念ながら閉店された店もあります。2016(平成28)年のスーパー「サミット」の閉店によるスーパー空白地問題が記憶に新しいですが、ドラッグストアや都市型小型食品スーパーが頑張っておられるものの、スーパーの品揃えには届かず、解消されたとは言えません。

2016年6月に閉店した下田町5丁目の「サミットストア日吉店」

車や自転車やネットを使いこなせる方には不自由ないですが、そうでない方はどう生活されているのでしょうか。今は不自由ない方も、いずれは年をとるわけですから、他人事ではありません。

住民すなわち消費者が事業者に振り回される構図が至るところで見られます。

日常は事業者の立場で仕事をされている皆様が、住民の立場で地域社会との関わりを増やしたとき、新たな観点を獲得され、それが商品やサービスとなって地域社会に還元される。コロナ禍がそのような好循環を社会にもたらす良い機会であったと振り返ることが出来る日が来ることを期待したいです。

下田町から高田町へ地域再発見

目に見える大きな変化が一つあったと思います。それは、昼間の地域社会で行動する壮年層、特に男性が明らかに増えたことです。

イメージ(PhotoACより)

私が独立した20年前は、30代男性(私)が昼間に子どもを連れてスーパーに買い物に行くと周囲から白い目で見られました。今では子どもを乗せたバギーを押しているパパさんも目に見えて増えましたね。

下田町のお隣の高田町には畑が広がっており、周辺住民の格好の散歩コースにもなっておりますが、農家さんによると新型コロナウイルス禍を機に散歩やジョギングをされる方が断然増えたとのことでした。

高田町には無人販売所が多くあり、新鮮な採れたて野菜や卵が入手できることは知る人ぞ知るところでしたが、今ではより多くの方が足を運ぶようになったようです。地域の資源を地域で活用する。これも災い転じて福となす好例ですね。

高田町で農業収穫体験を行ってきた

株式会社クロスディメンションでは、高田町の農家さんと協力して収穫体験を定期的に開催して参りました。

“三密”とは無縁の畑で、体験を通して人と人との絆を結び直す取り組みは、多くの方に評価いただいております。

憲法25条に「健康で文化的な最低限度の生活」とうたわれておりますが、地域社会に足を運ぶことで健康については担保できる恵まれた環境にある下田町です。

今年は4年ぶりに下田町4丁目の「サンヴァリエ日吉」で夏祭りも開かれた(8月26日)

「文化」を通じて人生を楽しむ

一方、「文化的な」という要素については多くの日本人が苦手にしている分野ではないかと思います。

古来、文化を通して人生を楽しむ様々な術を持っていた日本人ですが、高度経済成長をはじめ物質的充足や効果効率を優先する趨勢から、文化は後回しにされてしまっておりました。

しかし、人の死を身近に感じたコロナ禍を経て、しがらみや人間関係にしばられることなく、人生は楽しんでなんぼだということが再認識されました。その楽しむ手段として文化が必須となって参ります。

弊社の事業は、『横浜日吉新聞』では収穫体験に関する記事がこれまでは多かったのですが、実は新規事業開発や経営改革など、お客様の組織に入り込む形で活動する仕事が主となっております。

その一環として、元文化庁長官の近藤誠一氏が立ち上げた一般社団法人TAKUMI-Art du japonの事業展開に携わらせていただいておりますが、この度、公演「現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴2023」を今月(2023年)9月20日(水)に銀座の観世能楽堂(「GINZA SIX」地下3階)にて開催いたします。

9月20日(水)に銀座で行われる「現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴 2023」の案内チラシ(主催者提供)

同公演は、自然との一体感の中で、ともに和と美を追い求めてきた伝統藝能と伝統工藝の素晴らしさと、その今日的価値を再認識するため、それぞれの粋を集めてご提供する企画で、今年で4回目を迎えます。

コロナ禍で明らかになったことは、人間はすべて自分の生まれ育った地域とそこに生まれた文化から離れることができないこと、そしてそこで日常的に他と身体的な空間を共有することで、初めて心の安定を得て前に進むことが出来るということでした。

「友」をテーマとする本公演は、日本人が命あるもの同士の「つながり」をいかに大切にしてきたかを思い起こし、これからの生き方へのヒントを感じて頂ける企画です。

「現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴 2023」の詳細と第70回「日本伝統工芸展」を巡るツアーの案内(主催者提供)

シンポジウムでは、伝統藝能・工藝のみならず日本人の日常生活にとって欠かせない「友」である扇を主題にしたトークを行い、能では男の友情をテーマとする「松虫」を上演します。また、古き「友」沖縄からは美しい琉球舞踊をお届けします。

抽選で中高生を無料で公演に招待する企画もありますので、中高生の方はぜひご応募ください(同行者の割引販売もあり)。

9月18日(月・祝)には人間国宝の解説で伝統工芸展を巡るツアーも開催します。文化に触れるキッカケとして、またコロナ禍を経て「友」の大切さを改めて感じて頂く場に、多くの皆様に足をお運びいただきますと幸いです。健康で文化的な人生を取り戻していきましょう。

現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴 2023

■開催概要

  • 日時:9月20日(水)18:30~20:30
  • 場所:観世能楽堂(東京都中央区銀座6丁目「GINZA SIX」地下)
  • 主な出演者:大倉源次郎(人間国宝)/近衞忠大/近藤誠一(元文化庁長官)/吉田誠男/志田房子(人間国宝)/大坪喜美雄(人間国宝)
  • 主催:一般社団法人TAKUMI-Art du japon

■中高生無料招待キャンペーン(9月13日まで受付)

  • 公演「現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴 2023」に抽選で中高生を無料招待します。

■人間国宝の解説で巡る伝統工芸展ツアー

第70回「日本伝統工芸展」を人間国宝による生解説で巡ります。

  • 日時:9月18日(月・祝)第1回10:30~11:30、第2回15:00~16:00
  • 会場:日本橋三越本店7階催物会場(東京都中央区日本橋室町1丁目)現地集合・解散
  • 講師:人間国宝(竹工芸家)・藤沼昇先生

<詳細・申込>

現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴 2023」の公式サイトをご覧ください

<執筆者(自己紹介)>

黒須悟士(くろす さとし):独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)にて、海外におけるビジネスや知財活動の支援に従事、JETRO退職後は外資系リスクマネジメント会社日本支社代表、慶應義塾大学助教を経て、現在、株式会社クロス・ディメンションの代表取締役。立命館大学国際関係学部卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)、同博士後期課程単位満了退学。

起業家として、勢力的に海外・知財・社会事業を展開する一方、下田小学校PTA元副会長、下田学童保育所元会長、都市型地域交流拠点モデル「よってこしもだ」の立ち上げ、高田町での農業体験など、下田町というローカルにもこだわり生活を豊かにする活動にも取り組む。

【関連記事】

下田町の黒須さんが産む「新たな価値」、農業体験や子どもたちの居場所づくりも(2018年2月21日)

<下田町通信>エッセイ初掲載・黒須さんが考える「新価値観」を京都・関西から日吉へ(2018年4月6日)

【参考リンク】

クロス・ディメンション(Cross Dimension,Inc.)のFacebook(最近の活動など)

2023年9月20日(水)開催「現代の匠たち 藝能と工藝の饗宴2023」の公式サイト(総合情報)


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