旅を楽しみながら仕事する、そんな働き方に対応した定額制の宿泊サービスが本格始動しました。
東急株式会社は今月(2023年)5月17日、毎月一定額を支払うことで全国110の宿泊施設に泊まれる回遊型の宿泊サービス「TsugiTsugi(ツギツギ)」を正式に事業化し、各種プランの販売を開始しています。
ツギツギは毎月一定額(2万3980円~29万9800円)を支払うプランに加入することで、全国110カ所のホテルを選んで毎月2泊から30泊まで宿泊できる定額制のサービス。
東急の社員3人が「いつでもどこでも好きな場所で暮らせるサービス」をコンセプトに事業プランを考案し、社内の起業家育成制度を使って2021年4月から実証実験を始めていました。
事業を立ち上げた社員によると、サービスの構想は新型コロナウイルス禍の前から持っており、コロナ禍による“働き方改革”の進展もあって社内から認められ、実証実験にこぎつけたといいます。
2年間の実証実験で利用者から得られた声をもとにサービス内容を改良し、事業として運営していける見通しが立ったことから東急が運営する正式事業としてスタートしたものです。
事業化にあたっては、個人向けに月2万3980円で加入できる「えらべる2」(3カ月以上の継続が必要)など4種類のプランを設け、東急グループ内のホテルを中心に全国110の宿泊施設を用意。
たとえば、えらべる2では毎月好きな日曜日から木曜日までの日に2泊できるという内容で、上位の「えらべる5」(月5万5800円、毎月5泊)以上のプランでは、全国650店舗のコワーキングスペースやシェアオフィスなどを使える「OFFICE PASS(オフィスパス)」のオプション追加も可能とし、テレワーク(リモートワーク)の環境を確保できるようにしました。
また、実証実験時に行先や宿泊施設を選ぶのに迷うという声も出ていたことから、設問に答えていくと最適な行先が示されるAI(人工知能)を使ったコンシェルジュ機能も新たに設けています。
“旅をしながら働く”というスタイルは「ワーケーション」や「リゾートワーク」などと呼ばれ、JALやANA、JTBといった旅行業界の大手企業がいち早く社内で導入してきました。
コロナ禍を経てオフィスに出社しない「テレワーク(リモートワーク)」などの働き方が一般化したことでワーケーションに対しても障壁が少なくなりつつあり、社員のモチベーション向上や福利厚生の一環として取り入れようとする企業も見られます。
そうしたニーズを取り込むべく、ツギツギでも一般向けプラン以外にフルカスタマイズして提供する法人向けプランも設けました。
また、多くのホテルでは同行者1人が追加料金なしで利用できるようになっているといい、ワーケーション時に“家庭サービス”を組み入れることも想定しているといいます。
一方、ツギツギは現時点で宿泊の提供を中心とし、現地までの交通機関は格安航空会社「Peach(ピーチ)」の割引にとどまっています。
今後、東急グループ内外の交通機関や旅に付随するサービスを組み入れることができれば、ワーケーションの基盤(プラットフォーム)として強固なものに成長していく可能性があります。
【関連記事】
・【過去記事】東海道新幹線「乗り放題&ホテル」、JR東海が“新しい働き方”で旅行商品(新横浜新聞~しんよこ新聞、2021年4月27日、こんな試みも一時期行われていた)
・箱根を楽しみながら業務をこなす「リゾートワーク」、県がPRページ開設(新横浜新聞~しんよこ新聞、2020年9月4日、神奈川県も身近な観光地へ誘致)
【参考リンク】
・東急の定額制回遊型宿泊サービス「TsugiTsugi(ツギツギ)」(各種プランの紹介など)
・観光庁「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー(総合案内ページ)