Bリーグ有数の若いチームが初のチャンピオンシップ(CS)進出を目指し、10月から始まる新シーズンに挑みます。
プロバスケットボール「Bリーグ」の横浜ビー・コルセアーズ(ビーコル)は、「2022-23シーズン」の新体制発表会を先週(2022年)7月26日に横浜市内で開き、現在の経営状況や新シーズンに向けたチームの意気込みを発表し、ライブ配信を通じてファンに共有しました。
昨年9月に運営会社である株式会社横浜ビー・コルセアーズ(都筑区中川中央)の社長職を植田哲也さん(現取締役)から受け継いだ白井英介社長は、昨シーズンのチームについて「22勝35敗でクラブとしては最高勝率を記録したが、ご来場いただいたお客様には、半分以下の勝利しかお見せできず、厳しいシーズンだった」と振り返ります。
一方、経営面ではクラブ史上で最高となる8億9000万円の売上と1750万円の利益を出しており、「新型コロナウイルス禍の影響を大きく受けたが、スポンサーの収入が増え、地元の皆様により多くの応援をいただけるようになった。中期計画の順調なスタートが切れた」と手ごたえを感じている様子でした。
“新B1リーグ”加入へ向けて動く
4シーズン先の「2026-27シーズン」に発足する予定の「新B1リーグ」へ加入するためには、12億円以上の売上と平均4000人以上の入場者が必須とされており、白井社長は「今シーズンで売上12億円を達成できるよう、スポンサー営業を強化し、興業収益性の強化を図る」と意気込みます。
コロナ禍の影響を受けた昨シーズンの平均入場者数は1710人にとどまっており、「まずはコロナ前の水準である平均3000人に戻し、次々シーズンに平均4000人を目指す」との考えです。
さらに新B1リーグでは、本拠地とするアリーナに貴賓室やVIPラウンジの設置、照明の明るさやトイレ数などの基準を設けており、現在の本拠地である「横浜国際プール」(都筑区北山田、5050人収容)は、その面で基準には達していません。
ただ、横浜国際プールは2024年度に天井の脱落対策をはじめとした大規模改修を計画していることから、「新B1基準を携えたアリーナに改修していただけるよう横浜市と折衝を行っていく」(白井社長)といいます。
また、2024年4月には関内駅近くで5000人収容の「横浜BUNTAI(ブンタイ)」(中区不老町、旧「横浜文化体育館」)がオープンを予定していることから、「横浜BUNTAIの活用も積極的に考えながら、新たに関内の西区や中区方面にも活動拠点を広げていくことを念頭に置いて活動したい」(同)との考えを示しました。
「横浜トヨペット」の傘下に入る
ビーコルは今年で発足12年目。Bリーグの前身となる「bjリーグ」時代には優勝を経験するなど華々しい歴史を持つ一方、2013年には経営危機に陥った影響もあり、単年で黒字化した現在も「債務超過の解消が大きな課題」(白井社長)として横たわります。
そんななか、経営面で大きな転機となりそうなのが、先月(2022年7月)末に横浜トヨペット株式会社(中区山下町)など14社を展開する「ウエインズグループ」の傘下入りが決まったことで、同グループが現主要株主の株式会社バディ企画研究所(東京都世田谷区)などからビーコル株式の過半数を取得し、連結子会社化したものです。
ウエインズグループはすでに2018(平成30)年からビーコル株式の一部を取得しており、横浜トヨペットはユニフォームスポンサーにもなっています。
横浜トヨペットの宮原漢二社長は、「ウエインズグループが地元で培ってきた色々な経験やネットワークを相互に活かしながら、横浜ビー・コルセアーズがますます発展していくことができれば非常に嬉しい」と話します。
白井社長は「大きな体制変更というよりは、これまで支援いただいていたウエインズグループにさらに支援いただくことになったもの」として、現在の経営陣に変更はないとのことです。
主力8選手が残り、11選手で戦う
一方、10月から始まる新シーズンに挑むチームについて、竹田謙GM(ゼネラルマネージャー)が「前シーズンに積み重ねてきたものを継続し、さらにレベルアップすることが大事」として、前季に続いて青木勇人HC(ヘッドコーチ)が指揮をとり、主力の8選手と契約を継続したことを報告。
そのうえで、青山学院大学時代には特別指定選手としてビーコルに所属していた赤穂雷太選手(SF=スモールフォワード)が千葉ジェッツから“復帰”し、広島ドラゴンフライズからチャールズ・ジャクソン選手(C=センタープレーヤー)と、仙台89ERSからはデビン・オリバー選手(PF=パワーフォワード)の3選手が新たに加入しました。
竹田GMは「赤穂選手は千葉ジェッツで優勝を経験し、さらに身体も経験も大きくなってビーコルに帰ってきてくれた。ジャクソン選手はリーグでも屈指の経験を持つインサイドの強力な選手で明るいキャラクターだ。オリバー選手はボールハンドリングが非常に上手く、オフェンスのテンポをさらに高めてくれる」と加入選手を紹介。
また、チームスタッフでは、アシスタントコーチにアルバルク東京からイゴア・ジャレティッチ氏を招くとともに、慶應義塾大学のラグビー部で長年にわたりトレーナーをつとめていた米田健氏をヘッドアスレチックトレーナーとして招へいしています。
異色の経歴を持つ米田氏について竹田GMは、「40歳という年齢でバスケ界に飛び込んできてくれ、チャレンジ精神に感銘を受けた。育成に特化していくクラブのなかで、大学世代を見てきた経験は貴重な財産」と話していました。
日々成長した若いチームでCS目指す
2シーズン目の指揮を担うことになった青木HCは、「前シーズンのビーコルはBリーグのなかで二番目に若いチームで、成功や失敗の体験を繰り返しながら日々成長していった」と振り返ります。
そのうえで、「今シーズンは上積みが期待できるメンバーが集まり、アクティブな選手が揃ってきた。目標は勝率5割を超えてチャンピオンシップ(CS)への出場だ」と宣言。
今シーズンのキャプテンについては、「森井健太選手にお願いした。彼はプレーや行動、言葉でもチームを引っ張れる人間で、人から愛されるキャラクター」と紹介しました。
新キャプテンに任命された森井選手(PG=ポイントガード)は、「目標であるCS出場に向け、覚悟をもって1年間戦っていく。みんなが勢いにのれるようハードワークしていきたい」と話します。
日本代表候補としても期待を集める21歳の河村勇輝選手(PG)が「まずはCS出場という目標に向かって一丸となって戦う」といい、チーム最年長となる30歳の森川正明選手(SF)は、「チームとして着実にステップアップしているなかで、勝負の年となる。意識の高い選手が揃っているが、おとなしい選手も多いので、自分が先頭に立って誰よりも声を出して盛り上げていく」と来シーズンへ向けての抱負を語りました。
2022-23シーズンのビーコルは、10月1日(土)にアウエーの広島ドラゴンフライズ戦で幕を開け、10月15日(土)・16日(日)には横浜国際プールに名古屋ダイヤモンドドルフィンズを迎え、ホーム開幕シリーズを戦います。
【関連記事】
・【前年記事】象徴的な新体制を築いた“ビーコル”、9月末から「Bリーグ」新シーズンに挑む(2021年7月26日)
・<バスケBリーグ>横浜市内に2チーム目が誕生、「ビーコル」も歓迎の姿勢(2021年2月1日、市の中心部ではB3リーグの横浜エクセレンスが活動している)
【参考リンク】
・横浜ビー・コルセアーズの公式サイト(新シーズン情報など)
・横浜ビー・コルセアーズの試合日程(2022年10月1日~2023年5月7日)