日吉元石川線沿いで進行、横浜初の「専門職大学」開学へ向けた動き | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞

【レポート】日吉・綱島・高田から意外と近い場所で、横浜初となる「専門職大学」の開学に向けた動きが着々と進んでいます。

来年(2023年)4月に都筑区で開学を予定する「ビューティ&ウェルネス専門職大学(仮称・設置認可申請中)」は、これからの社会から必要とされる学問領域「美と健康」(ビューティ&ウェルネス)を創造し発展させることを目的とした国内初の専門職大学だといい、資格取得を主とした2年間の専門学校や、学術研究が中心の一般大学では習得しづらい知識と技術を身に付けた人材を養成する高等教育機関となる予定です。

日吉元石川線の小山田交差点近くにある研究所集積地

北綱島交差点から日吉元石川線(荏田綱島線)を都筑区方面へ約7キロ、車で15分ほど走れば右手に「BOSCH」のマークで知られるボッシュ株式会社の横浜事務所が見えてきます。

至近にある「研究所前」という東急バスの停留所名が示すように、企業の大型研究施設が集積するこのエリアで、ビューティ&ウェルネス専門職大学の開設が進められています。

至近のバス停「研究所前」へは北山田駅から東急バス「た91系統」(センター北駅~北山田駅~たまプラーザ駅)で約7分

日吉元石川線をはさんで正面にある緑の丘を越えた先には、地下鉄ブルーラインの中川駅が位置。また、グリーンラインの北山田駅までは約2キロ、路線バスなら7分ほどで着く距離です。

「ここは横浜と東京の両都心部へアクセスも良く、自然も多いので学ぶ場としては非常に良好な環境ではないでしょうか」と同専門職大学の設置準備にあたる学校法人ミスパリ学園齋藤勝さんは話します。

ドラマによく登場の研究所をキャンパスに

かつて“イオスガーデン”の名で知られた旧オンワード総合研究所

キャンパスとなるのは、2020年までアパレル大手のオンワードホールディングスが「オンワード総合研究所」として使っていた場所です。

ここがまだ「港北区」だった頃の1991(平成3)年にオープンしており、地元では広く知られた建物で、ドラマのロケ地としてもたびたび登場しています。

館内はホテルのような雰囲気も(ミスパリ学園提供)

1万6000平方メートル超の敷地内には、地下2階・地上3階建ての研究・研修棟のほか、別に5階建ての宿泊棟もあり、建物の延べ面積は1万7000平方メートルにおよびます。

広いロビーや中庭の噴水など、ホテルを思わせる建物内には、企業研修時に使われていた400人収容のホールや多数の会議室などに加え、以前は地域にも開放されていたフィットネススタジオやプールも完備。今も地域住民からフィットネススタジオ利用に関する問い合わせが来るといいます。

フィットネススタジオも設けられている

また、宿泊棟については専任教員の研究室のほか、今後、一部を学生寮として活用する構想もあるとのことです。

業界でのリーダー人材を4年かけて養成

ビューティ&ウェルネス専門職大学の開学を目指すミスパリ学園は、「エステティック ミス・パリ」や「男のエステ ダンディハウス」などを運営するミス・パリ・グループ(東京都中央区)が設置した学校法人

ミスパリ学園は東京、大宮、大阪、名古屋で専門学校を運営する(同学校法人の公式サイトより)

すでに同学校法人は、「ミス・パリ・ビューティ専門学校」など複数の専門学校を2008(平成20)年から運営しています。

2年間の専門学校では、資格取得や現場ですぐに使う技術の習得が中心となり、マネジメントや新規事業の立ち上げといった部分までを学ぶには時間が足りません。専門職大学では4年間かけてビューティやウェルネス業界でリーダーとなるべき人材を育てていきます」(齋藤さん)と専門職大学を開設する意義を語ります。

専門職大学(4年制)と専門職短期大学(2年制)は2019(平成31)年に制度化されている(文部科学省の案内ページより)

専門職大学2019(平成31)年4月に設置が始まった大学制度で、学術研究が中心となっている従来の大学と比べ、産業界と密接に連携し、実践的な実習を行うことが特徴で、“専門職業人”を養成するという目標が打ち出されています。

昨年(2021年)5月の時点で4年制の専門職大学全国に公立2校、私立14校が開校しており、ファッションやリハビリテーション、フードサービスマネジメント、アニメ・マンガなど、一定の規模を持つ業界で通用する“スペシャリスト”の養成に向けた歩みが始まったところです。

学問としての確立を目指し研究所も設立

キャンパスとしての使用を予定する旧研究所の建物内では教室などの整備が進む(ミスパリ学園提供)

一方、専門職大学では、職業を見据えた実践教育を重視することに加え、大学としての学術教育も高いレベルで求められており、いわゆる“学問”としてその分野を確立させない限りは設立が非常に難しいとも言われています。

ビューティ&ウェルネス専門職大学が学問領域として目指しているのは、「ビューティ(広い意味での美)」と「ウェルネス(身体や精神など広い意味での健康)」という分野。

ウェルネス分野については、医療や福祉など幅広い面からの研究が進んでおり、たとえば国立の琉球大学では主に観光を切り口に、立教大学では運動やスポーツという面から専門の研究組織が設けられています。

館内には400人収容のホールも備え、2020年10月に発足した「ビューティ&ウェルネス研究所」の設立記念講演会にも使われた(ミスパリ学園提供)

もう一つのビューティ分野に関しては、専門研究に乗り出している4年制の大学が今のところ見当たらないのが現状です。

そのためミスパリ学園は、一昨年(2020年)10月に前東京藝術大学副学長の彫刻家・籔内佐斗司(やぶうちさとし)所長とする「ビューティ&ウェルネス研究所」を立ち上げ、“ビューティ&ウェルネス”学問的に確立するための研究を開始。

美とは何かを古代までさかのぼって考察したり、形成や美容外科といった医学分野や、音楽、彫刻や絵画、デザインなど幅広い分野から“美”にアプローチできる専門家を招いて講演会を開いたりといった活動を続けています。

定員は1学年234人、今秋以降に入試へ

ビューティ&ウェルネス専門職大学は来年4月の開学に向け、文部科学省に設置認可申請を行っている段階で、認可後は1学年234人を定員として今年秋以降に入学試験を実施する計画です。

2023年4月の開学を目指して設置認可を申請中の「ビューティ&ウェルネス専門職大学(仮称)」による公式サイト

日本で専門職大学が開設されたのが2019年4月のため、今はまだ第1期の卒業生がいないだけに、高校などでのPR活動ではまず専門職大学の説明から入ることも多いといいます。

「ビューティとウェルネスというまだ日本にはない新たな専門職大学なので、全国に一定のニーズはあると考えています」と話す齋藤さんは、神奈川県内にあるすべての高校を訪問するなど、ビューティ&ウェルネス専門職大学の広報行脚を続けています。

順調に認可が進めば、第1期生が卒業するのはまだ5年先のことですが、「美しさと健康」へのニーズがより高まり、ビューティ&ウェルネス産業が世の中に広く認知された頃には、この場所が日本の人材輩出の中心地として、業界の内外に刻まれることになりそうです。

【参考リンク】

ビューティ&ウェルネス専門職大学(2023年4月開学予定)

ビューティ&ウェルネス専門職大学の開設場所(都筑区)


カテゴリ別記事一覧