<レポート>日吉・綱島からアクセス良好、熱狂のラグビーW杯「ファンゾーン」 | 横浜日吉新聞

横浜日吉新聞

先週(2019年)9月20日から始まったラグビーワールドカップ(W杯)に日吉・綱島・高田エリアから手軽にアクセスできるのが、みなとみらいにある「ファンゾーン」と呼ばれる観戦イベント施設。開幕試合の日本戦が行われた20日夜の様子を港北区在住のライターがレポートします。

東横線で一本、パブリックビューイング

ラグビーワールドカップの重要な7試合が行われる日産スタジアム

アジアで初めてとなるラグビーワールドカップ(W杯)が日本で始まり、決勝戦などの重要な7試合が行われるのが港北区の日産スタジアム(横浜国際総合競技場)。

横浜中心部からは、港北区なんてどこか“辺境”のように見られている向きがあるけれど、そんな場所だったからこそ、土地があって、7万2000人も収容できる日本を代表するスタジアムを(鶴見川の洪水対策もあって)誘致できた。

区民の一人としては誇らしい思いがするが、開催都市「神奈川・横浜」(都道府県単位でしか開催都市になれないため、県も入っているが実態は横浜市が中心)としては、役所と県庁のある横浜中心部で何かをしないと恰好がつかない。

開催都市は誰でも入れるファンゾーンを設置することが求められる

「ファンゾーン」は開催都市が必ず設けなければならない決まり(主催者であるワールドラグビーは色々と注文が多い)になっているので、その場所として選ばれたのが横浜市ご自慢の埋立地「みなとみらい」というわけだ。ここならいくら騒いでも苦情は言われないし、交通アクセスも悪くはない。

このファンゾーンの良いところは、誰でも無料で入れ、試合の生中継映像(パブリックビューイング)を通じて観戦ができることで、日産スタジアムのチケットが入手困難な状態では有難い存在だ。

なにより、同じ港北区内でも日吉や綱島からは、菊名で乗り換えて新横浜の日産スタジアムへ行くよりも、東横線の電車に乗りさえすれば、一本でみなとみらいへアクセスできるので身近といえるかもしれない。

入場無料も「飲食物」持ち込みは禁止

みなとみらい駅からパシフィコ横浜などがある海側へ歩いて5分ほどの「臨港パーク」がファンゾーンの会場。

横浜のファンゾーンはみなとみらい駅から近く、目の前は海

全国16カ所に設けられるファンゾーンのなかでは、最大規模だといい、目の前には海が広がり、なおかつ巨大なビル群も迫っている。潮風を浴びながらのラグビー観戦は“おしゃれなヨコハマ”を国内外へPRするのにも好都合だ。

出入口ゲートでは手荷物検査と手持ちの金属探知機による全身スキャンは行われるが、「飲食物を持ち込まなければいいですよ」と警備員。ピリピリとした雰囲気は感じられない。

飲食物の持込は禁止だが、ファンゾーン内の「食」が充実しているようには感じられなかった

この日の日本対ロシア戦19時45分の開始。夕食を仕入れようとパーク内を巡ってみたものの、キッチンカーとテントによる販売だけなので、「食」という面では少々厳しい状況。当然ながら値段も相応に吊り上げられている。売り切れも多い。

ワールドカップの公式スポンサー利権を守るべく、ファンゾーン内でバドワイザーやアサヒスーパードライを飲むな、というのは理解できるが、食べ物に関しては公式スポンサーがいないので、持ち込みを認めるか、それが無理ならもう少し売店を充実させてほしいところ。

とにかくハイネケンが飲まれていた

食が貧弱なので、とにかく飲むしかない、ということなのか、公式スポンサーであるハイネケン(オランダのビール会社)のビールは信じられないほどに売れている。

日本のハイネケンはすべて鶴見区のキリンビール横浜工場で生産しているらしいので、“ご当地ビール”と言えなくもないが、もう一生分くらい、ハイネケンのロゴマークを見た気がする。

テレビ観戦とはまったく違う臨場感

約300席が設けられているテント内のゾーンはビアホールのような雰囲気だった

パーク内には、300ほどの椅子とテーブル、さらにはテレビも設置された屋根のあって雨でも濡れないゾーンと、1000人以上が収容できる芝生ゾーンとがあって、380インチだという大型スクリーンはどちらのゾーンからでも観られるようになっている。

屋根のあるゾーンはさながらビアホールのようで、試合開始の2時間くらい前なのに、すっかり“出来上がって”しまっているラガーシャツ姿の外国人観光客も。芝生上には日本代表のユニフォームを着ている人が目立ち、東京調布市にある味の素スタジアム(東京スタジアム)から流れてくる開会式の映像を感嘆の声を上げながら眺めている。

380インチの大型スクリーンかつ大音量での「観戦」は迫力がある

大型スクリーンで放映される映像と音声(解説付き)は、イッツコムやYOUテレビなどのケーブルテレビ加入者にはおなじみのスポーツ専門チャンネル「J SPORTS」のものを使い、必要最小限だけが配信される形で、開会式と試合開始の合間は映像が打ち切られトークショーなどのステージイベントを実施。

ただ、同じ映像であっても、大画面に大音量で、無数の人と一緒に中継映像を眺めるのは、家で「J SPORTS」を観ている時とはまったく違う臨場感があり、実際に味の素スタジアムで観戦しているかのような気持ちになってきた。

そこら中で拳を突き上げハイタッチ

大型スクリーンを中心に身動きができないほど人が集まった

19時45分の試合開始時には、大型画面の周辺は身動きが取れないほどぎっしり埋まり、立っている人が二重三重に囲んでいる状態。海外からの客は1割ほどか。NHKもこの会場から時おり生中継を行っている様子。

勤務後にやってきたとみられる片手にビールの会社員グループも多く、平日ナイターの横浜スタジアムや神宮球場のような客層だ。日本では1980年代にラグビーが隆盛を極めた影響か、40~50歳代とみられる男性の姿が特に目立つ。

最初はぎこちなかったが、日本代表がトライを決める度に盛り上がってきた

ラグビーの初心者らしき人も少なくはないようで、味の素スタジアムの客席がぎっしり埋まった映像を見て「Jリーグの時とは全然違う雰囲気だ」と漏らしたり、同時刻に“近所”で行われている横浜ベイスターズと読売ジャイアンツの首位攻防戦の経過をスマートフォンで逐一チェックしながら“観戦”したり、身体の大きいフォワード陣(スクラムを組む前方の人)のぶつかりに「これはすごい」と驚きの声を上げたりと、スタジアムでのラグビー観戦時にはあまり見かけない層も。

試合開始当初は、極度の緊張からか日本代表選手らの動きが硬く、ミスが目立ってロシアに先制を許したように、パブリックビューイングの観客も、ため息とも叱咤(しった)とも、なんとも言えないぎこちない反応が続く。

試合後半になるとテント内は熱狂の渦に

それでも、前半11分に桐蔭学園高校(青葉区)出身松島幸太朗選手(ウィング=足の速い選手がつとめる後方のポジション)が初めてのトライを決めたあたりから会場の雰囲気が少しずつ温まってきて、前半終了前に逆転すると、やった!よっしゃ、など声を上げて拳を突き上げる人が増加。

観客のビールもより進んで、日本代表の攻撃リズムも整った後半は、観衆の歓声が一段と大きくなり、ペナルティゴールが決まると、そこら中でハイタッチが起き、時折「ニッポン」コールも始まる。ハイネケンの飲み過ぎか周囲は若干酒臭く、後半28分に松島選手が3つ目となるトライを決めると、もう祭り騒ぎ

試合中継の合間や終了後などにはステージイベントもある

そして21時45分ごろに30対10でノーサイド(試合終了)ガッツポーズや万歳、ハイタッチと喜びを爆発させて、初のパブリックビューイングは終了。

混雑を避けて急ぎ駅へ向かう人、試合後のトークショーを聞きながら祝杯をあげる人と、皆がどこか満足した顔をしているのが印象的だった。

11月2日(土)までの土日を中心に開催

帰路の東横線車内で、会社員グループが「楽しかった、また皆で一緒に行こうよ」と盛り上がっていたものの、スマートフォンで日程を調べると、勤務後に繰り出せる平日夜の開催は11月1日(金)の3位決定戦しかなく、「うーん、この日だけか。日本が出るかどうかは分からないし」と一同が唸(うな)っている。

横浜みなとみらいでの「ファンゾーン」開設スケジュール(9月22日までの分はすでに終了、横浜ラグビー情報より)※クリックで拡大

これから横浜のファンゾーンは、11月2日(土)までの土日を中心に開設される。

今夜のように、仕事帰りのビール痛飲で異様に盛り上がれる夜は少なく、どちらかというと、家族や訪日客が映像でラグビーを観戦しながら、国際大会の雰囲気をのんびりと味わえる場所となるのだろう。(田山勇一)

なお、みなとみらい駅近く「臨港パーク」でのファンゾーン開催日時は以下の通り。

(※)記載がない場合は12時開場予定

  • 9月28日():日本対アイルランド(16時15分)など3試合中継
  • 9月29日():2試合中継
  • 10月5日():日本対サモア(19時30分)など3試合中継
  • 10月6日():2試合中継
  • 10月12日():3試合中継
  • 10月13日():11時開場予定、日本対スコットランド(19時45分)など4試合を中継
  • 10月19日():2試合中継
  • 10月20日():2試合中継
  • 10月26日():準決勝中継
  • 10月27日():準決勝中継
  • 11月1日(金):16時開場予定、18時からの3位決定戦を中継
  • 11月2日():18時からの決勝戦を中継、試合後は21時までセレモニーも

(※)予定は変更となる場合もあるため、公式サイトでご確認ください

田山勇一(たやまゆういち):港北区在住のライター。ラグビーは1980年代に放送された学園ドラマ「スクールウォーズ」に熱中したのが唯一といえる接点だったが、近所で開かれる“世界的な祭り”を体感したいとの思いから「ラグビーワールドカップ2019」のチケット販売サイトを1日100回以上クリックして日産スタジアム(横浜国際総合競技場)開催分を入手。区民目線でレポートしています
)ラグビーW杯などの世界的イベントでは正式名称の「横浜国際総合競技場」を用いなければならないとのルールがありますが、港北区内では通常使用することが少ない名称であり、「日産スタジアム」の知名度が高いため記事内ではこれを用います

【関連記事】

無料で楽しむ「ラグビーW杯」、みなとみらいに“ファンゾーン”開設(2019年7月12日)

区内が主要会場の「ラグビーW杯」まで1カ月、“地元民”としての接し方(2019年8月20日)

新横浜新聞~しんよこ新聞の「ラグビーワールドカップ」のレポート記事一覧

【参考リンク】

神奈川・横浜ファンゾーン情報(みなとみらい)


カテゴリ別記事一覧