東日本大震災がモチーフの意欲作、慶應最古の劇団が6/12(日)まで新人公演 | 横浜日吉新聞

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慶應劇研の2016年度の新人公演は、入団2年目の「108期」メンバーが中心となり企画された「海底(かいてい)」。東日本大震災がモチーフとなったフレッシュな団員たちによる渾身の意欲作に仕上がっているという

慶應劇研の2016年度の新人公演は、入団2年目の「108期」メンバーが中心となり企画された「海底(かいてい)」。東日本大震災がモチーフとなったフレッシュな団員たちによる渾身の意欲作に仕上がっているという

慶應最古の演劇集団であり、100年以上の歴史を継ぐ「ゲキケン」が、代替わりのフレッシュな新人公演をいよいよ開催――慶應義塾大学公認の劇団「慶應義塾演劇研究会」(通称:劇研・ゲキケン)が、2016年6月9日(木)から12日(日)までの4日間、今年度初の新人公演「海底(かいてい)」を慶應日吉キャンパス内の「塾生会館」地下にて行います。

大正時代に作家・永井荷風(かふう)や、劇作家・小山内薫(おさないかおる)らによって設立された100年以上の歴史を持つ「劇研(ゲキケン)」は、慶應最古の演劇団体として広く知られており、その伝統に裏付けされた公演、作品の数々が、長きにわたり、世代を越えた演劇ファンに根強い人気を博しています。

今回の企画の責任者で、脚本・演出も務めるゲキケン「108期」にあたるという、慶應義塾大学経済学部2年生の宮田健一(けんいち)さんに、「東日本大震災」をモチーフにしたという「海底」の魅力や、作品の背景について話を聞きました。

宮田さんは「海がある街」横浜市中区出身。「港の見える丘公園が近い街です」と、かねてから海に親しみ生きてきたといいます。

「海のある街」横浜市中区出身の宮田健一さん。小学校4年生の時に見たミュージカル「レント」に感動し、演劇を志す。高校時代にたくさんの演劇を観たことが糧となっており、高校1年生の時には単身アメリカ・ブロードウェイに一人旅し、本場で「レント」を観てきたというほどの演劇好き(写真:慶應義塾演劇研究会提供)

「海のある街」横浜市中区出身の宮田健一さん。小学校4年生の時に見たミュージカル「レント」に感動し、演劇を志す。高校時代にたくさんの演劇を観たことが糧となっており、高校1年生の時には単身アメリカ・ブロードウェイに一人旅し、本場で「レント」を観てきたというほどの演劇好き(写真:慶應義塾演劇研究会提供)

演劇を志すきっかけは、小学校4年生の時。アメリカ合衆国・ブロードウェイで絶大な人気を誇るミュージカル「レント」の日本公演を見て、その作品にとても“感動”し、自分も舞台に立ってみたいと思ったのがきっかけだったと宮田さん。開成中学校に入学後は早速、演劇部に入部。開成高校時代に至るまで演劇部に所属し、部長の重責をも務めるまでに。「役者もかなりやり、作・演出を3回ほど務めたこともあります」と、懐かしい中学・高校時代を振り返ります。

大学入学後は、たまたま1つ上の先輩に知り合いがいたこともあり、また「雰囲気が自分にとってとても合っていたので」と、慶應劇研に入団。中学・高校時代の経験も買われて、入学直後の昨年2015年6月の新人公演「メビウス」では、重要な役どころの主人公の父親「松永博文(まつながひろふみ)」役を熱演。「堂々としたふるまいが特徴的で、時に新人か見紛うほどの存在感を放つ」(同公演ツイッターより)と高くその演技力を評価されたものの、以降3つの公演では、舞台監督助手、舞台美術、宣伝美術、照明等主に裏方の仕事を担当してきました。

役者のみならず、演劇に関することすべてを貪欲に学んできたといい、「特に、公演を運営すると言うこと、企画責任者という立場の重要さを身にしみて学んできたと思っています」と、今回の公演に向けて、多方面かつ運営サイドとしての役割についても、深く演劇についての“研鑽”を重ねてきたといいます。

会場となる慶應義塾大学日吉キャンパス・塾生会館の入口に立てられた「海底」の看板。様々なスタッフワークが、例年の新人公演に比にならないクオリティに仕上がっているとのこと(写真:慶應義塾演劇研究会提供)

会場となる慶應義塾大学日吉キャンパス・塾生会館の入口に立てられた「海底」の看板。様々なスタッフワークが、例年の新人公演に比にならないクオリティに仕上がっているとのこと(写真:慶應義塾演劇研究会提供)

慶應劇研では初めての執筆となったオリジナルの脚本については、「自分が考えていること思っていることを素直に伝えようと頑張りました。特に“東日本大震災”のことを扱うということ、それに伴い、きちんと震災というものに向き合うということをしました」と、日本の歴史上でも未曾有(みぞう)の大災害となった2011年3月の東日本大震災について、慎重に、また、深く掘り下げて、今回の作品に活かそうと努めたとのこと。

また、やはり初めての演出担当者としての試みについては、「自分のやりたいことをやりました。“自分が感動する”演出をつけてきたつもりです。苦労したことは、“感動”というのは容易ではなく、人が“何に”感動するか、そもそも自分が“何に”感動するかを、改めて知ることができたと思います」と、人により異なる“感動”をも、演出家を志す身として、深く掘り下げてきたといいます。

“その日海は空に、空は海に。”がキャッチフレーズ。東日本大震災がモチーフとなっており、“感動”とも日々向き合ってきた脚本・演出の宮田さんの手腕、「全員」が見どころという出演者の“人の心揺さぶる”熱演にも期待が集まる

“その日海は空に、空は海に。”がキャッチフレーズ。東日本大震災がモチーフとなっており、“感動”とも日々向き合ってきた脚本・演出の宮田さんの手腕、「全員」が見どころという出演者の“人の心揺さぶる”熱演にも期待が集まる

今回の作品「海底」は、“その日海は空に、空は海に。”がキャッチフレーズ。人間が、地上ではなく、海底に海中都市、通称、居住区域『海底』を造った世界の話ということで、「1人の少女が父親の死をきっかけに、海中都市の謎を解明する話となっています。シリアスでありコメディーであり、恋愛、そして家族愛もテーマにしているのですが、やはり東日本大震災が下敷きをしているので、そのことを想い出していただきながら、観劇いただければと思います」と宮田さんは、今回の作品に盛り込んだ趣向、想いを、強く語ります。

なお、この公演への参加者は80名を数え、そのうち今年2016年4月から入学した新入生が過半数の45名を越えるという若さあふれるフレッシュな顔ぶれでの制作陣となっています。また、脚本演出から各セクションのチーフまで、すべて「108期」の2年生が担当することもあり、これまでの慶應劇研の公演とは一味も二味も違う、より新しい趣向での作品を期待できそうです。

宮田さんに今回の作品の意気込みを伺うと、「新入生にとってははじめて携わる公演であり、そして、劇研にとっては、原則“所属団員が全員参加”で、まさにメンバーが一丸となって取り組んでいます。注目の役者も、まさに“全員”です。“全力”で取り組んでやっているので、ぜひたくさんの人に見に来て欲しいと思っています。また、役者のみならず、スタッフワークが例年の新人公演に比にならないほどのクオリティに仕上がっていますので、ぜひそこも注目していただけたらと思っています」と宮田さん。

日吉の街のあちこちにポスターも掲示されている。「日吉の町はとても優しい印象を受けています。とても過ごしやすいところです。一人でいるのも何人でいるのもとても楽しいです。好きなお店は“祭”(日吉本町1)という居酒屋さんです」と宮田さん(居酒屋祭前にて撮影)

日吉の街のあちこちにポスターも掲示されている。「日吉の町はとても優しい印象を受けています。とても過ごしやすいところです。一人でいるのも何人でいるのもとても楽しいです。好きなお店は“祭”(日吉本町1)という居酒屋さんです」と宮田さん(居酒屋祭前にて撮影)

演劇が初めてという人にも“共感してもらえる作品になっているとのことで、「ぜひ、海よりも深い“感動”をお届けできればと思っていますので、ぜひお1人様からでもこの機会にご来場ください」と、1人でも多くのこの公演での観劇を呼び掛けています。

慶應義塾演劇研究会の6月新人企画「海底(かいてい)」は、6月9日(木)の18時30分からの初演を皮切りに、12日(日)13時からの最終公演まで計5回上演(受付開始・開場は開演30分前より)。料金は予約500円、当日700円、中高生:無料(受付時学生証要)、全席自由。場所は慶應義塾大学日吉キャンパス塾生会館地下合C(東急東横線・目黒線、横浜市営地下鉄グリーンライン日吉駅より徒歩約5分)にて開催。

公演の詳細・予約は下記の「参考リンク」をご参照ください。

※ 当公演のチケットは、2016年6月10日(金)9時50分現在、残りが6月11日(土)13時からの公演、6席のみとなっています。(CoRichサイトより)当日券の販売有無等については、下記Twitterか、主催者に直接お問い合わせください。

(提供:慶應義塾演劇研究会)

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【参考リンク】

慶應義塾演劇研究会公式ホームページ

慶應義塾演劇研究会6月新人企画「海底」特設ホームページ

慶應義塾演劇研究会6月新人企画「海底」Twitter

慶應義塾演劇研究会6月新人企画「海底」チケット予約(CoRichサイト)


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