綱島駅前の薬剤師が能登半島地震の災害支援活動で現地を訪問、SNSや店頭で地域の人々に被災現場の状況を報告しています。
綱島駅西口ですみれ薬局(有限会社すみれ薬局、綱島西1)を営む市川浩さんは、先月(2024年)1月22日から26日までの5日間、横浜市薬剤師会による災害支援活動で、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県能登町を訪問。
「災害支援とは無縁だった」という自身が撮影した写真やメッセージで、被災現場の状況を細やかに伝えています。
今回の災害支援活動は日本薬剤師会を通じ、石川県薬剤師会からの出動要請を受けて行われたもので、約1900名が加入(2024年2月13日現在)する横浜市薬剤師会、その中で159名が所属する港北区薬剤師会の会員に希望者を募る「手上げ方式」での呼び掛けに、区薬剤師会の副会長も務める市川さんが応じたことにより、今回の救援活動に至ったといいます。
「学生時代は、石川県金沢市の北陸大学薬学部に通っていました」と、市川さんは、大学生時代に過ごした石川県や北陸地方に恩返しをしたかったこと、また同薬局に、現在石川県出身者が勤務していることも、現地に赴(おもむ)く強いきっかけになったと語ります。
市川さんは、被災地での活動状況について、同店のインスタグラムや店頭での掲示で紹介。
「今後の横浜近郊や港北区周辺での災害対策にも役立てるための意見・提言としての記録としても、多く皆様に現地の状況を知ってもらいたい」との思いを語ります。
被災地最大の問題はトイレなど「衛生環境」
横浜薬科大学(戸塚区俣野町)、横浜市薬剤師会、そして横浜市が連携し、大規模災害の発生した際などに「薬局機能」を持つ「モバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両)」の現地での運用を担う第4次派遣でのメンバーとして現地に赴いた市川さん。
まずは薬剤師として、災害派遣医療チーム(DMAT)や日本医師会災害医療チーム(JMAT)が避難所を巡回し出された、「災害救助法」を適用しての「災害処方箋(しょほうせん)」を基に調剤したものを届ける役割を担います。
また、避難所・集会所での健康状況の聞き取りや空気環境検査も併せ行ったといい、「二酸化炭素などの数値によっては、インフルエンザ、コロナウイルスなどの感染症予防の目的での換気の提案を避難所責任者に行いました」と説明します。
特に市川さんが強く感じたのが現地での衛生環境。
避難所で特に気になったのが、本来「靴を脱ぐべき」床の上を、「土足で行き来」している人が非常に多かったことだといい、「最初の避難所の設営段階から、これは本来、気を付けなければならなかったことなのではないかと感じました」と、避難生活が長引けば長引くほど、靴に付着した土埃(つちぼこり)やトイレからの排泄(はいせつ)物を避難所での生活環境に持ち込んでしまっているケースを多く見かけたと語ります。
また、トイレ問題の深刻さも目の当たりにしたといい、「排泄物が山のように積み重なってしまっていたのを、保健師が削り取る作業から入った場所もあったと聞いています。水がないこともあり、とにかく排泄物の処理が追い付かない様子が見られました」と、特に避難した直後からのトイレの衛生管理や、避難が長期化した際の対策も充分に練っておく必要があると指摘していました。
宿泊場所についても、全国から駆け付けた公的機関の支援者の多くは、指定された羽咋市などからの往復をせざるを得ない状況だったといい、現在も受け入れ態勢が整わず、多くの自治体などでボランティアの人数も制限されていることから、「できるだけ長く活動の記録について伝えていきたい」と市川さん。
同薬局の右側レジ付近に災害活動支援レポートを掲示しており、平日は9時から19時まで、土曜日は17時まで閲覧が可能(日祝日は休み)。掲出終了時期は未定とのことです。
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・避難所にまずあるべきは「快適トイレ」、新横浜企業が主催し災害時の対策強化を訴え(新横浜新聞~しんよこ新聞、2017年9月5日)
【参考リンク】
・能登半島地震におけるモバイルファーマシーの活躍(一般社団法人横浜市薬剤師会)