近くて遠かった渋谷駅前「桜丘町」、四半世紀かけた巨大再開発で分断を解消 | 横浜日吉新聞

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【沿線レポート】渋谷の駅前にありながら“近くて遠いエリア”が一大再開発によって生まれ変わります。

セルリアンタワーやコスモプラネタリウム渋谷(文化総合センター大和田)などが位置する渋谷区桜丘(さくらがおか)町。あす(2023年)11月30日(木)に渋谷駅に近い再開発エリア「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が竣工し、新たな歩行者ルートが順次開通します。

11月30日に竣工する「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」の玄関口となる「SHIBUYA(シブヤ)タワー」(左手前)、右奥は41階建てのセルリアンタワー

渋谷サクラステージについて東急不動産の星野浩明社長は、渋谷駅周辺で続く再開発の「ラストピース」と説明した(11月23日)

渋谷サクラステージの位置図、JR線路沿いの約2万6000平方メートル(2.6ヘクタール)を再開発した(東急不動産「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業FACTBOOK」より)

桜丘町は渋谷駅南口の“目の前”という位置にありながら、国道246号線(上部は首都高3号渋谷線)とJRの線路に挟まれ、分断された状態。

駅からは階段の上り下りが必要な歩行者デッキや、鉄道の高架下を通らなければアクセスできない環境となっていました。

今から10年前、2013年の桜丘町は駅至近まで中小のビルが密集していた。「東進ハイスクール」の看板が見える9階建ての「ビレッジ101ビル」(釣り具「上州屋」など)付近の一帯にあったビルが取り壊しとなった

今回の再開発は、東急不動産などが参画する市街地再開発組合によるもので、桜丘町のJR線路近くに建っていた中小のビルや低層の建物をすべて取り壊し約2万6000平方メートルの敷地を確保。

ビルの取り壊しが終わった2019年7月の再開発地、JRホームの向こうには高層ビル「渋谷ストリーム」が完成している

4つのビル内や広場などを通じた歩行者ルートを整備するとともに、線路の反対側(明治通り側)に位置する高層ビル「渋谷ストリーム」(2018年9月開業)やJR渋谷駅の「新南口」へ渋谷区による新たな自由通路が設けられ、12月1日に開通します。

渋谷サクラステージからJRのホームと線路を渡って明治通り側へアクセスできる2つの自由通路が渋谷区によって整備され、12月1日に開通する(渋谷区「JR渋谷駅南側に、JR線を横断する歩行者通路が開通します」より)

このうち、渋谷ストリームとつながる「北自由通路」は、JR東日本が恵比寿寄りに設ける新改札口(2024年秋完成予定)とも直結する予定となっており、完成後は渋谷駅の改札口から自由通路と再開発ビルを通じ、桜丘町まで新たな歩行者ルートが生まれることになります。

渋谷ストリーム(写真右奥)とつながる「北自由通路」は12月1日時点では暫定開通となる。2024年秋にはJRの新改札口とつながり、2026年度に新たなJR南口橋上駅舎が完成するとともに自由通路も竣工するという(11月23日)

また、国道246号線を横断して渋谷駅南口方面を結ぶ地下歩道の工事も進められており、こちらもビルの地下で接続する予定です。

4つのビル完成、低層階に商業施設

渋谷サクラステージに建つ4つのビルの断面図、ビル内を通じて恵比寿・代官山方向へ向かって丘陵地となっている地形の高低差を感じさせないアクセスルートが整備された(東急不動産「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業FACTBOOK」より)

一連の再開発エリアには、渋谷駅寄りにある高層の「SHIBUYA(シブヤ)タワー(A1棟)」(地下4階・地上39階建て)をはじめ、「セントラルビル(A2棟)」(地下4階・地上17階建て)や「SAKURA(サクラ)タワー(B棟)」(地下1階・地上30階建て)、「SAKURAテラス(B先端棟)」(地下1階・地上5階建て)のビル4棟が竣工しています。

39階建ての「SHIBUYA(シブヤ)タワー」(左奥)と17階建ての「セントラルビル」(右)は下層階でつながっている。左手手前の細い建物が“先端棟”と呼ばれる「SAKURA(サクラ)テラス」(11月23日)

これらのビルでは、フロアの多くをオフィスとする一方、低層階は100店超のテナントによる商業施設や、イベントスペースなどとして活用。

11月30日時点では商業施設は開業していませんが、「にぎわいSTAGE(ステージ)」と名付けられた広場へは自由に入れるようになり、翌12月1日にはビル内のイベントスペースがオープンします。

30階建ての「SAKURA(サクラ)タワー」は155戸の賃貸マンション「ブランズ渋谷桜丘」やサービスアパートメント「ハイアットハウス」などが入るほか、オフィスもある。右奥はセルリアンタワー(11月23日)

恵比寿寄りに建つサクラタワーは16階から30階までの上層部を155戸の賃貸マンション「ブランズ渋谷桜丘」となり、6階から16階はサービスアパートメントと呼ばれる長期滞在型ホテル「ハイアットハウス」が2024年2月に開業する予定です。

渋谷サクラステージのエリア内には恵比寿方面へ向かう新たな道路(東京都市計画道路幹線街路「補助線街路第18号線」)の一部も整備された(11月23日)

現時点で、まず再開発エリア内に設けた歩行者ルートの開放が始まり、2024年7月までに店舗などが順次オープンしていくとのことです。

渋谷駅と分断されている桜丘町では「取り残されるのではないか」との危機感があったと言われ、120人超いた権利者らを中心に長年の議論を経て、2018年10月までに再開発エリア内にあったビル内店舗などがすべて営業を終え、2019年1月から解体工事が行われた(2019年7月撮影)

かつて2500人超が居住したり店舗を営んでいたりした街を一新した今回の再開発は、1998(平成10)年10月の準備組合設立から四半世紀を経て、建物と歩行者ネットワークの完成という節目を迎えました。

まだしばらくは“渋谷駅前”で変化が続く一大再開発エリアの今を見ておく価値はありそうです。

【関連記事】

進展する「渋谷」の一大再開発、明治神宮前や代官山など次駅にも広がる(2023年6月12日、再開発は渋谷駅と周辺部に広がる)

【参考リンク】

Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)の公式サイト(イベント情報など)

渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage」2023年11月30日よりまちが始動(東急不動産株式会社、2023年11月23日)

東急100年史「セルリアンタワー」の竣工・開業に関する記述(ページ下部、2001年に桜丘町の東急本社跡地を使って「セルリアンタワー」を建設する際、分断を解消するため首都高速3号線と国道246号線をまたぐ歩道橋を設置したとある。古くから町の分断は認識されていた)


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