人口の大小に関係なく“1区に1館”しかない横浜市の「市立図書館」。そんな環境を変えていくためには一人でも多くの子育て世代の声が必要です。
横浜市教育委員会は、6歳までの未就学児を育てる市民を対象に図書館のサービスや利用状況を尋ねるアンケート調査を今月(2023年)1月31日(水)まで行っています。
市では昨年(2022年)12月、4年後の2025年度までに重点的に推進する内容を示した「中期計画」をまとめ、基本戦略として「子育てしたいまち 次世代を共に育むまち ヨコハマ」という指針を打ち出し、重点的に取り組む38の政策を挙げました。
38ある政策のなかに「豊かな学びの環境の実現」という内容があり、ここでは「新たな図書館像の構築と市民の豊かな学びの環境の充実」を目指し、図書館の再整備のあり方を検討することを打ち出しています。
具体的には、老朽化が進む市立図書館の修繕や建て替えを検討していくといい、その際には「まちの魅力づくりに資する新たな図書館づくりが必要」との考え方を提示。
「知の拠点」としての機能に加え、子育て支援や市民活動支援などの機能を融合していくとの方向性を示しました。
中期計画の冒頭部にも「子育て世帯にも居心地の良い図書館づくり」を目指すことを打ち出しており、今回のアンケート調査も子育て世帯を重視した新たな図書館像を探る一環で行われています。
市教育委員会では市民から寄せられた声を参考にしながら来年度中には「ビジョン」を策定していく計画です。
【コラム】未来も図書館へはバス移動が必須?
今後4年間の市政運営の方向性を示したという「横浜市中期計画2022~2025」には、その先に横浜が目指す未来像として、市民や来街者の視点から具体的なイメージも描かれており、そこには“未来の図書館”も登場しています。
「にぎわいとイノベーションがあふれるまち」という項目のなかでは、
今日はパシフィコ横浜で開催される国際会議に参加。併催の展示会で地元の研究者やクリエーターとの出会いがあった。会場からの帰り道は自動運転の小型カートに乗り、普段電子図書で見ている資料の現物を見に、図書館へ移動。(以下略)
といった内容が見られます。
自動運転の小型カートとか、みなとみらいでの国際会議とかに無縁である大多数の市民に向けては、「子育て世代が住みやすいまち」という項目のなかで以下のような未来像を示します。
郊外部に魅力的な中古住宅を購入し、東京から移住。治安も良く、静かでみどりに囲まれた暮らしは、子育てにもぴったり。
子育て支援が充実していて、SNSでも窓口でも、妊娠・出産・子育ての悩みを相談できるし、地域の人も見守ってくれるから安心。
駅までの距離だけ心配だったけれど、自動運転バスが頻繁に走っているから問題なし。
バスで行ける図書館は、コンサートもあるし、のんびりできるカフェ、子どもが楽しく遊べるスペースもあったりと、家族それぞれの時間を過ごしに毎週通っている。
未来の横浜市立図書館では、コンサートが開催され、館内にはカフェや子どもが遊べるスペースがあるという点は、新たな図書館像として注目に値します。
一方、気になるのは「バスで行ける図書館」などとわざわざ銘打っている点です。
これは、未来になっても“横浜郊外部”においては「各区に1館」しかない図書館まで、多くの市民がバスでアクセスしなければならないという暗示なのでしょうか。
多くの市民が住む郊外部においても、せめて未来の「みなとみらい」像で示されたように自動運転の小型カートで行けるような範囲に図書館が整備されていることを願うばかりです。
【関連記事】
・市図書館の取次所「日吉の本だな」は1月19日オープン、駅前の慶應協生館に(2021年11月24日、“1区1館”という制約のなかでもサービス拡充の動きはある)
・【前回4年前の計画】<市が中期計画>日吉・綱島のまちづくりの鍵は“環境”、相鉄直通線の開通後も意識(2018年5月11日、前回は子育てより「経済」や「成長」というキーワードが目立っていた)
【参考リンク】
・【回答フォーム】(子育て世代の皆様)横浜市立図書館のサービス及び利用状況等に関するアンケート(2023年1月4日~1月31日実施)
・横浜市中期計画2022~2025(政策局、2022年12月23日確定)