東急が「伊豆観光」でスマホ化実験、多数の“デジタル周遊券”も | 横浜日吉新聞

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熱海や三島を起点に「スマートフォン(スマホ)」だけで伊豆半島の周遊や観光を楽しもう――、そんな実証実験が来月(2020年)11月16日(月)から東急グループの主導で始まります。これにあわせ、鉄道やバスなどが乗り放題となる10種類以上の“デジタルフリーチケット”も新たに設定。「GO TOトラベル」の宿泊割引と合わせ、伊豆旅行に活用できそうです。

伊豆の観光でIT化を進める「イズコ(Izuko)」の公式サイト

この実証実験は、東急傘下の伊豆急行、同鉄道に特急列車を乗り入れているJR東日本の3社が行う「観光型MaaS~Izuko(観光型マース~イズコ)」で、エリア内の移動や観光をスマホ一つで購入や決済ができるようにしようという取り組み。

路線バスのないエリアには、タクシーに近い「オンデマンドバス」や、レンタカー、レンタサイクルといった移動手段を新たに用意したり、連携したりし、移動や観光時の利便性を最大限に高めようとしているのが特徴で、2019年4月から段階的に実証実験が行われてきました。

今回の実証実験は来月11月16日(月)から来年(2021年)3月31日までの期間に行われ、新たなフリーチケットや観光プランの販売などが予定されています。

「イズコ(Izuko)」の実証実験では熱海や三島を起点にスマホのみで購入できるフリーチケットが多数発売される(ニュースリリースより)

特に注目は新たに設定されたフリーチケットで、新幹線の駅である熱海と三島を拠点に伊豆半島のほぼ全域に設定され、なかにはフェリーを使って静岡市内の清水までアクセスを可能としています。

たとえば、熱海駅からの場合、熱海市内を周遊する場合は2種類のバスフリーパス(500円または800円)があり、伊東や伊豆高原へは「ぷちイズコ」(2日間有効2400円、小学生以下半額)、河津や下田へ足を延ばす場合は「ひがしイズコ」(2日間有効3800円、小学生以下半額)を期間中に設定。

また、三島駅からは修善寺方面や土肥、堂ヶ島といったエリアに加え、土肥から駿河湾をフェリーでわたって静岡市の清水港まで足を延ばせるフリーパスも設けられました。

「イズコ(Izuko)」で販売されるデジタルフリーパスのイメージ(ニュースリリースより)

いずれもインターネット上でのみ購入が可能で、使用時は“紙”のチケット代わりに、スマホを携帯する必要があります。

実証実験の期間中は、このほか観光チケットや食事プランなどの販売も予定されており、伊豆観光へ出かけた際は「イズコ(Izuko)」のサイトを一度チェックしてみてから、周遊してみるのがよさそうです。

鉄道やバスなどの交通機関が相互連携し、チケットをデジタル化したり、一定金額で自由に乗れるようにしたりする取り組みは、「MaaS(マース)」という“交通・移動のIT化”という意味合いを持つ海外発の業界用語が流通。フィンランドやドイツといった欧州でのMaaS先行事例を日本が追いかけている状況です。

東急電鉄の古い車両を転用した伊豆急行の電車はJR東日本の熱海駅まで乗り入れている

日本では、伊豆半島だけで見ても、熱海や伊東までの在来線JR東日本で、東海道新幹線がJR東海、下田方面へは伊豆急行、修善寺へは西武鉄道系の伊豆箱根鉄道と、鉄道会社だけでも4社が絡み、各駅から先のバス会社も異なります。首都圏からの交通系ICカードが使えない路線も目立ち、利用者の利便性が高いとは言えないため、MaaSを導入する余地は大きいとみられています。

一方、今回の実証実験では、熱海駅から先のJR東日本や伊豆急、伊豆箱根鉄道、バス会社など伊豆半島を走る多くの交通機関が連携していますが、東海道新幹線の運行会社であり、静岡県内の代表的な鉄道会社でもあるJR東海が参加していなかったり、JR東日本も熱海駅と伊東駅間の路線以外は関わらなかったりするあたりに、国内の交通機関が広く連携することの難しさが垣間見えます。

【関連記事】

JR武蔵小杉から伊豆への「観光特急」が終了、別車両で特急列車は拡充へ(2020年3月12日)

【参考リンク】

Izuko(イズコ)(東急グループなどが主導)

東急グループ「伊豆地域 活性化プロジェクト」


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