<税の悩みひも解き方>第1回:誰もが直面する可能性がある「相続税」とは | 横浜日吉新聞

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税の悩みひも解き方

税の悩みひも解き方~税理士相談の現場から法人サポーター会員による提供記事です】どんな立場の人であっても、必ず関わらなくてはならない「税金」。その仕組みや実態が分からないと「いくら請求されるのか」「どうやって計算すればいいのか」と不安が募ってしまうのも事実です。

日吉を拠点で活動を続ける税理士の澤口洋輔さんに、無料相談会などの場で実際に受けることの多い質問内容をもとに、税の悩みをひも解いていく連載「税の悩みひも解き方~税理士相談の現場から」の第1回です。

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日吉4丁目の事務所前で税理士の澤口(右)と事務所スタッフの佐藤

税理士の澤口洋輔です。ここは日吉4丁目にある澤口税務会計事務所

都心の駅前やビル内にある事務所のようにビジネス感や高級感を漂わせることはできていませんが、住宅街にある一軒家的な雰囲気のためか、ありがたいことに近所の方から遠くの方まで気軽に相談にいらっしゃいます。慶應義塾大学の事務所前の道路は矢上キャンパスへの通学路にもなっているので、学生の方が顔を出されることもあります。

こちらでお受けする相談内容は、相続や不動産の売買から仮想通貨で収入を得た際の税金まで、税に関わるあらゆる分野におよんでいます。

そして共通するのは、これから徴収されるであろう未知の「税」に対して不安な気持ちを抱かれている相談者の方が多いことです。「見えない不安を払拭できれば」との思いから、その場で税額を計算したり、税の仕組みをご説明したりしてきました。

この連載では、一人でも多くの方が税に対する不安を抱くことがないよう、これまで寄せられた質問のなかから代表的な内容をご紹介するとともに、税金に対する仕組みや考え方をご紹介していきます。

年代に関係なく発生する「相続」の悩み

やはりもっとも多く寄せられる相談内容は「相続」に関するものです。確かに60代以上の方に目立ちますが、年代に関係なく相続はいつ起こるか分かりません

「うちには資産なんてないし大丈夫」と思っていても、ご両親やご家族が亡くなられた時に、今まで知らなかった財産を初めて知るようなケースもあります。

両親や家族が亡くなったことを受け入れるだけで精一杯ななか、亡くなった方と自らの戸籍謄本を取り寄せることに始まり、遺言書の確認や遺産と債務の洗い出し、遺産の評価や分割など、普段は決して行うことのない作業を10カ月以内に行ったうえで、自ら税額を計算して税務署に申告し、納税しなければならないことになっています。不安になるのは当然です。

では、相談者のご質問から相続税に対する考え方の一例をご紹介していきましょう。

対策次第で相続税の額に1000万円以上の差

質問者:相続税は一体いくら支払えばいいものでしょうか?両親が将来の税金を心配しているので相談に来ました。

【図1】相談者の家族構成(澤口記入の相談票より)

税理士澤口:まずは、ご家族の状況を伺ってよろしいでしょうか。

質問者:両親は健在で、子供は長男である私と妹が1人います【図1参照】

税理士澤口:なるほど、ご両親はお近くの実家で暮らしていらっしゃるんですね。それでは、不動産や預貯金、生命保険などご両親の財産を確認していきましょう。

質問者:父には預金と株が3000万円ほど、母名義の預金が2000万円あります。実家は日吉にあり200平米で、その自宅横には同じくらいの駐車場もあり、両親はこの駐車場収入と年金で生活しています【図2参照】

【図2】相談者の両親の財産状況

税理士澤口:土地の価値ですが、評価基準となる「路線価」を国税庁のホームページで調べてみましたら、ご実家の場所の路線価は1平方メートルあたり22万円でした。では、早速税金の計算してみますので、10分くらいお待ちください。カチャカチャカチャ・・・(電卓を叩く音)

税理士澤口:(10分後)終わりました。相続税は、残された財産の総額とその財産をどう分けるかで金額が変わるのですが、もし全ての財産をお母様に相続してもらうのなら、お父様の相続の際(以下、1次相続)には税金はかかりませんが、さらにその後のお母様の相続の際(以下、2次相続)には、1520万円がかかると想定できます。

質問者:それだけかかってしまうんですか……。相続税は安くなることはないのですか?

税理士澤口:遺産分割といい財産の分け方を変えたり、自宅の住み方を変えたりすると金額が下がることがあります。

質問者:どうすればいいのですか?

税理士澤口:遺産分割ですが、例えば自宅はお母様に、駐車場と預貯金は子供たちで、という形で分割しますと、1次相続で344万円、2次相続で230万円の相続税となります。さらに、日吉のご実家にご両親と同居されますと、特例が利用できる場合がありますので、そうしたら1次相続は344万円で変わりませんが、2次相続なら相続税が0円になります【図3参照】

【図3】相続税の計算額と対策による効果 ※クリックで拡大

質問者:ええっ、0円になることもあるのですか!

税理士澤口:はい、このほか生命保険の非課税を利用する方法もあります。生命保険金として遺族が受け取る場合には、一定の金額については相続税がかからないので、この制度を利用して相続税を節税される方も増えています。

質問者:なるほど、さっそく両親にも今日のことを報告して、今度は一緒に相談に来ます。

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このように1時間程度の相談で、大まかな相続税の額や今後の対策を知ることができるケースは多くあります。

税の相談というと、なんだか面倒な気がして「先送り」にしてしまいたい気持ちは痛いほどわかりますが、今から準備をしておくことでさまざまな対策を打てることがあります。早ければ早いほど、後で苦労が少ないということが言えるでしょう。

【執筆者プロフィール】
澤口税理士澤口洋輔(さわぐちようすけ):税理士・澤口税務会計事務所代表、1980(昭和55)年神奈川区松見町生まれ。港北小学校(菊名2)時代から東海大相模の中等部・高校在学時までを菊名や大倉山周辺の港北区内で過ごし、初の事務所は高田西3丁目で開業。現在は日吉4丁目を拠点に港北区内外で税理士活動を行っている。元野球少年。実家は大倉山。中央大学法学部卒、税理士法人けやきや株式会社鹿谷総合研究所を経て2015年6月に独立。
ホームページ:https://sawazeirishi.com/

法人サポーター会員:澤口税務会計事務所提供)


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