<税理士相談の現場から>第2回:自宅を購入、両親からの援助や住宅ローン面での税対策 | 横浜日吉新聞

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税の悩みひも解き方法人サポーター会員による提供記事です】どんな立場の人であっても、必ず関わらなくてはならない「税金」。その仕組みや実態が分からないと「いくら請求されるのか」と不安が募ってしまうのも事実。日吉を拠点で活動を続ける税理士の澤口洋輔さんに、無料相談会などの場で実際に受けることの多い質問内容をもとに、税の悩みを、ひも解いていく連載の第2回です。

税理士の澤口洋輔です。今回はマンションや一戸建てなどの自宅を購入する際の税金について考えていきます。

両親からの援助を受ける際にかかる「贈与税」や、住宅ローンを組んだ際の税金「控除」について、考え方や対策をご紹介しています。

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質問者:そろそろ自宅を購入しようか考えています。物件の候補が少しずつ絞れてきているのですが、税金のことで注意するポイントを教えてほしいのですが……。

税理士澤口:わかりました。それでは、現在のご家族の状況を教えてください。

【図1】今回相談者の家族構成

質問者:現在は賃貸物件に妻と子供2人で住んでいます。私は正社員で年収800万円ほど、妻はパートとして扶養の範囲(130万円以下)で働いています。子供たちが大きくなってきたので、自宅を購入したいと考えました。【図1参照】

税理士澤口:なるほど、お子さんの成長を考えてそろそろということですね。それでは、候補となっている新居の購入資金をどのように用意しようと考えていますか。

質問者:この近くの新築戸建です。価格は5000万円です。このうち、私の両親が2000万円を援助してくれることが決まっていまして、残りの3000万円は住宅ローンを組むつもりです。【図2参照】

【図2】相談者の自宅購入計画

税理士澤口:とても陽当たりの良さそうな新居ですね。税金面で注意するポイントは、大きく2点です。1点目は、ご両親からの援助について。二つ目が、住宅ローンについてです。

税理士澤口:まず、一つ目のご両親からの援助についてご説明します。2000万円の援助を受けるとなると、そのお金を受け取った方に贈与税がかかります。通常ですと、2000万円の贈与を受けた方には、約585万円の贈与税がかかってしまいます。ただ、住宅を取得する資金として贈与を受けた場合には、最大1200万円までの援助については贈与税がかからないという「住宅取得等資金に係る贈与の特例」という制度が用意されています。

質問者:その制度、ぜひ利用したいですね。ただ、そうしても1200万円を超えて援助を受けた分については、どうなるのですか?贈与税を節税することはできませんか?

税理士澤口:超えた800万円の部分については通常ですと贈与税を支払うことになりますが、この贈与税を回避する方法としては、下記の3つの選択肢があります。

  1. 贈与の際には税金を支払わずに、援助した親の相続の際に改めて相続税として負担するという制度「相続時精算課税制度」を利用する
  2. 超えた分については、もらった(贈与)のではなく、あくまで親から借りたものとして借用書を交わして少しずつ返済することとする
  3. 超えた分については、親自身が新居の一部を購入したものとして新居を共有名義とする

どの方法も、超えた800万円の部分についての贈与税はかからないことになりますが、一長一短あります。どれを選ぶかについては、家族の状況や資産状況・今後の住まい方などを考慮して検討を重ねる必要がありますので、またゆっくり相談してください。

質問者:わかりました。妻や両親とも話し合ったうえで、今度は一緒に相談に来ます。ポイントの二つ目、住宅ローンについてはどうですか?

税理士澤口:住宅ローンを設定すると、毎年の所得税と住民税が節税になる住宅ローン控除が利用できるようになります。住宅ローンを組んでから10年間、毎年末の借入残高の1%分だけ税金が安くなるという制度です。

質問者:では、今回3000万円の住宅ローンを組んだら、所得税・住民税が最大で30万円安くなるということですか。大きいですね。

税理士澤口:はい。この住宅ローン控除については、住宅ローンの組み方によって利用できる対象者が変わってきます。今後、継続して収入があり、所得税や住民税を多く払っていく方を中心として住宅ローンを組むなどの工夫が必要です。

質問者:なるほど。来年から妻も正社員に復帰して収入が増える予定です。このあたりも考慮して住宅ローンを検討する必要があるのですね。こちらも妻と相談してみます。

今回の相談と対策のまとめ ※クリックで拡大

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このように1時間程度のご相談で、今後新居を購入するにあたって税金の面で注意すべきポイントをお伝えしています。

自宅を買ったり、住宅ローンを組んだりすることは人生で非常に重要な決断で、さまざまな手続きも多いだけに、税金面にまで気が回らないケースは多々あります。

しかし、準備をしておくことで対策を打てることがありますし、住宅ローン控除も使えますので、税金面についても目を向けてみてください。

【執筆者プロフィール】
澤口税理士澤口洋輔(さわぐちようすけ):税理士・澤口税務会計事務所代表、1980(昭和55)年神奈川区松見町生まれ。港北小学校(菊名2)時代から東海大相模の中等部・高校在学時までを菊名や大倉山周辺の港北区内で過ごし、初の事務所は高田西3丁目で開業。現在は日吉4丁目を拠点に港北区内外で税理士活動を行っている。元野球少年。実家は大倉山。中央大学法学部卒、税理士法人けやきや株式会社鹿谷総合研究所を経て2015年6月に独立。
ホームページ:https://sawazeirishi.com/

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法人サポーター会員:澤口税務会計事務所提供)


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